ホリエモンが語る刑務所からの″社会復帰″~堀江貴文×岡本茂樹対談 - BLOGOS編集部
※この記事は2014年01月05日にBLOGOSで公開されたものです
「平成24年版犯罪白書」によると、同じ人間が犯罪を繰り返す再犯率は43.8%と過去最悪を記録している。こうした状況の背景の一つに、多くの受刑者が刑務所から出た後に就業の機会を得ることができず、経済的に困窮して「生きるために」再び犯罪に手を染めざるを得なくなる、という悪循環の構造がある。現在の刑務所の問題点や受刑者の更正のために必要なものについて、収監経験を持つ実業家の堀江貴文氏と立命館大学教授の岡本茂樹氏が話し合った。(構成:永田正行【BLOGOS編集部】)刑務所は更生するための機関としては機能していない
大谷:今回のテーマは、「刑務所からの社会復帰」です。この問題について、法務省などにより住居の確保や就労支援といった対策もされているのですが、そもそもそういう実態があることを私たちは日常の中で認識していませんし、話をする機会もありません。
堀江さんは今年3月に出所され、現在はニュースやグルメのアプリの開発、宇宙事業などを中心に活動されています。一方、岡本茂樹先生は、刑務所での累犯受刑者の方のケアに当たられ、その実態もよくご存じです。まずは堀江さん、実際に刑務所の中を体験されて、どのように感じたかなどからお話いただければと思います。
堀江:「刑務所なう。」という本にほとんど書いてあるのですが、肝心のところは書けませんでした。何故なら、検閲が非常に厳しかったからです。僕が入所した時の長野刑務所の首席矯正処遇官が非常に厳しい人で、最初に釘を刺されました。「ノートの『宅下げ』はいけない」と。「宅下げ」ってわかりますかね?
僕は、刑務所の中でメルマガや書籍などの執筆活動をしていたんですね。それで、ノートを面会に来た人に渡したり、郵送で送付していたりするのですが、こうした行為を「宅下げ」といいます。ノートの宅下げは、私信を送るのと同じ効果を持つのでダメだ、というようなことを言われたのですが、OKの刑務所もあったはずなので、「あれ」と思いました。でも、反抗するとろくなコトがないと思って何も言わずにいたんです。それが入所から1年くらいたって首席処遇官が変わると、こうした締め付けがメチャクチャ緩くなりました。担当刑務官に相談したところ、ざっくばらんな人だったので、やってみたらOKだったみたいな感じでした。
受刑者の処遇などを規定する監獄法は、2001年に名古屋刑務所で起きた刑務官が受刑者の尻にホースを突っ込んで死に至らしめた事件をきっかけに、2006年に改正されました。改正された内容は、先進的というか受刑者の人権保護などが謳われていて、法律的にはかなりマシになったはずなのですが、実際の運用ルールは厳しくなりつつあるようです。
例えば、本の差入れは法律上制限がなく原則自由のはずなんです。それなのに、内部ルールで「1ヶ月1人あたり10冊まで」などと決まっている。言い訳なんでしょうが、検閲をする人員が足りないからと。
1人あたりというのは、受刑者1人あたりではなく、差し入れ人1人につき10冊までということです。なので、事実上、無限に差し入れできますが、最初の処遇官に言われたのは、「だからといって、何人もの差し入れ人から差し入れてもらったりするなよ」ということでした。適当にごまかしていましたが、要はそういう恣意的な運用がされているということです。
ただ、僕の場合は手紙や面会を通して、Twitterとかメールマガジンで発信し続けたことが影響したのかもしれませんが、比較的マシな方で待遇などもだんだん改善されたと思います。例えば、長野の冬はメチャクチャ寒い。外の温度はマイナス15度くらいで、北海道並に寒いにもかかわらず、1年目は暖房が入りませんでした。手がかじかんで作業できなくなると困るので、工場にはストーブがありますが、居室にはストーブがない。
「寒くて死にそう」とずっと手紙に書いていたら、次の年から暖房が極寒期の2週間だけですが、入ったんです。1年目は、65歳以上の高齢者は2枚だけど僕らは毛布1枚だけで、メチャクチャ寒かった。中にメリヤスっていうトレーナーのようなものを2枚重ねで着て、その上にパジャマを着て、靴下二重にしてなんとか眠れるくらい寒いです。2年目からは毛布が2枚になったので、靴下を脱いでも布団に入れるようになった。こういうのは主張したもん勝ちだなと思いました。
高齢者は極寒の中を行進させられるのですが、体調を崩して死んでしまう人もいたりします。体調が悪いなら、休んで病舎に入れば良いじゃないかと思うかも知れませんが、これは一番最悪なことです。病舎に昼間いると、ただ寝てるだけ。ラジオもつかないし、読書もできない。これは、メチャクチャ苦しい拷問みたいなことなんです。まだ、刑務作業をしていたほうが、ましです。
心臓が悪そうなおじいちゃんが、苦しそうにしていたので、「行かないほうがいいですよ」と休ませたら、そのまま見かけなくなって、1か月後くらいに担当者から「どうも亡くなったらしいよ」と聞かされて切ないなと思いました。
大谷:堀江さんは刑務所の中から書籍も出版されました。そういう中から情報発信したことの影響もあって、担当者や待遇に変化があった、という可能性はあるのでしょうか?
