グローバルでの展開を急速に進めるBYD

2022年7月21日に日本の乗用車市場参入を発表した中国の自動車メーカー『BYD

現在テスラに次ぐ世界第2位のEVメーカーであるとし、グローバル展開を急速に拡げているBYDは、日本で販売する予定のバッテリーEVとしてコンパクトカーの『DORPHIN(ドルフィン、中国名は海豚)』、クロスオーバーSUVの『ATTO 3(アット 3、中国名は元 Plus)』、セダンの『SEAL(シール、中国名は海豹)』を発表しました。

2021年12月にはトヨタが開催した『今後のBEV戦略に関する説明会』においても協業するパートナー企業のひとつにBYDの社名が挙がり、日本国内でもその存在感を強めています。

BYD製の車両で火災相次ぐ

出典:autohome.com.cn

グローバル展開を急速に拡げているBYDですが、海外メディアはそのBYDが製造する電気自動車について、短期間のうちに複数回の火災が発生していることを報じました。

以前にも中国・広東省深セン市でBYDのミドルサイズプレミアムセダンである『Han EV』と思われる車両が炎上したと報道されており、その原因については明らかとなっていないものの、2022年8月16日に新たに中国・四川省ロウ中市でも『Han EV』の車両火災が発生。

こちらも原因については不明とされていますが、1週間前にこの車が納車されたという所有者は「車を運転していたら突然煙が出た」と自然発火を主張し、この火災について現地消防局の担当者も自然発火であることを認め、具体的な状況について調査していると述べているようです。

フロア下に消火ホースが向けられる

出典:autoevolution.com

中国・四川省ロウ中市で発生したBYD Han EVの所有者が中国のソーシャルメディア上で公開した映像では、炎は収まり白煙が上がるHan EVに消火ホースを向ける消防士の姿が確認できました。

消火ホースは車体のフロア下に向けられており、白煙も車体後半部のフロア下から多く発生しているようです。

中国・広東省深セン市で起きたHan EVと思われる車両も、車体後半部のフロア下から炎が上がっていましたが、この2台の発火原因については不明であるため、同じ発火原因による車両火災であるかは確定的ではありません。

なお、今回の消火活動はこれまでに話題となったEVの火災と比べると短い時間で済んだことから、「バッテリーパックの熱暴走なら鎮火までに時間がかかることが多いため、原因はバッテリーパックではない」と推測する声もありました。

出典:autoevolution.com

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衝突試験から2日後の火災でも注目集めた

2021年7月24日に海外の自動車メディアが独自に行なったBYD Han EVの衝突試験では、衝突試験そのものではなく、試験から2日後に起きた車両火災に注目が集まりました。

正面からの衝突試験を実施したあと、車体前半部の変形はあるものの火災等は起きなかったHan EVですが、その後48時間後に炎上し車体全てが焼失。この原因について、担当した消防署は「バッテリーの電気回路の故障が原因」と判断したといいます。

BYDはこの炎上について声明を発表。試験の基準やその方法について業界の標準ではないと試験内容そのものに疑問を呈したうえで、BYDが指定する冷却液とは異なる冷却液が使用されていたことが原因だとしました。

BYDが指定する冷却液は、BYDが独自で使用する非導電性の紫色のものでしたが、試験車両には一般的に使用されている導電性がある赤色の冷却液だったと発表。この声明が出されたあと、BYDの車両の所有者が冷却液の色を確認するためにディーラーに詰めかけたとされています。

冷却水が指定外のものへ置き換えられた理由などについては明らかとなっていないものの、こうした電気自動車を巡る車両火災にBYDの車両だけでなく電気自動車そのものの安全性を不安視する声も中国国内のSNS等で上がっているようです。