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今をときめく声優、高野麻里佳が2部構成の1stライブを1月10日に開催した。歌手活動の始まりは2015年、アニメ『それが声優!』のキャストで結成したイヤホンズ(他メンバーは、高橋李依、長久友紀)で、以降、イヤホンズとしてシングルやアルバムをコンスタントにリリースし続けてきており、2016年には“Animelo Summer Live 2016 刻-TOKI-”のメインステージにも登場。2018年からは、今や世間を席巻するコンテンツとなった『ウマ娘 プリティーダービー』プロジェクトでメインキャラクターの一人、サイレンススズカ役としての活躍が始まる。同コンテンツでは、“Animelo Summer Live 2018 “OK!””に出演のほか、2021年の年末年始には他キャストと共に数々の大型歌番組に出演を果たした。

そんな2021年は、満を持してのソロデビューイヤーでもあった。その約1年後にあたる2022年2月23日に1stアルバム『ひとつ』のリリースも予定されているように、まさに快進撃を続ける彼女が、どのような輝きを見せるのか、期待の視線が集まった初ソロライブであった。緊張も解けて一層華やいだ第ニ部のステージについて、各楽曲の解説を行ったアフタートークの内容を織り交ぜながら振り返っていきたい。



会場をOvertureが流れる中、ステージの白い紗幕が上がると、その先に待ち構えていたのも白一色のステージだった。中央のカーテンが左右に分かれ、やはり白い衣装に身を包んだ高野が現れ、2ndシングルの「New story」を披露。何色にも染まっていない白は、1stライブという新たな幕開けにふさわしい。アフタートークで高野は、「New story」のMVに際して希望を聞かれたとき、曲や、(自身も出演し、この曲が第1期OP主題歌を務めたアニメ)『精霊幻想記』のリオ君の印象から「何も持たない人がちょっとずつ大切なものを手に入れて彩りが増した世界」を提案したという。そこからMVの世界観が決まったという話だったが、待望の1stライブでも、ラスサビ前にある無音の次の瞬間、カーテンが落ちたステージ上の高野は、暖色系のライトで鮮やかに照らされた。



続いて、来月発売の1stアルバム『ひとつ』から「Oh my future」を。1stアルバム発売前の1stライブということで、高野は「どうやってノってくれるのかなって不安だった」とあとで語ったが、ポテンシャルが高く、高野のアーティスト活動をソロ以前から長く支えてきたファンの力は偉大だった。そこに高野の、ステージ全幅を使ってファンとコミュニケーションをとろうとするパフォーマンスも相まって、会場は熱く盛り上がっていく。



直後の初MCで会場への挨拶を済ませると、「夜更かして、午前2時」に。アーティストデビュー時には「グッドミュージックをやりたい」という希望を出していたという高野だが、一方で、聴いた人が負の感情を跳ね返して強く踏み出せるような曲にも挑戦してみたいとの想いもあった。その気持ちを具現化した曲がこの「夜更かして、午前2時」だ。朝眠いのは夜更かしのせいなのに、やっぱりまた夜更かししてしまうという共感しやすい歌詞に、エッジの効いたリズムとギターリフ、たたみ掛ける早口のボーカルが重なり、小気味いい“日常系ロック”が響き渡る。



そこから間髪入れずに披露した「I tie U」は、1stシングル「夢みたい、でも夢じゃない」のカップリング曲。1番と2番でメロディラインやリズムが変わるという変則的な構成だが、これも高野のアイディアによるもので、せっかくの1stシングルでファンを驚かせたいという気持ちの表れだった。さらには、これまで「人生でダンスに向き合ってこなかった」高野だが、「皆さんに少しでも楽しんでいただける要素を増やそう」と1stライブでの振り付けを工夫。4日前に振りがついたばかりという箇所もあるという努力も実って、キュートなパフォーマンスでファンを魅了する。

続いては夜公演のみでの披露となった「Flavored hug」。昼公演では「Sweet Voice」を披露したが、どちらもアルバム新曲の中ではゆったりとしたナンバーで、ここは高野によるチルタイムだったと言えよう。「Flavored hug」は携帯のプッシュ音や駅改札のSEなどが入っており、アフタートークで高野は、「音楽なのか現実なのか」の曖昧な境界から徐々に曲の「世界観に引き込まれていく」曲と紹介していた。



