ウクライナのセルギー・コルスンスキー駐日大使は、起立して犠牲者への弔意を示すように求めた

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ウクライナのセルギー・コルスンスキー駐日大使が2022年2月25日午前、東京・丸の内の日本外国特派員協会で記者会見し、ロシアの侵攻を受けている母国の状況を説明した。

ロシアは侵攻を前に、ウクライナ東部のドンバス地方にある親ロシア派2地域の独立を承認。コルスンスキー氏は、ドンバス地域から遠く離れた場所でもウクライナ側の人員が無残に殺害されたと訴えたほか、ロシア側がチェルノブイリ原発を掌握したことを「想定されていた最悪の事態」だと指摘。ロシア側には施設を管理するノウハウがなく、1986年の事故当時のように放射性物質が欧州に拡散する危険があるとして、占拠を「今すぐやめるべき」だと訴えた。

ロシア・ガルージン大使への言葉は...

コルスンスキー氏は会見冒頭、黒海北西部にあるズミイヌイ島(蛇島)で、ロシア海軍とウクライナの警備隊が交信する様子だとする音声を公開。この島はウクライナが管理していたが、ロシアに占拠された。

コルスンスキー氏によると、交信があったのは2月24日。ロシア軍が「武器を置け。降伏しなければ、お前たちを破壊する」と2回繰り返したのに対して、ウクライナ側の応答は「黙れ」。その結果、ウクライナ側人員は「残酷な攻撃で殺害された」という。会場の記者に対して、起立して弔意を示すように求めながら

「25人がロシア軍船2隻に対して、簡単な武器しか持っていなかったことを想像してほしい。(島の)全員が殺害された。彼ら(ロシア側は)は島の全ての構造物を消し去った」

と話した。

特派員協会では、この後14時からロシアのミハイル・ガルージン駐日大使が会見する予定。コルスンスキー氏は、

「この島はドンバスから2000キロ離れている。ガルージン氏は日本語が上手く『我々はウクライナを襲っているのではない。これは戦争ではなく、ドンバスへの対応をしているだけだ』と言うだろう」

とも話し、ロシア側の主張の矛盾を訴えた。

チェルノブイリ掌握したロシア側は「監視、管理する方法を全く知らない」

以前からコルスンスキー氏は、ロシアが侵攻すれば核インフラが危険にさらされる可能性を指摘してきた。侵攻によってチェルノブイリ原発をロシア側が掌握し、「想定されていた最悪の事態」が起きていると訴えている。ウクライナ側は「警備人員や職員が逮捕され、人質になっている」一方で、ロシア側は「監視、管理する方法を全く知らない」ためだ。

コルスンスキー氏は、1986年の事故直後に放射性物質がヨーロッパ中に広がる様子を示した図を投影しながら、「この規模の惨事になりうる」と指摘し、

「明日でも3か月後でもなく今週中でもなく、今やめるべきだ。1時間ごとに、これ(放射性物質の拡散)が起こっているかもしれない」

と話した。

コルスンスキー氏は、ロシアのプーチン大統領に「戦争犯罪人」の文字が入ったスライドを映しながら、ロシアの侵攻を非難した。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)