打ち水効果はどのくらいある? 効果的な打ち水時間や方法なども紹介
日本の夏の風物詩であり、俳句の夏の季語にもなっている打ち水。昔から涼をとるために行ってきた打ち水ですが、果たして本当に効果があるのかどうか、疑問に思っている人もいるでしょう。この記事では、打ち水の効果と、効果的な打ち水の時間や方法について紹介します。
打ち水は本当に効果がある?
安土桃山時代には、打ち水は茶の湯の際の礼儀作法として行われていました。江戸時代になると、涼をとるために庶民の間にも広まったようです。エアコンがなかった時代には、よしずで日を遮ることや風鈴の音やなどで、涼を感じるしかありませんでした。打ち水も昔ながらの暑さ対策の一つですが、果たして本当に涼しくなる効果はあるのでしょうか。
結論からいうと、打ち水には暑さを和らげる効果は実際にあります。涼しそうに見える視覚効果や感覚だけではなく、一般財団法人日本気象協会が推進する「熱中症ゼロへ」のサイトでは実際に温度が下がったという「熱ゼロ研究レポート:打ち水効果をサーモカメラで観測!」が公開させています。その実験では、時間帯によっては、打ち水によって地表面の温度が20度近く下がることがわかりました。
打ち水で涼しくなる仕組み
打ち水に効果があることは、実験によって明らかにされています。ここからは、なぜ打ち水によって涼しくなるのか、その仕組みを解説します。
打ち水そのもので冷却される
夏場は基本的に気温より水温のほうが低くなります。東京の7月の水道水の平均水温は約25度のため、気温が35度を超える猛暑日には、水温は気温より10度も低いことになります。さらに、猛暑日の地表面の温度は場所によっては60度を超すほどで、水温との差は35度近くです。
熱せられたアスファルトやコンクリートは水をまくことで冷やされ、表面温度や周辺の温度が下がります。また、地面が濡れて体感的に涼しく感じることも、打ち水効果といえるでしょう。
気化熱により地面の温度を下げる
水が気体になるとき、周囲から熱を吸収します。これを気化熱といいます。打ち水をすると涼しくなるのは、地面の水が蒸発する際に地面から熱を奪うためです。打ち水は、気化熱によって地面の熱を大気中に逃がす効果もあります。
ただし、まいた水がすべて蒸発してしまうと打ち水の効果は失われてしまいます。打ち水の効果を持続させるためには、まいた水をなるべく長く地面にとどめておくことが重要です。
そよ風が発生する
打ち水をした場所には水蒸気が発生し、気圧が上がります。一方で、打ち水をしない場所の気圧に変化は起こらないため、打ち水をした場所としない場所とで気圧の差が生じ、風が発生します。
風が当たると、人は涼しく感じられるという点でも、打ち水の冷涼効果はあるといってよいでしょう。
打ち水効果は実証されている
打ち水の効果を実証した2つの実験があります。地表に打ち水をして温度を測定した実験と、建物の壁に打ち水をして建物内の室温を測定した実験です。
1つめの実験は、7月の晴天の日に都内の公園で行われました。14時頃に打ち水を行い、サーモカメラで打ち水前後の温度変化を観測したところ、打ち水直後から温度が下がったことが確認できました。放射温度計での測定結果では、打ち水前に約62度だった地表の温度が、打ち水後には20度近く下がり、約42度になりました。
2つ目は建物の壁に水をかけて効果を測る実験です。この実験は、光触媒をコーティングした外装材と、散水システムを組み合わせた新開発の冷却システムを使って行われました。
光触媒をコーティングした屋根、壁、窓ガラスなどの外装材に水をかけると、建物全体が薄い水膜で覆われます。水膜が蒸発するときの気化熱により外装材の温度と室温を低下させ、夏場の冷房空調負荷を低減するというシステムです。
このシステムを使って打ち水効果の実証実験を行ったところ、室温は1~3度低下し、冷房空調負荷は10~30%の低減効果が確認されました。
参照元:熱中症ゼロへ:「熱ゼロ研究レポート:打ち水効果をサーモカメラで観測!」
参照元:新エネルギー・産業技術総合開発機構:「光触媒冷却システムによる打ち水効果を実物件で実証(世界初)」
打ち水がより効果的な時間帯
打ち水は行う時間帯によって、効果に差が生じます。日差しが強い日中に打ち水をすると、瞬間的に温度は下がるものの、まいた水がすぐに蒸発してしまうため効果が持続しません。
打ち水は朝や夕方など、日差しが弱い時間帯に行うと、水が蒸発するまでに時間がかかり、地表の温度上昇を抑える効果が持続します。アスファルトやコンクリートは熱がこもっているため、夕方に打ち水をしておくと、熱帯夜の寝苦しさの緩和が期待できるでしょう。
打ち水効果を引き出す方法
せっかく打ち水をするのであれば、その効果を最大限に引き出したいものです。効果的に打ち水をする方法を紹介します。
風通しの良い日陰に打ち水する
強い日差しで熱せられたアスファルトなどを見ると、すぐにでも打ち水をしたくなるかもしれません。しかし、日向は水がすぐに蒸発してしまうため、打ち水効果の持続は期待できません。それどころか、湿度が上がって不快感が増すことになってしまいます。
打ち水の効果を高めるポイントは、日陰で行うことです。日陰であればまいた水が蒸発するまでにある程度時間がかかり、気化熱の効果が持続します。さらに、風通しがよい日陰であれば、涼しい風が吹いて涼しさを実感できるでしょう。
ベランダや屋根、壁に打ち水をする
室温は、日差しを浴びた屋根や壁の熱によって上昇します。屋根や壁に打ち水をすることで、室温が低下することは先述の実験結果からも明らかです。ただし、マンションなどは屋根や壁への打ち水が難しいかもしれません。
そこで、マンションではベランダでの打ち水がおすすめです。コンクリートでできたベランダは熱をためやすく、この熱気が室温の上昇を招きます。ベランダに打ち水をすることで、室温を下げる効果が期待できます。
ベランダに打ち水をする場合も、よしずやグリーンカーテンなどで日陰を作ったうえで行うと、より効果的です。さらに、エアコンの室外機の近くにも打ち水をすると、室外機周りの温度が下がりエアコン効率もアップします。
お風呂やプールの水を使うとエコな打ち水ができる
打ち水はエアコンの設定温度を下げるためエコにも貢献するものですが、水道水をそのまま使用してしまうとエコになりません。お風呂の残り湯やプールの水などの二次利用水や、ためた雨水などを利用するようにしましょう。ただし、衛生的に問題のある汚水などをまくのは避けましょう。
打ち水を行うときの注意点
打ち水を行う際は、いくつか注意したい点があります。まず、道路に打ち水をする際は、通行人や自転車、バイク、車などに水がかからないように気を付けましょう。また、滑りやすい場所に水をまくのは危険です。マンホールのふたなどは濡れると滑りやすくなるため、配慮が必要です。
まとめ
打ち水は、見た目の涼感だけなく、実際に涼しくなる効果があることは実験からも明らかです。日差しが強すぎる日中は避けて、朝や夕方の時間帯に、日陰で行うことが効果を高めるポイントです。
また、エアコンの室外機付近に打ち水をすることで、エアコン効率も上がります。打ち水だけで熱中症リスクを回避するのは難しいので、エアコンも上手に使って夏を乗り切りましょう。