そんな曲のアウトロが流れる中、高野はまばゆいオレンジの光の中に去っていく。そして、スクリーンには1st、2ndシングルと1stアルバムのMV撮影時のオフショットなどを使ったインタールード映像が流れたあと、「Hide & Seek」のイントロと赤色のライトを浴びながら黒一色の衣装をまとった高野が登場した。スタンドマイクを前に力強く歌い始めると、間奏には加工された声での「もういいかい」「まあだだよ」が入るなど、ダークで独特な空気感をまとった同曲を歌い上げると、連続して「さよなら星空」へ。ロックな楽曲にコケティッシュな高野の声、そして星を散りばめる演出が一体感ある世界を作り上げていく。



曲後のMCで「本当に楽しんで歌うことができました」と感想を述べたあと、1stアルバムのリード曲「ひとつ」に。イントロ中に黒い衣装を脱ぎ捨て、ホットパンツから伸びたスラリとした美脚をパステルカラーの3段プリーツスカートでくるんだ衣装に早着替え。アルバム制作で、ディレクターが高野をイメージして作ったという1曲。高野自身も「過ぎる季節ごとに変わっていく私が好きだ」というフレーズは前向きな自分に重ね合わせられると気に入っており、マネージャーも初聴時に涙を流したという、高野麻里佳のテーマソングだ。この夜は、ポニーテールに薄黄色の大きなリボンをひらめかせて、元気にクラップしながら笑顔で最高のポップソングで観客を魅了した。その勢いを駆って、跳ねるメロディが陽気な「Ready to Go!」へ。会場との掛け合い前提で作られたライブソングだが、コロナ禍ということもあり、“ボルテージ上げていこう”というサビの掛け声を事前にファンから募集、この日はそれを楽曲に合わせて流すという粋な演出も入れたステージだった。イヤモニをつけた高野の耳には皆の声が響いて、思わず「ウルっと」来ていたらしい。間奏では、高野がステージ上から振り付け講座を開催。途中、高野自身がうまくできないシーンもあったが、そこは1stライブのご愛敬。2種類の振り付けを伝授後、本番を実施すると、見事に高野とファンは調和してみせた。



最後に持ってきたのは、ソロアーティスト活動始まりの曲「夢みたい、でも夢じゃない」。これからも「夢みたい、でも夢じゃない」活動が続くことを予感させるように、そして「素敵な1年の幕開けになるように」、そんな思いを込めて高野はラストを締めた。



ライブが終了したあとはアフタートークコーナー。昼公演は一問一答形式で進めたが、夜公演は前述のとおり、この日のライブを振り返っていく。また、「役者としての糧になる」という思いで始めたアーティスト活動だったが、ファンと「ここでしか得られない経験」を得て、アーティストデビューして本当によかったという今の気持ちを高野は会場に伝える。



そして最後の最後に用意されたのは、高野自身によるセルフアンコール。実は高野は今回のライブで叶えたい「夢」があった。それは、主題歌を担当したアニメーションの映像と一緒にファンに向かって歌う、というもの。『精霊幻想記』のOP映像を背負って「New story」を改めて歌い、また一つ夢を叶えてみせた高野は、歌唱後、1階と2階それぞれ上手、センター、下手の3方向のファンへ、そして配信ライブを観覧する人々にていねいな別れの挨拶を告げて、ステージを去っていった。

高野にとって最初で最後の1stソロライブだったが、マイクを持つ手や太ももを使って頻繁にクラップを見せ、彼女が心から楽しんでいること、ファンに楽しんでもらおうと感じていることが伝わるライブだった。特に後者の点においては、フロアに広がるファンたちに対して熱心に視線を送り、また手を振り、MCやトークコーナーでも呼びかけるなど、その姿勢は顕著だった。初々しくも誠実な人柄が見え隠れするステージは、高野麻里佳そのものであると感じられ、その貴重な時間が終わった次の瞬間、2ndライブが待ち遠しくなってしまった。

TEXT BY 清水耕司(セブンデイズウォー)

高野麻里佳 1st LIVE 〜夢みたい、でも夢じゃない〜

2022年1月10日(月・祝)日本青年館

<第一部>開場13:30 / 開演14:30

<第二部>開場17:00 / 開演18:00

[第二部セットリスト]

1.New story

2.Oh my future

3.夜更かして、午前2時

4.I tie U

5.Flavored hug

6.Hide & Seek

7.さよなら星空

8.ひとつ

9.Ready to Go!

10.夢みたい、でも夢じゃない

-アフタートーク-

関連リンク



高野麻里佳レーベルサイト

https://columbia.jp/kohnomarika/