〝目玉〟は何？ 2週間前になっても盛り上がらない「紅白」 - 渡邉裕二
※この記事は2017年12月18日にBLOGOSで公開されたものです
"2週間前"でも盛り上がらない今年の紅白
いったい、どうなっているの？例年、この時期になると何かしらの話題になっているのが大みそか恒例の「ＮＨＫ紅白歌合戦」なのだが、今年は、ほとんど話題に上がってこない。
「紅白」と言えば、秋から年末にかけて何かと〝盛り上げ役〟となってきたスポーツ紙だったが、今年は司会者や初出場者に関しての〝予想〟記事こそは、やや白熱した感はあったものの、それも11月中旬の発表まで。発表後は、次第にネタが途切れ途切れの状態になり、今やよほど意識していない限り「紅白」の話題は出ない。もう2週間を切ったと言うのに、だ。
ＮＨＫの記者クラブに詰めている放送担当記者でさえ、
「何かネタがある？正直言って書くようなこともないし盛り上がらないじゃん」。
もちろん、芸能ネタではないにしても、大相撲の貴ノ花親方と相撲協会とのネタの方が関心が高いし、富岡八幡宮の宮司刺殺事件や北朝鮮問題などもあった。
例年なら、この時期は「歌唱曲」やら「特別審査員」が誰だとか、あるいは「特別枠」の出演者など、スポーツ紙の紙面は「紅白」ネタで賑わうものだが…。
「今は『紅白』なんかより、太川陽介の嫁、藤吉久美子の不倫騒動の取材の方が忙しい」
なんて、言われてしまうほど。実に、情けない限りだ。
NHKと安室の間に決定的な「温度差」
去年の「紅白」は、ＳＭＡＰが出るか出ないかで異常な盛り上がりを見せた。結局、出場は叶わなかったものの、「もしかしたら…」という淡い期待感のようなものもあって、大みそかの放送終了まで話題は続いた。ところが、今年は？
なんと言っても安室奈美恵の動向にあった。この９月に〝引退宣言〟した安室を引っ張り出すことが出来るか出来ないかが、今年は「紅白」の明暗を分けていると言っても過言ではない。しかし、現時点ではよほどのことがない限り「暗」と言っていい。
…あえて、ここで「よほどのことがない限り」と記したのは、この数日の間に安室に近い、あるいは影響力をもった芸能界の実力者が、ＮＨKの〝忖度〟のようなもの（？）で、動くことも否定できないからだ。もっとも、仮に出ることになったとしても、おそらく「応援してくれてありがとう」程度のビデオ・メッセージ程度。万が一、歌出しをするとしても、コンサート収録の「ＨＥＲＯ」（ＮＨＫ「リオ五輪」テーマソング）で、お茶を濁すしかしかない。いずれにしても、それで精一杯だろう。
ＮＨＫは、安室が出てくれるなら「15分間の特別枠を用意する」と言っていたそうだが、安室にとっては、そんな「出演時間」とかの問題ではないことは言うまでもない。どうやら、ＮＨＫと安室との間には決定的な温度差があるようだ。
「昨年のＳＭＡＰの出演については、最後の最後まで可能性のようなものが漂っていましたが、安室奈美恵に関しては、ＮＨＫが出て欲しいと一方的にアピールしているだけですからね。全く説得力がありませんよ」（放送記者）。
で、安室がダメなら、桑田佳祐はどうかと言うことになるが、桑田は横浜アリーナでカウントダウンコンサート中。もっとも、司会の有村架純も登場しての朝の連続テレビ小説「ひよっこ」の〝紅白バージョン〟とか言って、特別コーナーを設けることは確実視されているだけに、そこで桑田とＮＨＫホールを中継で結んで、主題歌だった「若い広場」を歌うと言うサプライズも考えているだろうが、例え、そうだとしてもインパクトは乏しい。
出場者でも、昨年は出場者を〝投票〟で決めたＡＫＢ48。今年は「パフォーマンスする曲を視聴者投票で決める」なんて発表。ＮＨＫは「紅白出演者の曲を視聴者投票で決めるのは史上初」なんてアピールしているが、実は、1991年の「第42回紅白歌合戦」で、人気ロックグループだったＨＯＵＮＤ ＤＯＧが「ファンによる視聴者投票で決める」とブチ上げたのとほとんど同じネタ。
もっとも、ＨＯＵＮＤ ＤＯＧの「視聴者投票」は、「国民投票で決定する」とメンバーも大ノリだったが、実際にはＮＨＫの公認ではなく、ファンを盛り上げるためにメンバーやスタッフが勝手にやったことだった。しかも、その後、当時の所属事務所社長が「発売前の新曲（「ＢＲＩＤＧＥ～あの橋をわたるとき～」）を歌わせないなら出場を辞退する」と騒ぎ出し、結局、出場をドタキャンすると言う前代未聞の事態に発展した。
そういった意味では、いい加減な「視聴者投票」だったことには違いない。が、それでも同じようなネタを、26年前のことだとは言っても、今さら凄い企画のようにアピールするのは正直言って芸がなさ過ぎる。
視聴率40%キープが大きな鍵に
今や、民放各局では10時間を超えるような長時間の音楽番組を編成するし、年末にはフジテレビが「ＦＮＳ音楽祭」をやったりテレビ朝日もミュージックステーションの「スーパーライブ」を恒例化している。しかも、出演者の顔ぶれを見る限り「紅白」以上だし、何より「紅白」以上にライブ感があって、歌を聴かせようとしている。しかし、音楽番組では確かに「ＳＯＮＧＳ」のような番組はあっても、基本的には「うたコン」のような演歌・歌謡曲の番組に力を入れているＮＨＫが、いざ「紅白」になると、演歌・歌謡曲を減らし、逆にポップス系アーティストには手厚いのには、やや違和感を感じる。だが、今年の「紅白」で言うならワクワクさせるものがない。
それにしても、あれこれと重箱の隅をつつくように言い方をしたところで意味はないのだが、結局は、どんな盛り上がりを演出しようとしているのか？注目したいところだ。
業界的には「ヒット曲に恵まれなかった」とは言え、そこは「国民的音楽番組」を自負とする「紅白」である。プライドとしても視聴率40％をキープ出来るかが大きな鍵である。
ちなみに、私の予想としては、それでも37％と見ているのだが…。