岡本:堀江さんが言ったから変わったということはないと思いますよ。2006年の法改正で、受刑者の人権などの必要性が叫ばれた結果、規則が比較的緩やかになりました。
それによって矛盾がでてきたのです。つまり、手紙の発信など受刑者の自由が増えてくると、管理がしにくくなるという矛盾です。自由の範囲を増やすことで、受刑者が規則に従わなくなるのではないか、意見を言ってくるんじゃないか、ということを恐れるのです。
刑務所が最も恐れるのは、受刑者が問題を起こしたり、外部にスキャンダルが出ることです。なので、法改正によって規則が緩くなる一方で、内部の統制は反比例するように厳しくなっている現状があります。
でも、こうした状況は担当者が代わると、ガラッと変わることがあるんです。なぜかと言うと、幹部になればなるほど、1~2年の周期で担当が変わるんですね。人間なら誰でもそう思うでしょうが、自分の任期中は問題を起こしたくないという心理が働きます。そのため、受刑者が問題を起こさないように、それなりの処遇をする。その一方で、自分の信念を貫こうとするような刑務官もいますから、受刑者に対する処遇がコロコロ変わるということがあるんです。刑務所や年度によっても受刑者の処遇が異なってくる、というのが実情ですね。
堀江:僕は処遇首席がかわったから待遇が多少良くなったんでしょうね。それは可能性としてはありますよ。
前任の人は、ペペさんなんかも嫌いだったみたいで、呼ばれませんでした。刑務所内にミュージシャンなんかが慰問に来た時、原則拍手しかできないんですけど、ぺぺさんの場合だけは、拳を挙げたりすることができるんです。「元気だせよ」という歌があるのですが、歌にあわせて拳を挙げるのがOKなんですよ。他の慰問の人には絶対無理なんですよね。
そんな風に、とにかく属人的でしたね。僕は刑務所内で「社長」と呼ばれていたのですが、少女時代などの韓流ミュージックが流行していたときに、同じ受刑者の人から「社長、少女時代呼んでくださいよ、慰問に」なんて言われて、頼んでみるか、といって手紙に書いたら、処遇本部というところに呼び出しくらいましたからね。僕はそこの呼び出し回数がメチャクチャ多かったんです。それで手紙を出されて、「なんだこれは。こんなこと書いちゃダメだ」みたいなこと言われて、「うわっ、めんどくさ」と思いましたよ。
これは過去にヤクザの親分なんかが自分の権勢を誇示するために自分の人脈を使って大物演歌歌手を慰問に呼んでいたことが問題視されるようになったという理由があるみたいですね。でも、どうやって決めているんですか。慰問する人の基準というのは?
岡本:幹部の好みかもしれませんね。
今、堀江さんが指摘されたことは、実は受刑者の社会復帰を考える際に非常に大きな問題をはらんでいます。「上司が替わるごとに規則が微妙に変わる」「それまではよかったことがダメになる」。こういう状態が続くと、上司の顔色をうかがいながら、生活しなければならなくなります。つまり、自主的な気持ちが抑圧されていくパターンにはまっていくのです。
受刑者が目指しているのは「早く外に出る」ことです。仮釈をもらいたい、仮釈をもらうためには、上の者に逆らわず、言われたことに従わなければならない。刑務官の言われたことにそのまま従わないと懲罰になってしまう。懲罰になるかどうかの基準も年度ごとによって異なるのであれば、それにあわせて自分を殺して刑務官に従っていくことが賢いやり方になるわけです。
こうした態度の中に、本来的な意味での反省や、出所後に必要な人とつながって社会で働いていくといった視点はまったく欠落しているのです。はっきり申し上げると、刑務所は罰を与えるところとしては機能していても、更生するための機関としては機能していない。自分の気持ちを押し殺したり、人の顔色をうかがいすぎるようになったりするので、社会に出て人とつながって生きていくという側面を奪われている。その点において、「更生する場」にはなっていないというのが、実態だと僕は考えています。
“反省”を繰り返すと人は悪くなる?
堀江:刑務所って、本当に更生させたいと思ってるんですか?
岡本:懲役何年という期間を大過なく過ごして刑務所から出て行ってほしい。それが本音でしょう。
大谷:受刑期間に懲罰と更生の2つの意味があるとすれば、堀江さんの場合はずっと無罪を主張されていたので、その2年間について罰という受け止め方はしなかったということでしょうか?
