トンガの島が吹き飛ぶほどの巨大噴火で約59万回もの落雷が確認される
2022年1月15日に南太平洋にあるトンガのフンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山で発生した噴火は広島型原爆の500倍以上もの威力で、島をほぼ完全に吹き飛ばしてしまうほどの規模でした。この噴火の影響で、59万回以上の落雷が引き起こされたと報告されています。
Analysing the volcanic lightning from the Tonga eruption
https://graphics.reuters.com/TONGA-VOLCANO/LIGHTNING/zgpomjdbypd/index.html
https://www.livescience.com/tonga-volcano-eruption-record-breaking-lightning
フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山はトンガの首都ヌクアロファの約65km北にあり、トンガ・ケルマディック海溝からインド・オーストラリアプレートに沈み込むことで形成された「トンガ・ケルマディック弧」と呼ばれる海底火山列島の一部です。2022年1月15日にフンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山から吹き出した約1800度のマグマが海水と接触し、大規模の水蒸気爆発を起こしました。
通常、海中での火山噴火はガスや煙を大気中に放出することはありませんが、1月の噴火はあまりにも規模が大きかったため、噴煙が大気中へ大量に噴出する珍しい例だったとのこと。その噴煙がどれだけ大きなものだったのかは、以下の記事を読むとよく分かります。
トンガの火山噴火はどれだけ大きかったのか?爆発の規模を世界各国に重ねるとこんな感じ - GIGAZINE
NASAによれば、最初の爆発で生じた噴煙の高度は最高58kmほどで、中間圏にまで達したとのこと。その後、火山からの二次爆風によって、火山灰・火山ガス・水蒸気が50km以上まで噴き上げられたそうです。そして、中間圏の下にある成層圏には噴き上げられたガスと灰が充満し、15万7000平方kmの広さにまで広がりました。
以下の画像をクリックすると、フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山の噴火で起こった噴煙がものすごい高さにまで噴き上げられ、あっという間に広がる様子をGIFアニメーションで見ることができます。
フィンランドの環境技術企業であるヴァイサラの気象学者であるクリス・ヴァガスキー氏は「噴煙が成層圏に衝突して広がると、大気中に波が発生したように見えます」と述べ、この大気中に発生した波が落雷のパターンに影響を与えた可能性を示唆しました。
ヴァイサラが運営する雷検出ネットワーク「GLD360」のデータによれば、フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山の噴火中に発生した落雷は約59万回で、そのうち40万回が大爆発から6時間以内に発生したとのこと。また、発生した雷のうち56%が陸地あるいは海面に到達し、1300回以上がトンガ本島であるトンガタプ島に落ちたことが確認されました。
これまで火山による雷の発生回数は、2018年に発生したインドネシアのアナク・クラカタウ島の大噴火におけるおよそ34万回が最大とされていました。ヴァガスキー氏は「わずか数時間で40万回近い落雷が検出されるというのは通常では考えられないことです」とコメントしました。
雷の発生原理は完全には解明されていませんが、大気中に存在する粒子の衝突による静電気で発生すると考えられています。例えば空に浮かぶ雲の中では、氷の粒同士がぶつかり合い、一部の粒はプラスの電荷を、別の粒はマイナスの電荷を帯びます。プラスの電荷を帯びた粒とマイナスの電荷を帯びた粒が増えて電荷が十分に蓄積すると、雷という形で放電するという仕組みです。
火山の噴火で発生する雷には2種類存在するとのこと。1つは、上空へ噴出した灰や岩石の細かい粒子が電荷を帯びることで生み出される雷で、この雷は水分を含まずに電荷を帯びる「乾式帯電」によって引き起こされます。もう1つは、火山の噴煙が凍結して形成された氷の粒によって生み出される雷です。今回のフンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山の噴火では、水蒸気爆発によって氷の形成に必要な水分も同時に上空へ巻き上げられたため、この2つ目の雷も多く発生したと考えられます。
しかし、ヴァガスキー氏によれば、フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山の噴火でこれほどまでに大量の雷が発生した理由はまだ完全に解明されていないとのこと。ヴァガスキー氏は「科学者たちはすでに爆発の規模から、世界中を駆け巡った衝撃波や圧力波、津波、雷の量に至るまで、フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山の噴火がこれほど大規模になった原因を解明しようと努めています」と述べました。