トマトも白菜もきのこも! プロが教える便利で味が落ちない最強の「野菜冷凍術」
実は野菜やキノコは冷凍すれば調理効率がグンと上がる | 食楽web
長く続いた巣ごもり生活で、“セカンド冷凍庫”を購入する人が増えているといいます。確かに食材を多めに買って冷凍しておけば、買い物の回数が減って便利ですよね。ですが、野菜に関してはちょっと別です。
筆者は使いきれなかった分は野菜室に入れ、早めに使おうとは思いつつ、気づいたときには傷んでいるパターンがけっこう多いんです。そこで最近では、少量のカット野菜を買ったり、日持ちしない野菜はなるべく買わないようにしたりしていました。でも、これではコスパも栄養バランスも悪くなる一方です。
そこで今回、NHK『きょうの料理』などで有名な管理栄養士・本多京子さんに、野菜の正しい冷凍術を聞いてみました。本多さんは、野菜のほとんどが美味しく冷凍保存できるということを、著書『シニア世代の食材冷凍術』(講談社)などで具体的な方法とともに公開しています。しかも、野菜を冷凍することのメリットは、保存が効くことだけではなく、調理時間が短縮できて、さらに料理も美味しくなる、ということもあります。
本多京子さんはNHK「きょうの料理」など、テレビや雑誌等のメディアで健康と栄養に関するアドバイスやレシピを多数発信。読売巨人軍の選手の栄養指導やメニュー作成にも携わる。著書は60冊を越える
たとえば、あまり冷凍するイメージのないトマトやタマネギも、冷凍保存でさらに美味しくなると本多先生。
「トマトを冷凍すると湯剥きの必要がなくなります。水をくぐらせれば湯剥きしたときのように皮がツルンとむけるんです。半解凍でシャーベット状にすればそのままデザートのように食べられるし、凍ったまま加熱してソースやスープにすると、短時間でうま味が出ます。また、タマネギも一度凍らせた方が火の通りがよくなるので、炒めものや煮物などの時短になるし、アメ色玉ねぎも短時間でできるんですよ」(本多さん)
筆者はトマトやタマネギなどは、冷凍したら味が落ちるとばかり思い込んでいたので、これは目からウロコ。もちろん、食品の冷凍保存には押さえておくべき大事なポイントがあります。でもそれさえ知っておけば短時間で調理できるし、栄養バランスだってぐんとアップするんです。
というわけで、さっそく本多さんに教えてもらった野菜がもっと便利で美味しくなる冷凍術をご紹介していきましょう。
冷凍保存術の大事なポイントとは?
具体的な野菜の冷凍法の前に、“冷凍とは何か”をおさらいしておきましょう。最大のメリット、それはマイナス18℃以下で保存することで、細菌やカビなどの微生物の増殖が防げることです。なので食品を買ったときの新鮮な状態をキープできるよう、どんな食品でも新鮮なうちに冷凍するのが鉄則です。
一方、「冷凍すると食品が変化する」ことを知っておくことも重要。それが以下の2つです。
(1)食品(の細胞内)の水分が凍るため体積が増え、細胞膜が傷つく。解凍すると元の状態には戻らないため、食感が変わる
(2)傷ついた細胞膜の隙間から解凍時に水分が流れ出る
これだけを見ると、「冷凍すると食品はやっぱり味が落ちるのでは?」と思ってしまいますが、これが逆に利点になるのが冷凍の奥深さ。「解凍した食品は食感が変化して、中がスカスカのスポンジ状になります。しかし、そのおかげで加熱すると火の通りが早くなり、調味料が早く浸透するんです」と本多さん。