堀江:僕は普通にそういうのは馴染むほうなので、“修行”だと思ってやっていましたけど。
僕のことではなくて、他の受刑者のことが気になっているんです。
例えば、薬物関係でつかまった人たちにとって、正直言って刑務所はまったく機能していないですよ。今度、「刑務所わず。」という刑務所シリーズの最終編を出版するので、そのゲラチェックをさっきやっていたんですが、ヤクで捕まった人たちって全然反省なんかしてません。だいたい食堂とかでクスリの情報交換をしているんです。
僕が、新聞の株欄を見ていると「社長、ニプロとかテルモの株どうすか」って聞いてくるわけです。ニプロとかテルモって注射器を作っている会社なんですけど、それにすごく興味がある。
でも、彼らってクスリが抜けた状態だと、本当に普通の人たちなんですよ。この人たちを、刑務所に入れて何の役に立つのかなって思いました。薬物から脱却させるための教育という矯正プログラムもあるんですが、まったく機能していないですよね。
岡本:薬物に関しては、法務省がいろいろプログラムを作っていますね。薬物と性犯罪については認知行動療法に基づいたプログラムが一応確立しているのですが、あまり僕は効果がないと思っています。
すべてを否定するわけではありません。専門的になってしまうので簡単に言うと、認知行動療法では、ゆがんだ考え方を変えていこう、薬物に手を出さないためにはどうしたらいいか、どう我慢すればいいか、どう回避行動が取れるか、といったことを一生懸命考えるのです。
つまり、トレーニング的なやり方になるんですね。トレーニング的なものは、必ず抑圧とセットになっていることに留意しなければなりません。長期間我慢して薬物から離れていこうとトレーニングしていると、どこかで挫折やしんどさが出てきた時、一挙に爆発してしまう。抑圧している期間が長く、その力が強ければ強いほど大きな問題行動として表出してしまうことを考えると、今のプログラムの有効性には疑問があります。
また、僕は今日もう一つ言いたいことがあるんですよ。堀江さんの著書なんかも拝読させていただいたんですが、刑期に一応不満はあったわけですよね?
堀江:まあそうですよね。
岡本:そもそも罪を犯したわけですから、すべての受刑者は否定的感情をみんな持って、刑務所に入ってくると思ったほうがいいと思います。堀江さんのように裁判に不満があるとかいったように、必ずネガティブな気持ちを持ちながら、刑務所に入所していると思ったほうがいいです。
僕の理想を言うならば、刑務所に入った最初の段階でしっかりと受刑者の話を聞いて、いろんなことを整理するべきです。裁判に不満があったり、被害者に対して「アイツがいたからオレはここに入った」とか、そういうネガティブな感情を抱えたまま、刑務所で生活していると自分の本来の問題と向き合えないんですよ。
「自分がなぜ犯罪を犯したのか」「自分のどこに問題があったか」に、いつまでも向き合えない。ですから、最初に「受刑者は何らかの不満がある」という視点に立って、その不満を取り除いて刑を過ごしていかないと更生にはつながらないと思うんです。
堀江:具体的にはどうしたらいいんですか?
岡本:僕の場合、初期の段階でカウンセリング、面接をしっかりしますね。堀江さんが入所してきた段階で、たくさん話を聞きたいです。事件のことや、裁判の過程でいろんな苦しい思いをされたと思うので、そこをしっかり聞いていきたいというのはあります。
堀江:聞いたところで、そこで本音は言わないと思いますよ。
岡本:どうしてですか?
堀江:早く出たいから。
岡本:僕らは外部の支援者ですが、刑期への影響力はありませんよ。
堀江:ただ、そこで言ったことが刑務所側に伝わる可能性は考えちゃいますよ。例えば殺人を犯した人間が「あいつに憎悪があって…」なんて話したら、「あいつは反省してないのか」とネガティブに捉えられて、仮釈放がなくなると考えてしまう。
岡本:それは、僕が本にも書いたのですが、「“反省”しないと仮釈がもらえない」パターンですね。新しい視点を受刑者に投げかけないと、いけないと思います。刑務所だけでなく世の中の風潮が、反省を求めすぎている。「すみません、ごめんなさい」といわせることで、問題行動を終わらせてしまいますが、その前にしなければいけないのは、ネガティブな気持ちを外に出してしまうことです。
表面上の「二度とやりません」という言葉と反省を繰り返すことで人間はどんどん悪くなっていくのです。そうではなくて、そういう考えに至るには、過去にどういうことがあったのか、教えて下さいという視点が必要だと思います。これは過去を振り返ることになるので、幼少期にまでさかのぼることが多いです。そこまで聞くという視点に立てば、本音が出てきますね。
堀江:ただ、覚醒剤の人とかは、基本悪いという気持ちを持ってないですね。
岡本:僕も覚せい剤の人は苦手なんですが、彼らに関わるにはまず「覚醒剤をやりたい」という気持ちを言わせることが大事です。彼らは最初ハッキリ言います。「止めるつもりはありません」と。でも、もっと深めて聞いていくと、「やめれるものならやめたい」という言葉が出てくる。こういうところまで、引き上げられるかどうかが支援者の力かなと思います。
堀江:覚醒剤の場合、生まれた経緯が経緯ですからね。昔は普通にヒロポンとか言って薬局で売っていたものが、途中から違法になって…という流れをたどるので、根が深いでしょうね。カウンセリングでうまく行けばいいですけどね。
岡本:根が深いということは、ポジティブに考えれば「根がある」ということです。
スタンダードなパターンでいうと、覚醒剤の前にはシンナーというケースが多い。シンナーの前にはタバコ、タバコの前には不良仲間といった感じに原因をたどっていけます。そうやって掘り下げていくと、幼少期に何があったかにどうしても繋がってくるんです。
