※この記事は2014年11月17日にBLOGOSで公開されたものです

衆議院の解散・総選挙に向けた動きが加速している政界だが、もともと安倍政権がこの臨時国会の最重要課題と位置づけていたのは「地方創生」だった。地方創生関連法案は解散前になんとか成立させたい意向のようだ。そんななか、「地方創生に向けて~日本は変われるか?~」と題されたイベントが11月13日、東京都内で開かれた(政策分析ネットワーク・Yahoo!JAPAN政策企画共催)。石破茂・地方創生担当大臣や日本創成会議座長の増田寛也・元総務大臣らが登壇し、国の描く地方創生のビジョンについて話し合った。(取材・高橋洸佑)

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「我が町にふさわしい創生のあり方」を市町村に描いてもらう

地方の現状について、石破大臣は、これまで地域の産業を支えてきた公共投資と企業誘致が限界を迎えていると指摘する。

地方創生のあり方について、「どこで何をすべきかということは、永田町や霞が関では分からない。法案が成立すれば、平成27年度中に、全市町村で産業や人口、財政の問題をどうするのかという総合戦略を作ってもらう。我が町にふさわしい創生のあり方を描けたところは創生するでしょうし、そうでなければしないでしょう」と話し、地方自治体が主体的にビジョンを描くことが必要で、国はあくまで「それにふさわしい応援をしていく」立場だという認識を示した。
また、自治体に支給される補助金についても、「国にお金がない以上、自治体がいかにして税収を上げていくかということが重要だ。自由なお金を使って、それによって税収が増えたのかというのも、地域で検証しないといけない。今まで補助金の効果が検証された試しがなかったが、税金を有効に使うためには検証すべきだ。それがまずければ、自治体の経営者を変える。民間企業なら当たり前の話だ」と述べた。

一方で、増田元総務相は、町の中心部に居住地や都市機能を集積させる「コンパクトシティ」について言及。東北で出会った女子高生との会話を紹介しながら「まち」のあり方について次のように話した。

「(東日本大震災の)被災地で、コンパクト化を計画している宮城県の女川町に行ったとき、そこの女子高生と話した。彼女は『震災前も町内のお店には行かないで、石巻のイオンモールに行っていた。いままで行かなかったお店をいくら集めたって行かない。同じようにイオンモールに行くと思う』と言っていた。ただ単に集めるだけではなくて、集積させることによってお店として新たな付加価値が見えてくるはず。それを提供することが本当の考え方だ」

「そこにしかないもの」があれば、地方にも人は来る

また、増田元総務相は地方交付税制度についても「過度な財政保障や財政調整に行き過ぎた」と述べ、「自治体間のいい意味での競争」が必要だと指摘した。ただ、こうした自治体間の競争を促す方針には、自治体からの反発もある。この点について問われると、石破大臣は次のように話した。

「60年あまりずっと同じ考えできたものを変えるには、相当の抵抗がある。しかし今までのモデルが続けられないのだから、地方の生産性を上げることによって、自治体の税収を増やす。そこに対して、国ができるお手伝いはなんなのか、という考えにしていかないといけない。負担のババ抜きみたいな形で、次の世代に先送りするというのはもう限界だ」

また「地方の長と話すと『格差を作る気ですか』という意見が必ず出るが、『最初から駄目なところがあるのを前提にして話すこと自体がおかしくないですか』と言いたい」とも話した。そのうえで、高速道路や空港などの地理的優位性がなくても伸びている自治体があることを紹介し、次のように語った。

「そこにしかないもの、そこにしかいない人がいれば、よそから人はいくらでも来る。そんなものはここにはありません、と言うならそれでもいいが、日本国ってそんな国でしょうか。本当に何にもないところ、まっとうな人がいないところーー私は、そんなところが日本にあるとは思わない」

出演者による今回の議論の総括コメント
・イベントの動画はこちらで見ることができます。