食楽web

 今年のはじめ頃、「最近、コンビニで売っている冷凍ピザがかなりレベル高いよ」と知人のイタリア料理のシェフから聞きました。「そうなんですね」などと相槌を打ちつつも、「とはいえあくまで冷凍だし、そこそこでしょ」と勝手にタカをくくっていたんです。

 ところが、意識して大手コンビニの冷凍ピザを見てみると、びっくりするくらい本格的なオーラを漂わせています。

『da Isa(ダ イーサ)』(中目黒)・山本尚徳シェフは、ナポリで行われる世界ピッツァ選手権で2年連続優勝

 例えばセブンイレブンの冷凍ピザ「金のマルゲリータ」や、ファミリーマートの「マルゲリータピザ」。2つともまばゆいゴールドのパッケージでプレミアム感があり、載せられた写真も窯で焼いたような本格的なビジュアル。そしてどちらも本場ナポリで認められているピザイオーロ(ピザ専門職人)が監修している商品とのこと。

ファミリーマートの「マルゲリータピザ」。今井憲シェフは伝統的なナポリのピッツァコンテストである2019年第5回トロフェオ・プルチネッラで優勝

 これは期待できそう! というわけで、さっそくコンビニの冷凍ピザの実力を確かめるべく、セブンイレブン、ローソン、ファミリーマートを回り、11月初旬に各コンビニで売られていたオリジナルの「マルゲリータ」を買って食べ比べてみることにしました。

ハイクオリティすぎるマルゲリータに悶絶!

 マルゲリータといえば、ピザ生地の上にトマトソース、モッツァレラチーズ、バジルといった具材だけがのる、ピザのド定番。シンプルがゆえに、生地の食感や香りはもちろん、トマトソースやチーズ、バジルやオリーブオイルの質も含め、総合的なバランスの良さが大事になってきます。

 ちなみにファミマにはマルゲリータが2種類あり、今回は合計4枚で食べ比べることにしました。それぞれのスペックは次の表の通りです。

 セブンとファミマのプレミアムバージョンは500円前後しますが、他の2枚は298円とリーズナブル。しかも案外カロリーも抑えめで、ヘルシー。でも肝心なのは値段ではなく味です。ということで、いざ食べ比べスタートです。

左上から時計回りに、ファミマの「トマト感じるマルゲリータピッツァ」、セブンの「金のマルゲリータ」、ローソン「ピッツァマルゲリータ」、ファミマ「マルゲリータピッツァ」、

 では、まずはセブンイレブンの「金のマルゲリータ」(537円)から。値段としては、今回買った中では最高値です。本場イタリアのナポリで行われる世界ピザ選手権で2年連続優勝を誇る『da Isa(ダ イーサ)』(中目黒)・山本尚徳シェフ監修とあって、これは期待が高まります。

 まず生地。4つの中で1番薄めですが、焼き上がるとフチにこんがりと焼き目が付いており、香りがよく、ムチムチとした弾力のある食感。

加熱前のセブンイレブン「金のマルゲリータ」。焼く前から本格的な雰囲気

 かじってみるとトマト本来の酸味と甘みが感じられるソースがまずとてつもなく美味。そこに細かくカットしたモッツァレラチーズがたっぷりかかっていて、そのコクの具合もちょうどよく、フレッシュなバジルの葉も香り高い!

「金のマルゲリータ」はオーブントースター(1000W)で約3分半~4分半で焼き上がります

 最も感動したのは生地です。真ん中と端っこの厚さの繊細な厚みの違いにより、食べてみると、最初は薄い生地の上のジューシーなトマトソースやチーズが口いっぱいに広がり、そのあと、香ばしくてパリッとした端っこの生地を噛みしめることになるのです。この美味しさが余韻として残り、手が止まらなくなりました。これがたった537円で食べられるなんて、本当に驚き。うーん、さすがセブンといった印象ですね。