彼らは覚醒剤をやめることをあまり考えてない。だからこそ、幼少期のストレスを発散するためにタバコなどに手をつけていった、両親に殴られて痛かった、学校に行って暴れて友だちができなくなった、それで悪い仲間ができたといった原点を一緒に振り返る。受刑者の多くは、とにかく過去を振り返ることをしないのですが、それを一緒になって振り返り、自分の問題行動の原点に本人が気づくと大きな転換点になります。覚醒剤はいちばん難しいですが、それをしないと本当の更生にはつながらないと思います。
堀江:それはだいたいありますよね。幼少期だったかはわかりませんが、両親から悪いことをしても咎められず放置されたことがきっかけで、ずっと性犯罪や窃盗を繰り返していたというような人に刑務所内で会いました。でも、その人は対人コミュニケーションスキルは高いんですよね。
実際にはいろいろなパターンがありますが。「この人たち、本当に犯罪者なのかな」みたいな人は結構いましたね。「無免許運転で35年間」みたいなパターンが最近多いですよね。
35年間運転できたということは、車の運転がうまいってことですよね。5年間1回も運転しなくてゴールド免許の人よりはうまいでしょう。だから僕は、そもそも免許制度そのものにも、疑問を抱いていたりするんですが。
あと、僕は、工場の刑務作業についても改善の余地は山ほどあると思っています。うちの工場も全然仕事がなかったんですが、何をやっていたかというと、ゴルフティのリフトティの先っぽを作っていたり、長野県はキノコの栽培が盛んなので、キノコキャップというのをつくったりしていたんです。でも大概仕事がないし、あっても社会に出ても何のスキルにもならないという仕事ばかりです。
例えば、島根あさひ刑務所だったかと思いますが、PFIの社会復帰促進センターでは盲導犬の育成なんかをやっていて、ああいうのこそ、すごくいい仕事だと思いますね。こうした取り組みを拡大していくつもりはないんですかね。
岡本:ないでしょうね。刑務所っていうのは、そもそも何かを生産する場ではないので、そこにお金をかけたくないのが本音かなと思います。でも、新たに被害者が生まれるということを考えれば、ちゃんと人的資源とかノウハウを投入して、刑務所を変えていかないといけない。
堀江:再犯率が5割を超えてるということは、更生の場として機能してないということですよね。
岡本:そこに疑問を抱いてる刑務官もあんまりいないですよ。「戻ってきて当たり前」とは思ってないでしょうが、刑務官もルーティーンに慣れているというのが本当のところじゃないですかね。
上司から言われたことを上意下達して、刑務作業をさせるのが仕事になってしまっている。つまり、言われたことにそのまま従って評価して、それが更生だという考え方になっているんですよね。「二度と刑務所には来ない、やりません、反省しています」と言って社会に出て、誰ともうまくいかなくなって再犯を犯すという構造があるにもかかわらずです。
堀江:仕事として刑務作業が実社会で役に立たないどころか、例えば満期出所した人って、わずかながらの作業報奨金2~3万を持っていくだけじゃないですか。家すらないわけですよ。「この人、どうするんだろう」ってずっと思ってました。満期出所した70オーバーのおじいちゃんなんかを見てきたんだけど、ああいう人はその後どうなっているんでしょうかね。
岡本:中に入っている人は軽く考えています。何とかなるって。
堀江:本当ですか? 僕はこの人たち、のたれ死にするしかないと思いましたが。
岡本:それが普通の感覚なんだけれども、何度も犯罪を繰り返す人は、非常に軽く考えている。何故なら、深く考えるとしんどいからです。また、刑期中は、深く考える訓練をすることなく過ごさせるからです。
人に自分の内面を考えて語る場面がないから、自分を深く見つめることがない。周りの人間を軽く考えたり、犯罪の自慢話といった雑談をしてすごしている。世の中を甘く見て、何とかなると思っている状況に流されているわけです。
堀江:半分ぐらいは刑務所にいた方が幸せじゃないかという人でしたね。この人たちそのまま社会に出していいのかなって思っていました。これは単なる提言ですが、刑務所の中に、刑務所と社会の間みたいな、そういう施設を作ればいいと思ったのですが。
岡本:私もそれを一番考えているところです。そもそも人と人がつながるためには何が必要かというと自分の気持ちを素直に言えたり、「今、オレ辛い」といった情けない部分をさらけ出すことだと思うんです。
堀江さんが書いた、『ゼロ』という本を読んで、堀江さんを非常に身近に感じられたと共感してる人がたくさんいます。要するに弱い部分は魅力になるわけですよ。弱い部分を出せることが人とつながることのひとつの条件なんです。
入所者の多くは、強くなければならないとか、男らしくあらねばならないという価値観だけはしっかり根付いていますから、しんどい時でも「しんどい」と言えずに自分で抱え込んでしまうというパターンが多いです。その原因は、多くの場合幼少期にまでさかのぼります。
幼少期に父親に殴られてるとか、両親が不和であるとかいった問題を抱えていたことが原因で、自分自身が幼少期に甘える体験をしていないため、大人になってからも甘える体験ができない。それが社会に出ても人と関わることができないという状態につながっていってしまうわけです。
日本の刑務所には“アホらしい”規則が多い
大谷:先ほど、堀江さんが言われたような刑務所と社会の中間の施設のような仕組みや制度面で、諸外国でうまくいっている事例はあるのでしょうか?