まずはトマトの冷凍方法から見ていきましょう。
※以下、本多京子さんの語りでお送りします。
トマト・ミニトマトの冷凍術
トマトといえば、サラダなど生食の目的で購入することが多い食材ですが、1回で食べきれなかった分は冷凍しておけば、料理に大活躍します。
トマトは水洗いしてペーパータオルで拭けばトマト同士がくっつかない
トマトはヘタを取って水洗いし、1つ1つペーパータオルで拭きます。この一手間でトマト同士がくっつかなくなります。ジッパー付きのフリーザーバッグに入れ、ストローで袋の空気を吸いとってから閉じます。
トマトを冷凍すると、水にくぐらせるだけで薄皮が自然にむけます。つまり、湯剥きの必要なし。加熱すれば火の通りが早く、また味が染み込みやすいので、トマトソースやめんつゆと煮て煮浸しにするととても美味しいのです。
冷凍したトマトの皮は破れて剥きやすくなります
トマトはグルタミン酸などのうま味成分がものすごく多いので、スープの素やダシの素のような感覚で料理に使うと料理の味わいがぐっと増します。例えば野菜スープに入れる、味噌汁に入れる、卵や野菜と一緒に炒めるなどなど、冷凍トマトは加熱することでよりいっそう美味しさが引き立つので、ぜひ冷凍しておきたい食材の一つです。
タマネギの冷凍活用術
薄切りにして、フリーザーバッグの中に平らに並べて冷凍します
続いてタマネギ。常温でも日持ちする食品ですが、これも薄切りにして冷凍しておくことで、かなり調理時間が短縮できます。炒めものや煮物、スープなどにそのまますぐ使え、生で使うよりも火の通りが早いので調理時間が短くなるのです。
タマネギのスライスを冷凍し、自然解凍しただけで透き通ったタマネギになります
とくにカレーなどを作る際に必要なあめ色タマネギは、通常なら40~50分炒める必要がありますが、冷凍したタマネギで炒めれば、15分程度で簡単にできてしまいます。
タマネギのスライスを冷凍しておけば、フライパンで炒めること15分ほどであめ色タマネギが完成
ちなみに、完成したあめ色タマネギもフリーザーバッグに入れて冷凍しておくと便利です。バゲットにのせてチーズをかけてトーストしても美味しいし、さらにそれをコンソメスープに入れればオニオングラタンスープも簡単にできます。
きのこ類の冷凍術
きのこはいろんな種類を組み合わせて使えば栄養バランスもいい
しいたけを始め、しめじ、まいたけ、えのきだけといったきのこ類は、食物繊維や抗酸化作用のある栄養素も多く、毎日積極的に食べたい食品です。きのことひと口に言っても栄養面でいえばそれぞれ特徴があるので、数種類を組み合わせて食べるのがオススメです。しかし、きのこは冷蔵保存では日持ちしないのが玉にキズ。そこで、これらも冷凍がオススメです。
石づきをとり、食べやすい大きさに切って、フリーザーバッグに入れて冷凍
冷凍きのこにしておけば、必要な分だけを取り出して味噌汁、炒めもの、煮物など何にでも使えます。しかも他の食品同様、冷凍すると味が染みやすくなるので、料理の香りや旨みがアップします。何種類かのきのこを購入して一気に冷凍しておけば、栄養価もバッチリです。
水分の多い野菜も冷凍できる!
