熊本地震からの復興シンボルに!障害者が働くラーメン店「九州ラーメン党」オープン - 田野幸伸

写真拡大

※この記事は2017年07月14日にBLOGOSで公開されたものです

「お待たせしました!」 運ばれてきたのは1杯のラーメン。

このラーメンを食べるために、私は熊本にやってきた。

障害者が働けるラーメン店がオープン

日本財団とNPO法人ボランティア仲間九州ラーメン党が、共同プロジェクトとして、障害者が働くラーメン店「九州ラーメン党」を熊本県益城町にオープンした。

益城町は2016年4月の熊本地震で震度7を記録し、甚大な被害が出た地域のひとつ。この益城町を拠点とする「九州ラーメン党」は、神戸や東北で被災地支援活動としてラーメンの炊き出しを続けてきたNPO団体で、障害者支援のための福祉作業所も同町に設けている。

熊本地震でその施設が半壊。これを機に、炊き出しを続けてきたラーメンを店舗としてオープンさせ、障害者が健常者と共に働ける場所が完成した。これは日本財団がはじめた障害者就労支援の新しい取り組み「はたらくNIPPON!計画」のサポートを受けたものである。

九州ラーメン党代表の濱田龍郎氏は、 「ここは障害を持った人が働くラーメン店。いきいきと働いている姿を見て欲しい。彼らは働きたいんです」と話す。

福祉施設で働く障害者の工賃(給料)は全国平均で1万数千円。濱田氏は「店の利益を障害者に還元し、工賃を3倍にしたい」と意気込んだ。

ラーメン店という業態は、お客さんと障害者の接点ができることも大きい。一人一人との交流が地域との交流になり、障害者も接客を通じて「自分も社会で働けるんだ」という自信がつく。

「家の中でじっとしていた障害者が『いらっしゃいませ』とお水を出せるようになる。これは大きな進歩です」と濱田氏は嬉しそうだ。

九州ラーメン党名物はなんと3mの麺

こちらのお店の目玉商品は「とんでもなく長いラーメン」。

どれくらい長いかというと…。

まだ伸びる。

椅子の上に立ってもまだまだ伸びる。

代表曰く「3mくらいあるからね」

これは全国からYouTuberが挑戦にやって来てもおかしくない。

とんこつラーメン(500円)

さっそくラーメンを注文してみた。「はい!とんこつラーメン一丁!」元気な店員さんの声が店に響く。

厨房で調理をするのは健常者のスタッフ。従業員14名のうち10名が障害者ということだ。テーブルを拭き、お水を出し、オーダーを取って厨房に伝える。

しばらくすると汗だくになったスタッフが運んできてくれた。みんな一生懸命である。

キクラゲに玉子、チャーシューに万能ねぎというオーソドックスなとんこつスタイル。

さっそくいただこうと箸箱を開けるとカラフルな箸袋が。

こちらも作業所で一つ一つ作っているものだそうだ。

まずスープから…。うん。あっさり。熊本ラーメンだから濃いめなんだろうなと思いきや、シンプルな味付け。

麺はストレート。のどごし良し。

コリッコリのキクラゲがいいアクセントになっている。

そして存在感のあるチャーシュー。500円のラーメンでこれは嬉しい。

全体的にあっさりなので、テーブルのコショウや一味を使うと最後まで楽しめる。

ぷはー。ごちそうさまでした。

被災者に寄り添う炊き出しの味

「あっさりスープ」には理由があった。「九州ラーメン党」のラーメンは、被災地の炊き出しとして提供されているものである。東日本大震災の現場ではスープに味噌を足し、奄美豪雨では地元の鶏がらを加えた。被災者が慣れ親しんだ味に現場現場でカスタムしているのだ。

ボランティアラーメンという性質のため老人や障害者に提供する機会も多い。そのため、「自然と優しい味になるんですよ(濱田氏)」。

メニューはとんこつだけでなく、塩、みそ、カレーにチャーハンと、「こだわらない」ことが「こだわり」だ。

濱田氏は言う。この店を「みんなの店」として育ててもらいたい。そして、熊本震災復興のシンボルにしたいと。

災害救援活動もここを拠点に今まで通り続け、九州北部の豪雨被災地にも支援に入りたいとのことだ。

熊本地震から1年3ヶ月。昨年10月に訪れたときよりも町の瓦礫はだいぶ片付いていたが、まだ手付かずの住宅もちらほらと見受けられる。



復興へかける思いに、健常者も障害者もない。

この店が新しい復興のシンボルとして、益城町の名物になることを願う。

次はチャーハンも食べたい。

九州ラーメン党 店舗情報

住所:熊本県上益城郡益城町古閑 543-2
営業時間:11時~15時 18時~21時
定休日:月曜日