岡本:アメリカにはアミティという犯罪者やあらゆる依存症者の社会復帰を支援する非営利団体があります。そこは本音で、自分の過去を振り返ってグループワークをするという形をとっています。実際に受刑者が社会に出てから、元受刑者として刑務所に戻って支援に参加するという施策も行っています。
施設は刑務所なんですけれども、刑務作業ではなく、皆が時には涙しながら本音で自分のことを語り、人とつながることの重要性を実感させることで再犯率が本当にグッと低くなっているという事例があります。
堀江:そういう視点で言うと、日本の刑務所は逆効果になっているケースが多いですよね。
ルールが細かすぎて、すごく注意していないとすぐ懲罰になってしまう。
大王製紙元社長の井川さんに面会にいった人から聞いたんですが、早くも懲罰を受けたらしくて、何をやったかと聞いてみると、「タオルの不正洗濯」だっていうんです。悪いことをすると懲罰房に連れて行かれて懲罰審査会にかけられるんですが、彼の場合は戒告という一番軽いものですんだそうです。
タオルは通常洗濯日が決められているんです。タオルには居室用と工場用があって、工場用は毎日刑務官に頼めばいつでも洗濯できるんですが、居室用は、洗濯日が決められていて、僕がいた長野刑務所の場合は土曜日の午前中なんですよ。土曜日午前中、朝食が終わってから運動が終わって、昼食が始まるまでの間だけ、タオルの洗濯ができる。それもたらいに3杯の水だけで、それ以外の日に洗っていると懲罰になります。そういうのって、どうなんですかね?
岡本:アホらしい規則を言い出すときりがない。爪楊枝を1本、余分に使うと懲罰とかね。
他にも夏に暑いからアタマに水をかけたら懲罰とかね。細かいことを挙げるときりがないのですが、今の井川さんの話でいえば、次から井川さんは、懲罰にならない行動パターンにしようとするでしょう。そうすると、どんどん自分の言いたいことを言わなくなる。人から言われたことに従うというパターンに陥ってく。刑務所に入ると、ハッキリ言って、人間が悪くなるんです。罰を与えるだけでは、人は悪くなる。
堀江:ニコニコ動画のコメントを見てると、「規律を保つためだから仕方ない」「ルールを守れない人が入るところだから、ルールを守らせるために細かいものを決めている」という声がありますが、それについてはどう思いますか?
岡本:ルールの目的が違いますよね。刑務所側が規則を強いるのは、更生のためじゃなくて、管理や秩序を最優先にしているからです。
堀江:そんなルール守れたところで、社会ルールとは違いますよね?
岡本:刑務所では事故が起きないことが最優先されますから、更生とは真逆ですよね。
堀江:僕がいた工場には認知症の老人もいて、メチャクチャでしたけどね。ひげそりって朝やることが多いですが、刑務所は朝ひげそりをしてはダメなんですよね。でも、老人はそういうルールを覚えてないから、いいことになってしまう。
岡本:高齢者を担当するところは緩くなりますよね。
堀江:そうですよね。僕らもその分、緩くしてもらって楽だったんですけど。そういう細かいルールじゃなくて、もっと根本的なことをしないと、何も変わらないと思います。性犯罪で捕まった僕の同僚の衛生係も、心の奥底がねじまがっていると思いました。その人は、車上荒らしと強姦が趣味だって言うんですよ。その人は、出て来たら、またやると思います。根本的な部分が変わっていないですから。
大谷:社会復帰の観点で言うと、どうですか?ここを出たら新しい仕事に就きたいとか、ビジネスを始めたいという人にとって、準備期間としての刑務所のあり方については。
堀江:僕の上司だった受刑者は、メチャクチャ嫌なヤツだったので、僕の刑務所生活はそいつとどう付き合うかが、最大のテーマでした。彼がいなければメチャクチャ楽だったと思います。彼は確か、30代女性の部屋に忍び込んで、金目のものを物色していたら、その人が起きてしまったので、仕方なく持っていた縄で縛って、キャッシュカードでお金を下ろして懲役6年という人でした。
彼は、ものすごく細かいことまで報告しないと、すぐキレるんです。僕に対してはそうでもなかったんですが、1つ先輩の受刑者はずっと立たされて、嫌みを言われていました。その人も確かに作業をよくミスるんですが、それにしても延々といじめる。刑務官もそれを見て見ぬ振りでした。最後、いじめられてた人は最後「衛生係やめたいんです、一般工にしてください」と言って、一般工扱いになってましたね。
その上司は、「フツーの会社でオレ、働けないんだよ」といって、「今川焼き屋をやろう」とか「屋台をやりたい」という話をしていました。「それはそれで大変だと思いますよ」と答えたりしていましたが、例えばじゃあそういう人たちが社会復帰してできる仕事として、「ソーシャルゲームのプログラマーになったらどうか」という話をしたのですが、そういうのを教えたりしないんですかね?