 続いて、ファミリーマートの「手伸ばし・薪窯焼き製法のマルゲリータピッツァ」(498円)。こちらもピザ職人監修とあって、期待大。

加熱する前のファミマの「手伸ばし・薪窯焼き製法のマルゲリータピッツァ」

 生地はセブンに比べ、一回り小さいですが、その分ふっくら厚めで、生地のフチもかなり分厚いです。そしてトマトソースが見えないくらい大きくカットされたモッツァレラチーズがたっぷりとのっています。

解凍後にオーブントースター(1000W)で約3分半加熱すべし

 焼いて食べてみると、生地が想像を超えるモッチリ感。そしてオリーブオイル、トマトソース、バジルペースト、そしてモッツァレラチーズの各素材もリッチな味わい。生地のフチがここまで太いのは、やっぱり生地自体の美味しさに自身があるのかな、と想像しました。もう一つ、セブンとの大きな違いは、バジルの葉ではなくペーストだという点。フレッシュ感はセブンが上です。

 続いて、同じくファミリーマートのお母さん食堂シリーズの「トマト感じるマルゲリータピッツァ」(298円)もいただいてみましょう。

ファミマ「トマト感じるマルゲリータピッツァ」はオーブントースター(1000W)で、約9~10分

 先ほどの2つの生地とは、まったく感じ違っていて、全体的に分厚いタイプ。そして、これまでの2つとは違ってトマトソースがたっぷりで、セミドライトマトもたくさん散らしてあります。チーズはモッツァレラではなくナチュラルチーズ。バジルペーストがたっぷりのっています。

お母さん食堂シリーズだけあって、昭和のピザパンを彷彿させる味わい

 食べてみると、生地は全体的にフカフカ。たっぷりのトマトソースがとてもジューシーで、バジルソースとオリーブオイル、ナチュラルチーズのバランスもいい。直径は小さいわりに、どっしりとしたタイプのピザです。

 ただ、さっきまでの2つが、ピッツェリアで食べるような本格的マルゲリータだったのに対し、これはどちらかというと、ピザトーストっぽい味わいです。ただ、筆者としては別に本場ナポリの“ピッツァ”に近いかどうかではなく、あくまで食べて美味しいかどうかが大事なので、これはこれで全然アリです。

 最後は、ローソンの「ピッツァマルゲリータ」(298円)です。

ローソンの「ピッツァマルゲリータ」。もっともパッケージがシンプルでケレン味が抑えられている

 こちらも全体的に厚めの生地に、トマトソース、ドライトマト、そしてナチュラルチーズで構成された、昭和のピザパン的なピザです。

オーブントースター(1000W)で約6~7分

 焼いてみると、端の生地がこんがりと焼き目がついて、カリッ&モチッとしています。そして、トマトソースとドライトマトがたっぷりのっていてジューシー。

 こちらもファミマ「トマト感じるマルゲリータピザ」と似た方向性ではありますが、生地に関して言うと、パリッとした部分とフカフカ&モチモチした部分があり、この生地のほうが食感も香りもあります。

左下から時計回りにセブン「金のマルゲリータ」、ファミマ「マルゲリータピッツァ」、ローソン「ピッツァマルゲリータ」、ファミマ「トマト感じるマルゲリータピッツァ」

 というわけで、4つを食べて比べてみて、コンビニの冷凍ピザも、今はお店で食べるような本格的なレベルに進化していることがよくわかりました。

 そしてコンビニごとにそれぞれの美味しさがありましたが、この中で1つ選ぶとするなら、筆者は断然セブンイレブンの「金のマルゲリータ」に軍配を上げたいと思います。手伸ばし生地の繊細な食感と、トマトソースの酸味や旨味、生のバジルの葉の香り。そしてぺろりと1枚食べられる軽さ。ワインともバッチリ合いそう。総合して理想に近いタイプで美味しすぎました。

 逆に朝ごはんやランチで食べるなら、しっかりした食べ応えのある、ファミマのお母さん食堂や、ローソンの昭和のピザパン的な感じもいいな、と思った次第。ぜひ皆さんも試してみてください。

(撮影・文◎土原亜子)