アニラジと一般ラジオ番組の違いとは? - 西原健太郎

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※この記事は2017年12月05日にBLOGOSで公開されたものです


世の中は年の瀬に向けて動き出した今日この頃、皆さんいかがお過ごしでしょうか?私はというと、毎年恒例の海外旅から戻り、時差ボケと戦う日々を過ごしています。今回の旅では、いろんな経験をしました。現地で頑張る日本人の逞しさに驚き、現地の人々の暖かさに感動しました。そして、いつか自分もそのステージに立つべく、日々をどう過ごせば良いのかを考えるようになりました。

声優がパーソナリティ「アニラジ・声ラジ」の現状

ところで、今回の旅は、自分自身の仕事について、常に考える旅でもありました。私の仕事というと、ラジオ番組の放送作家なわけですが、担当しているのは一般的なラジオ番組ではありません。私が担当するのは、”声優”がパーソナリティの、”アニラジ・声ラジ”と呼ばれる番組です。今回は、そんな『アニラジ・声ラジ』の現状について、話してみようかと思います。辛辣な言葉が出てしまうかもしれませんが、お付き合いください。

皆さんは、『アニラジ・声ラジ』に対して、どんな印象を持っているのでしょうか?「声優がやっているラジオ番組」でしょうか?それとも、「若い人が聞いているラジオ番組」でしょうか?そういう印象を持っている人もいると思いますが、ほとんどの人の印象は「なんだかよくわからない人たちに支持されている、なんだかよくわからない番組」なのではないでしょうか?

…いや、もっとハッキリ言ってしまいましょう。『アニラジは、オタクに支持をされていて、一般芸能人がやっている番組比べるとクオリティが低い』『アニラジを聴いていると周りに知られたら、学校や職場で馬鹿にされる』…。そう思っている人、結構いるんじゃないですか?『番組のクオリティ』については、各々の主観による所も大きいと思いますが、『アニラジを聴いていることを周りに言いたくない』という人は、間違いなく一定数存在していると思います。

そしてそう思っているのは、リスナーだけではありません。ラジオを制作するスタッフの中にも、『一般ラジオ番組>>>アニラジ』を持っている人達が、残念ながら一定数存在します。しかもそれは、今現在アニラジを作っているスタッフ中にも…。「本当は一般芸能人を使ったラジオ番組をやりたいのに、機会がなく仕方がなくアニラジをやっている」…そんな人さえいます。悲しいです。そんなコンプレックスを抱えている人達に、良い番組が作れるのでしょうか?『アニラジは一般ラジオ番組より劣っている』。人々にそんな印象を与えているのは、ラジオスタッフのそういった意識もあるのかもしれません。

「アニラジ」は隠れオタクの心の拠り所

私は、アニラジの放送作家であることに誇りを持っています。アニラジを好んで聴いてくれるリスナーは、俗にいう”オタク”が多いです。そしてその中でも、”アニメオタク・声優オタク”と呼ばれる人達に支持されているのがアニラジです。

アニメ・声優オタクと呼ばれる人々は、今でこそ少しずつ市民権を得て来ていますが、まだまだ日陰の存在です。オタク趣味を周囲にカミングアウトせず、自らがオタクであることを隠して、ひっそりと暮らしている人も多い現代。そしてそんな人達が心の拠り所にしてくれているのが、他でもないアニラジなのです。

普段学校や職場で辛い思いをしても、家に帰ってラジオをつければ、同じ趣味・同じ境遇の人が集まっている場所がある。そしてそこにいるパーソナリティは、自分だけに優しく話しかけてくれる…。私はこれまでに、アニラジが大好きだというリスナーの話を何人も聴いて来ました。そしてそんな人たちが口を揃えて言うのが、「アニラジに救われた」という言葉です。アニラジには、普段虐げられている人達の心を救う力がある…私はそう思っています。だから私は、アニラジを生み出すことができる、アニラジの放送作家という職業に誇りを持っています。

その昔、私がラジオ業界に入り、アニラジの仕事を順調に増やしていた頃。とあるラジオスタッフにこんな言葉を言われたことがあります。「アニラジばっかりやっているけど、アニラジブームが去った後どうするの?」。それから十数年、今も私は、アニラジの放送作家を続けています。「ブームは去らない。去らせない」。そしてそのために何ができるのか…、それが私の生きる道だと思っています。

もちろん、アニラジを掛け値なしに楽しんでくれている人もいるのですが…世の中にはそうしたくても出来ない人が沢山いることを、私は忘れていません。そして誰もが、「アニラジを聴いています!」「趣味はアニラジ鑑賞です!」と自信を持って言える世の中にするにはどうすれば良いのか…。私は自分自身が出来ることを、これから考え、実践していこうと思っています。