例えば、喜連川社会復帰促進センターではRubyをやってるんですよ。企業が間に入って、そういう支援をもっとやればいいのにと思います。長野刑務所は、すごい古いWindowsパソコンが4台あったり、高齢者にパソコンを教えるという名目でパソコンを触る時間が週に1回ありました。4台しかないから4人だけ、「特打」みたいなのでタイピングをずっとやってるんです。
岡本:長野刑務所はまだいいほうだと思いますよ。堀江さんがお話されたような刑務所は、PFI刑務所と言います。「スーパーA指標」、つまり限りなく再犯の恐れがない、刑の軽い人を収容しているPFI刑務所では、そういう実践がされています。
教育やプログラムの準備は、出所が近い人ほど用意されているわけです。刑務所というのは、AとBに分かれていて、Aは刑期が短くて初犯、Bは窃盗とか、覚醒剤などの累犯者になっています。このABにL(Long)というのがついて10年以上になった場合、LA、LBにという風に分類され、収監されている期間がずっと長くなってきます。こうした長期間収監される人々に対しては、何もしていないに等しいです。被害者の手記を読ませたりとか、ビデオ見せたりとか、それぐらいのことはしていますけれども。
そういう意味では非常に矛盾しているんです。本当は重い犯罪をした人ほど、社会に出る際に手厚いケアをしないといけないのに、ほったらかし状態。一方で、出所が近い人ほど手厚いとまでは言いきれないんですが、それでも様々なプログラムが用意されているという現状があります。
堀江:それはやっぱり予算の問題とかそういうことになるんですか?
岡本:予算というか、実際5割くらい起こってしまうのですが、再犯を防ぎたいという思いがあるようですね。
堀江:でも、今のままでは絶対再犯しますよね。矛盾していると思いますけど。
岡本:これを言うとかなり厳しいバッシングを受けそうですが、常々刑務所はどこを向いてるのかなと疑問に思っています。つまり、社会、国民を見ているんじゃないかと思うんですよね。受刑者を見ているのではなく、国民の目を気にしているのではないでしょうか。
堀江:でも国民にとっても再犯者が減ったほうがいいですよね。
岡本:減ってほしいがために、「いっぱいやってますよ」ということを、アピールしてるとも言えます。だから覚醒剤なんかについては、今一番増えている犯罪なので、プログラムを受けさせるという形だけはとっているんですよね。でも、効果はそれほどでもない。
「厳罰化」の風潮はメディアが作り出している
堀江:あともう1つ、これは犯罪被害者へのエクスキューズなのだと思いますが、厳罰化が進んでるじゃないですか。そうなると刑務所入る人が増えますよね。その辺はどう考えればいいんですか?
岡本:厳罰化が進むことで、以前は8年だったLが10年になって、LBの刑務所に入るはずだった受刑者がBの刑務所に移ってきています。つまり、刑罰の重い刑務所に入っている受刑者が下にずれてきていることがあるんですよね。
堀江:長野は元々LAだかBだかどっちかだったんです。そこから長野はAに変わった刑務所なんですよ。なので、昔からいる無期懲役の人なんかもいるんですよ。
厳罰化が進むと刑務所に入る人は当然増えてきますよね。昔は刑務所に入れなかった人を刑務所に入れて何かよくなるのかなと、僕は基本的な疑問としてありますね。
岡本:これは被害者の視点と加害者の視点は分けて考えないと絶対に無理なんですよね。
悪いことをしたんだから厳罰にしてほしいというのは、被害者の思いとして正しいとは思います。ただ、一方で加害者に厳罰を下して、罪を重くしても、犯罪抑止力にはならないということは歴史が証明しているわけです。
殺人だけを見ても、日本は先進国の中で、ダントツに人を殺していない。それでももう厳罰化がどんどん進んで、懲役年数が増えている。無期・死刑もどんどん増えているのが現状です。
堀江:ヨーロッパだと逆に、EUに加盟する時に原則として、死刑はなくなるわけじゃないですか。そんな風に、どちらかというと厳罰化でない方向に進んでいると思うんですけど、なんで日本だけ厳罰化が進んでるのかすごく疑問です。
例えば僕の場合、証券取引法違反って、懲役の上限は5年だったんですよ。ライブドア事件のさなかに国会で金融商品取引法が成立して、懲役の上限が10年に伸びたんです。
同じようなことが結構起こっていて、自動車運転過失傷害罪や著作権法の違反も適用条件が厳しくなったり、上限が上ぶれしたりしている。そういうのも含めて、なんか犯罪者を増やす方向に進めようとしている、と思うんですが。
岡本:その原因はハッキリしています。マスコミですよ。
被害者遺族が、厳罰化してほしいと考えるのには僕も共感できるのですが、報道の問題もあると思います。被害者サイドに焦点を当てるから厳罰化の方向に誘導されていったというのはハッキリしているわけです。
例えば少年犯罪でいえば、酒鬼薔薇の事件以来、一気に少年法や刑罰が重くなっていたわけですね。あるいは、バスジャック事件とか、ああいうものを取り上げていった。しかし、戦後あるいは戦後10年くらい間、日本の少年たちによる殺人事件というのは年間400件以上あったんです。しかし、その時にはニュースにならない。なぜなら、1日1件以上起きているからです。つまり、変な言い方ですが当たり前になるわけです。
でも現在は少年犯罪の数が少ないから逆に目立つ。目立つから取り上げられる。そして、新聞もよく売れるし、テレビでも報道される。
