※この記事は2017年12月30日にBLOGOSで公開されたものです

埼玉県川口市の男子中学生・栃尾良介(3年生、仮名)がサッカー部のLINEグループから外されたり、乱暴されたことなどをきっかけに、2016年に自傷行為をしたり、不登校となった問題について、「埼玉県川口市・いじめによる不登校 学校や市教委の対応に保護者が抱く不信感(下)~学校や市教委の言い分は?」の記事で、当該の中学校の校長と川口市教委、埼玉県教委の担当者のコメントが掲載された。これに対し、いじめを受けた栃内良介の母親から反論があった。

「全く改善されず、問題は増え続けました」

いじめ対応について、校長が「学校は、保護者と協力して対応を進めている」と答えていた点について、

「この一年三ヶ月、文科省や県教委から何度も『学校としてやるべき事が出来てない』と指導助言が繰り返されています。しかし、全く改善されず、問題は増え続けました。そして、調査委員会の設置の最中に、新たに学校の対応の悪さから、良介が不登校になったと判断される状況になりました」

保護者に不信感があることについて、校長は「決して、嘘をついているわけではない」としていた点については、

「これまで実施してないことを何度も『実施しました』と言うことがありました。市教委と学校が支援体制として提示して来たものも初日から守られませんでした。その上で、やってもいないことを『やった』と報告し、後日確認したところ、『やってなかった』と言うことも何度もありました。世間一般では、このようなことを嘘と言うのではないでしょうか」

「学校から相談はあるのか確認すると警察は『ない』」

良介に絡んだネットいじめについて、校長は「警察に実際に出向いて相談はしていた。10月20日の説明会以降、足を運び、お願いをした」と答えていたことについては、

「ネットの書込みに関しては、私は10月上旬から学校に対して、注意の呼びかけを要望していました。そして警察にも10月下旬から11月上旬まで何度か相談していた中で、学校から相談はあるのか確認しました。すると、 警察からは『ない』という回答だったのです」

「校長は11月中旬になって、やっと私に、『警察に相談し削除依頼をしました』と報告しました。しかし、『 10月20日以降、警察に足を運んだ』というのは、ありえないことです」

「県教委も10月20日以降、再三にわたって、市教委や学校に対して、書き込みに関し早急に対応するよう助言していました。学校が警察に足を運んでいたのなら 再三にわたる助言はされなかったのではないでしょうか」

市教委の担当者は、「1回目の説明会の後に、被害生徒の名前が書かれていた。説明会の内容が不十分だったからでは?」との質問に、「その前に、加害者の名前が出ていました」と答えています。この点について、

「学校名と加害生徒名が被害生徒よりも先に書き込まれていたとするならば、なおさら、もっと早く注意の呼びかけをしなければいけなかったのではないでしょうか?」と反論している。

いじめ被害とされても、その後も繰り返される

「市教委も法律のいじめの定義やガイドラインを無視した言動を繰り返していました。そのため、文科省や県教委から再三、指導助言をされ続けています」

「国のいじめ防止基本方針では、『被害児童生徒は徹底的に守り通し、その安全安心を確保する責任が学校にはある』となっていますが 16年9月に被害生徒と判断されて以降、何度も被害が繰り返されました。そして同じ加害生徒が、繰り返し加害行為を行っています」

「『どちらも大切な生徒』(市教委)と言うならば、学校は毅然とした態度で指導しなければいけないのではないでしょうか。市教委も把握していることなので、学校を管理している立場なら学校を指導しなくてはいけないはずです」

いじめ問題調査委が遅れた理由は?

いじめ問題調査委員会の設置に関して、市教委は「時間がかかった」理由について、筆者の取材では「当事者から証言が取れていなかった」ことを理由にしていました。この点について、

「校長は、1)良介と顧問が何度も会っていること、2)校長も良介に直接会ったこと、3)部員たちから聴き取りをしたこと、4)私から何度も重大事態と申告があったこと、5)校長は、その都度、市教委には報告していたーーと言っています。私も市教委には当初、直接、何度も電話をし、状況報告をしていました」

「一年生の頃から相談も重ね、学校も一年生の頃から嫌がらせなどをされていたことは認識していましたと言っています。しっかり対応していたら、これほど、対応が曖昧になることはなかったのではないでしょうか」

ガイドラインでは「申し立てがあった」段階で報告・調査だが..

文科省の「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」(16年3月作成)には「被害児童生徒・保護者から、『いじめにより重大な被害が生じた』という申し立てがあった時 (人間関係が原因で心身の異常や変化を訴える申し立てなどの『いじめ』という言葉を使わない場合を含む) は その時点で学校が『いじめの結果ではない』、あるいは『重大事態とはいえない』と考えたとしても、重大事態が発生したものとして報告・調査等に当たること」となっている。この点に触れて、

「私は良介が不登校になった1ヶ月後には市教委にも申し立てています。 例え確認が取れなかった、情報が得られなかったとしても それは調査委員会設置が遅れた理由や言い訳にはならないと思います。それどころか、市教委は『確認が取れなかった』と言っていますが、 私が重大事態だと申し立てした途端、市教委は一切連絡をして来なくなりました。私の方に原因があるかのような発言ですが、とても納得出来るものではありません。」

「そもそも、いじめの判断は、疑いの時点で対応しなければいけないはずです。この一年三ヶ月間、本当に市教委や学校の姿勢・対応は 『いじめにはしない』『重大事態にはしない」』ありきで行っているとしか思えません」

「法律(いじめ防止対策推進法)も施行されて、何年も経ち、ガイドラインにも明確に記載されていますが 、いまだ言われる言い訳の内容は、全く法律や定義を理解しようとしていないとしか思えません」

「担当部署がこの認識でいじめ問題の取り組みが徹底されるのか」

「今年3月、初めて会い話をした市教委指導課主幹はそれまで別の担当だったため、良介のことは知らなかったと言っていたはずです。しかし、何故か今、当初から対応していたと発言されるのか。不可解です」

学校側はこれまでに、1)自傷行為をし、不登校になったこと、2)継続して欠席してること、3)保護者から重大事態だと申し立てがあったこと、4)県教委から重大事態を念頭において対応するよう指摘されたこと、5)文科省から重大事態と考えなければいけないと指摘を受けたことを認めて、謝罪している。

「(良介はいじめをきっかけに)自傷行為をし、不登校になりました。一ヶ月の間で、これだけのことがあったのです。しかし、重大事態が発生したと認識出来なかったと市教委は言われています。この発言をどう理解したら良いのでしょうか。いじめ問題は最重要課題と位置付けられていることであり、担当部署がこの認識で本当にいじめ問題の取り組みが徹底されるのでしょうか」