3月期末を控えて気になるのが配当状況。『会社四季報』最新号のデータでみると無配・減配知らずで高配当利回り企業には金融系が多い(写真:ブルームバーグ)

12月15日発売の『会社四季報』2022年1集(新春号)では、上場企業の株主還元状況を検証している。各企業のページには配当性向とともに過去10期の増減配回数を掲載。増配、減配、据え置き、無配の回数がわかるので、企業の還元姿勢が一目瞭然だ。

多くの企業が決算期末を迎える3月末に向けて配当取りの動きが活発化する中、毎号掲載している今期予想配当利回りと併せて注目したい指標といえる。

増配5回以上で今期も減配回避の積極還元銘柄


新春号では、過去10期の対象期間に減配・無配がなく、増配が5回以上、なおかつ今期減配予想ではない企業を、配当利回りの高い順に100社ランキングしている。今回はさらに、今期予想純利益が30億円以上の条件を加えた、上位50銘柄を紹介する。

1位になったのは、三菱UFJフィナンシャル・グループ系信販会社のジャックス(8584)。過去10期のうち7期増配しており、今期の予想配当利回りは5.33%(11月25日時点、以下同)。11月2日に今期業績の上方修正に併せて、配当予想も従来の年間140円から155円(前期105円)に引き上げており、今期も大幅増配となる。

2位はメガバンクの一角、三井住友フィナンシャルグループ(8316)。過去10期で6回増配、今期予想配当利回りは5.31%だ。こちらも11月12日に配当予想の増額を発表しており、当初予想の年間200円から210円(前期190円)に引き上げた。

なお、ほかのメガバンクでは、みずほフィナンシャルグループ(8411)の予想配当利回りが5.47%と三井住友FGを上回っているが、増配回数は2回にとどまっているので対象外となった。三菱UFJFGは予想配当利回り4.41%で18位だった。

3位には、光通信(9435)の子会社で、中小企業向けにOA機器などを販売するエフティグループ(2763)が入った。過去10期のうち9期が増配で、今期の予想配当利回りは5.28%。業績は安定しており、株主還元にも積極的。今期の配当予想は年間63円と前期から据え置きだが、減配リスクは小さそうだ。

連続増配で高利回りは金融系が多い

10期すべて増配だった企業の中では、三菱UFJリースと日立キャピタルが2021年4月に経営統合した三菱HCキャピタル(8593)が11位。ダイヤモンドリース時代から増配を続けており、前期まで22期連続増配。今期も増配の計画だ。

また、同じく連続増配中で、傘下に山口銀行やもみじ銀行、北九州銀行をもつ山口フィナンシャルグループ(8418)も20位に入った。ランキング上位を見ると、金融系企業が上位に目立つ。

そのほか、10期増配ではホンダ(7267)系の自動車骨格プレス部品メーカー、ジーテクト(5970)が28位となった。今期予想配当利回りは3.99%だが、こちらは自動車減産の煽りを受け、11月5日に業績予想を下方修正し株価も低迷したため、配当利回りの上昇につながったようだ。

時価総額1兆円以上で10期増配の大企業では、大和ハウス工業(1925)が37位に、KDDI(9433)が46位に入った。KDDIは10月末に発表した上期決算が微減益となり株価も軟調となったが、今期は20期連続増配が濃厚だ。

日経平均株価は2万9500円近辺に戻すと高値警戒感から上値が重くなりがちだが、こうして見ると地合いの悪化などで売られすぎの高利回りの増配銘柄も少なくないようだ。やはり、しっかりとした銘柄選別こそ重要といえそうだ。


(本記事は会社四季報オンラインにも掲載しています)