堀江:ライブドア事件の話も結構異例なんですよ。普通、検察って、“生きてる”会社に入らないですよね。例えば、ある企業が粉飾決算やっていたとします。粉飾決算は、基本的にない売り上げを作り出すのですが、利益が出ていないと銀行から金を借りられなくなるので、黒字を作り出すためにやるというのが、多くのパターンでした。だから、民事再生法を申請して潰れた会社とか、そういうところに入るんですよね。会社は既に潰れているので、株主は被害を受けている。だから、検察が入ることで被害者が増えることはないわけです。この視点から考えると上場企業なんかには普通、立ち入りしないんですよね。
ライブドアは当時、限りなく現金に近い流動資産が2000億以上あって業績も伸びる予定の優良企業でした。粉飾決算の容疑を掛けられたのは、2年も前の2004年の決算で直近の決算は何も問題がなかったのに、強制捜査をやるというのは、「つぶしてやる」という強いメッセージじゃないですか。
当時の株価は500円台だったのですが、捜査が原因で連日ストップ安になり、最後は70円くらいまで下がりました。でも、流動資産が2000億以上あって負債はほとんどないので、企業価値は300円分くらいあったはずなんです。それを捜査が入ったものだから、株価が下がって、その後株主と裁判になったので、和解のための金を払わなくてはならなくなった。その分価値が棄損していくし、みんなでどんどん損する構造になってしまった。つまり、実際のライブドアの企業価値より下がっていくスパイラル現象が起きたんです。株主保護の観点から言えば、何故ここまで、ハードランディングさせる必要があったのか疑問です。
さらに通常は株価への影響を考慮して、強制捜査は金曜日の夜に入ることが多いんですよ。市場は土日休みだから、その間に冷静になって考えるので、株価の下落はある程度押さえられるんです。でも、月曜に捜査に入られたので、火水木金と連続ストップ安ベースになり、1時間しか取引できない日もあったぐらいです。で、結局みんな損したという状況です。
僕はその後、ほぼ全財産をはたいて、皆さんと和解して行ったのですが、そういうことを考えてやってないですよね。ただ、センセーショナルにやる。検察もそうだし、マスコミもそうですよ。運命共同体というか、社会的に「アイツ、叩いたら面白そう」というのを狙って叩くのが検察と特捜部ですよ。マスコミもそれを煽るし、共同で「祭り」を作る。
犯罪者をマスコミや検察、警察が一緒くたになって作り上げているという問題点がありますよ。だからこそ、刑務所に入ってる受刑者も反省をしない。彼らはたぶん、犯罪だとも思ってないのかも知れない。その辺りを含めて、改善をするにはどうしたらいいのか、答えが見つからないんですが、どうですかね?
岡本:そういう悔しさとか辛さみたいなお話を僕らはもっともっと聞いていきたいですね。
僕も堀江さんと今日会うまでは、言い面、悪い面、両方を風説で聞いていました。例えば僕は近鉄バッファローズが好きなので、買収を名乗り出た時は、いいなと思っていました。
一方で、「金で人の心は買える」という発言なども聞いて、ポロッと出た言葉がピックアップされたのかなぁと。
堀江:あれはポロっと出た言葉じゃないですよ。そもそも、そんなこと言ってないんですよ。そう誤解されても仕方ない状況があっただけで。
岡本:それは結局、我々が知らないところで、そういうものが作り上げられているということになりますよね。それが、マスコミとしては面白い。そういうものを叩く風潮になってしまうことは、今の裁判などにおいては否定できないと思います。
マスコミが変わるには市民が変わらなければならない
大谷:時間も残り少なくなったので、会場から質問を募ります。
会場:岡本先生に質問です。現在、刑務所は社会と隔絶していますが、その中で矯正という動きが全然見られなくなっているという話が出ました。先生のロールレタリングという手法もそうですが、今、刑務所において、ちゃんと更生して社会に出すための動きというのは、具体的にあるんでしょうか。
岡本:例えば少年院というのは抑圧された社会なんですね。わかりやすい例を挙げると私語が禁止されている。少年院は教育を主眼としているので、刑罰の場ではないにもかかわらず非常に抑圧的なんです。それが私語禁止ということに表れている。
少年院の教官も刑務官も一緒で、受刑者や少年を抑え付けて、形ばかりの「マジメにやっていること」「しっかりやっていること」「反省ができてること」を重視して社会に送り出すので、結局再犯につながってるわけです。
寮生活をしている中で、少年たちが自由な時間は一切、話をしてはいけない。話をすると懲罰になる。「これはまずいんじゃないか」と、僕は前から言ってきてるんですね。ただ、こうした規則が少し緩くなってきている。なので、変わる可能性があるかなとは思います。
質問の答えになっていないのですが、時代や社会はものすごいスピードで変化しているのに、矯正の世界だけは全然変わっていないという封建的な縦社会になっています。なので、刑務所改革は抜本的にしないといけないと思っています。
ここからは僕の提言になってくるのですが、僕が書いた本の中で、「被害者の視点を取り入れた教育」というのを批判しているのです。この方式の教育を提唱している、矯正協会が出しているので「刑政」いう雑誌があります。ここに「被害者のことを考えさせる方法はうまくいかない」という私の論文を掲載して欲しいといったのですが、「先生の考えはわかるが、今の考えではストップさせてくれ」という返事でした。