シャキシャキのキャベツ、白菜、大根などは、生で食べるのが美味しい野菜。こうした野菜は火を通してもそのシャキシャキ食感を活かすと美味しい場合が多いですよね。ただし、前述のように、冷凍すると食材の水分が凍って細胞膜が破れ、水分が流出して食感が変わります。
冷凍は、“水の科学”とも言われていて、食材の水分の変化を念頭に置いて、あらかじめ水分の多い食品は、生の状態のときに水分をコントロールしておくことが重要。多すぎる水分を排除する方法は2つ。
・加熱しておく
・塩もみしておく
です。
大根の冷凍術
大きくて長い大根。料理に使うにしてもたいてい余ってしまいますが、かといって少量買うと不経済。そこで、1本買っても余った分を冷凍しておけば、美味しさと栄養が閉じ込められて一石二鳥なんです。ただし、大根は水分が多い野菜。そこで、あらかじめ加熱してから冷凍すると、次回使うときにとても重宝します。
大根は加熱後に冷凍するのがコツ
皮を剥いて2cmの輪切りにし、耐熱ボウルに入れてラップをかけ、電子レンジで3分ほど加熱したあと、粗熱をとってフリーザーバッグで冷凍します。
冷凍した輪切り大根は、おでんや煮物など加熱料理に最適。調味料の味が染みやすく、生で火を通していくより短時間で料理が完成します。
ちなみに、大根は生の状態で千切りにして冷凍したり、すりおろして製氷皿で冷凍してもOK。千切りは味噌汁に、すりおろしは魚や天つゆに合わせたり、何にでも使えます。次回使うことを想定して冷凍することを私は「段取り冷凍」と呼んでいます。大根はまさに段取り冷凍に最適な食品なので、時間があるときにまとめて冷凍しておくと便利ですよ。
白菜やキャベツなどの葉野菜の冷凍術
白菜やキャベツといった大型野菜は、野菜室でも場所を取るうえ、日持ちしないのが特徴です。とくに白菜は、鍋のために買ったはいいけど、結局余らせてしまいがちな野菜。こうした大型野菜も食べきれなかったらすぐに冷凍するのがオススメです。
200gに対して小さじ1/3(1%)の塩を振ってもみこんで30分置きます
白菜やキャベツも大根同様、水分が多いので、冷凍する前にちょっとしたコツがあります。大根の場合はレンチン加熱しましたが、白菜やキャベツは一口大にカットして塩もみしてから冷凍するのがポイントです。
水をしっかり搾ってフリーザーバッグへ
塩もみして30分ほどすると、水が出てきます。この水を手でぎゅっと搾ってから冷凍するわけです。すると生のときのシャキシャキ感は失われますが、スープや煮物の煮込み料理、炒める場合はあんかけ料理などに活用すればまったく問題ありません。冷凍後の変化があっても、それに合った調理方法をチョイスすれば、何でも美味しく食べられるのです。
冷凍術のコツまとめ
フリーザーバッグに冷凍日・内容を明記してタテに収納すると取り出しやすい
最後に、食材冷凍術で大事なことをまとめておきます。
(1)新鮮な状態で冷凍
冷凍は食材の新鮮さをキープするのが主目的。購入後、遅くても2~3日中に冷凍する
(2)食材は薄く平らに冷凍
食品が凍るまでの時間が短いほど氷の粒が小さくなるので、解凍したときの水分の流出も少なくなります。すばやく冷凍するために、フリーザーバッグの中の食品を薄く平らに均等にすることが大事
(3)空気抜きして冷凍
食品は空気に触れると酸化が進むので、必ずジッパー付きのフリーザーバッグの空気をストローで吸って空気抜きをしておくこと
(4)水分コントロールして冷凍
水分の多い食材は、生の状態のときにあらかじめ水分コントロールをして冷凍することが大事。加熱や塩もみなどを活用する
(5)解凍後の使い方を考えて冷凍
解凍後にどんなふうに使うかを考えて、使いやすい量や形にして小分けに冷凍。使わない分まで解凍して、再冷凍すると品質も味も低下する
(6)食品名&冷凍日を明記
冷凍しても賞味期限はあります。どんな食品でも1ヶ月程度で食べきることが大事。フリーザーバッグに日付や食材名を明記しておきましょう。
(7)冷凍庫の中でもわかりやすく整理
冷凍庫は冷気を逃さず室内の温度を上げないようにすることが重要。冷凍室の中に食品はタテにして並べて収納すると見やすく取り出しやすく、スペースも有効活用できる
本多さんの冷凍術は、野菜だけではなく、肉や魚もOK。近著の『シニア世代の食材冷凍術』(講談社)にたくさん載っているので、ぜひ参考にしてみてください
今回、筆者は本多さんから聞いた冷凍術を活用し、1~2週間に1回程度、野菜をまとめ買いして段取り冷凍をするようになりました。具だくさんの味噌汁、種類豊富な野菜炒め、大根の煮物、副菜などなど、野菜の多い料理が短時間で作れるようになり、毎日の食事がすこぶる快適です。ぜひ、みなさんも賢い冷凍術、試してみてください。
(撮影・文◎土原亜子)