これが、『反省させると犯罪者になります』を書くきっかけになったんです。専門誌に掲載することができないのであれば、世に問うて変えていこう、と思ったんです。僕自身のライフワークの話になってきますが、現在の刑務所が少しでも受刑者のほうを向いて変わっていけるように支援していきたいと思っています。
堀江:今までのやり方でダメだったのだから、目標を何か作った方がいいと思います。再犯率が50%だったのを30%にするとか、20%にするとか。それで目標を達成するにはどうしたらいいのかっていうところから考えればいいんですよ。今のやり方でやっていると、多分変わらない。ずっと変わってないですから。
現状をよくするためにはどうしたら良いかを考えてプログラムを1から作っていかないとたぶん変わらないと思います。タオルを土曜日以外に洗ったら懲罰とかいうのをやっている限りはダメだし。行進のリズムが合ってないからダメだとか。刑務所によっては、行進の時によそ見をしたら懲罰とかあるんですよ。そんなんで懲罰っていうのは、ちょっと非人間的ですよね。
岡本:それで更生できるわけがないんですよね。だから、こういう発言の機会を与えていただいたことは本当に僕としては嬉しいですし、ムーブメントの1つになればいいなと思います。
堀江:僕は、何か大きな事件なりが起こらない限りは変わらない気がしますけどね。
岡本:何か事件が起きると、今の状態だと逆に管理のほうに走ると思いますね。
堀江:ですが、名古屋の事件があったから監獄法を改正するという話になったわけですよね。
岡本:でも現実は緩やかにまた管理が強くなっているという状況ですから、根本的なところは何も変わってないんですよ。そこにメスを入れていかないといけない。
堀江:例えば、ノルウェーの刑務所などは、どんどん開放の方向に向かっていますが、なんでノルウェーではできるのに、日本ではできないのかすごく疑問です。ノルウェーなんて、この間すごい事件が起きたじゃないですか。乱射して何十人も殺した人が、懲役の上限20年と少しで、また社会に出てくるわけじゃないですか。
そういう実態があるにもかかわらず、厳罰化にも進まないし、刑務所の中にいる期間を長くすることもしない。でも日本は逆の方向に進んでいる。ノルウェーで再犯率が高いかと言うと、日本より低いわけですから。
岡本:僕はまず刑務所の中のことを、もっとみんなに知ってほしいと思います。判決後、その人がどうなったか、ということについては報道はストップしてしまうわけですよね。
例えば、無期懲役になった、その後受刑者が何をしているか、ほとんど皆さん知らないと思うわけです。そういうこともしっかり伝えていきたいと思いますし、そこからムーブメントを作っていきたいと思ってます。
堀江:今までの獄中記って、悲壮感が漂っていたり、辛くて苦しいけどマジメなことを書かなければいけないという思いが強すぎたと思うんですよ。でも、僕が書いた「刑務所なう。」は、淡々と事実を述べているだけなんですね。本当に日常を描いてるだけで。
普通の刑務所の姿って、こういうものだと。確かに、その実態は全然知られていないので、もっともっと広めて行ければいいなと思っています。
大谷:最後に重複してしまうかもしれませんが、ひと言ずつお願いします。
岡本:私は世の中の流れを変えたいと思っています。悪い事をしたら反省する、そして、二度とやらないと、固く誓う。こういう風潮は、弱音を吐けなくしたり、受刑者が問題を一人で抱え込んだりするという問題につながっていく。
こういうやり方は、刑務所だけでなく、社会全般でも行われていることだと思います。
だから、「反省するという空気感を根本的に見直してみないか」というのが僕の提言です。
これは家庭教育でも同じです。これは確信しているのですが、犯罪者の原点は幼少期にあります。ですから、幼少期からそういう価値観を転換していきたいと思ってます。
僕は今、大学で教えていますが、学生は非常に真面目で素直です。でも、逆から見れば、自分の気持ちを言えなくて、他人の目を非常に気にしている。そうやって自分の気持ちを抑圧をしていると、最後に爆発するという可能性があります。それは僕もそうですし、皆さんもそうです。なので、みんな犯罪者になる可能性はあるわけです。なので、もう少し自分の素直な気持ちを言い合える世の中を作っていければいい。これを受刑者支援を通じて、世の中に伝えたいと思います。
堀江:実際問題として、社会をよくするためには再犯者を減らすのが手っ取り早い。
新規に犯罪に走る人よりも、再犯者のほうが、社会的には問題なので。累犯者、あるいは累犯障害者のような人も今はいます。これを改善していくためには、刑務所を改革して、再犯者を減らす取り組みを目標を立ててやるべきだし、やってできないことはないと思います。
じゃあ、誰がやればいいのか。こういう方向性に行くには恐らくマスコミが変わる必要があり、そのためには市民が変わらなくてはいけない。結局、大衆がテレビに対してセンセーショナルな犯罪報道を求めるから、テレビはそれで視聴率が取れて、より犯罪者を作り出すような報道をしてしまう。マスコミのレベルというのは、つまり自分たちのレベルなんです。
そういう意味で一つ一つ意識改革をしなくてはいけないし、僕もそういう活動をしたいと思います。刑務所の中に「この人、絶対、再犯するな」っていう人がいますし、僕の工場でも半分はそうでした。なので、このままだとダメだと思います。でも、刑務所を変えないと変わりません。ここにいる皆さんが、周りにそういう話をする、刑務所を変えないと社会はよくならないと、社会的に提言をしていかないといけないと思います。
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