POOL New / Reuters
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昨年、米国でおこなわれた警官の暴力に対する抗議デモの群衆に発砲し、3人を死傷させたとして殺人罪に問われているカイル・リッテンハウス被告(18)の裁判で、弁護人が証拠映像の正当性について「iPadのピンチズーム機能がAIや「対数」を使用して映像を操作している」と意味不明な主張をする一幕がありました。

弁護人のマーク・リチャーズ氏は、iPadで撮影された証拠映像の証拠としての提出を求められた際「iPadには人工知能が搭載されており、そこに映る物を立体的に表示したり、対数的に見せたりできます。人工知能や"対数"によって、自分たちが信じている(そのように見たい)ものを作り出せるのです。つまり、これは実際にあるものを拡大強調した映像ではなく、アップルのiPadのプログラムが、必ずしもそこになくとも、そこにあると思うものを映像化するのです」と述べました。

リチャーズ氏はおそらく「アルゴリズム」のつもりで「対数(logarithm)」と述べたようですが、それはともかくこの議論に法廷は10〜20分の時間を消費しました。

Independent紙が伝えたところでは、弁護人は検事の反論に対して余裕げに「あなたのiPadのOSは何か」とたずね、検事が「知らない」と答えるとまるで相手がIT音痴だと見なしたかのように「ありがとうございます!」と述べました。結局、公正を期して動画はiPadではなくWindows PCを使って法廷内のスクリーンに拡大して再生されたとのこと。

言うまでもなく、弁護士の主張は荒唐無稽なものでした。モバイルデバイスが備えるピンチズーム機能には、たしかにアルゴリズムが使われてはいるだろうものの、単純に映像を拡大するだけで、そこにないものをあるように見せたりする、コンテンツ改変機能はありません。弁護士は陪審員に映像を詳しく見せたくないがために、陪審員や検事らのリテラシーがおそらく未熟であると考えてこのようなことを述べたと考えられます。

これは、このようなハッタリ的手段が使われ、検事や陪審にもそれを荒唐無稽だと言い切るだけの知識がないときに起こる問題を浮き彫りにする事例と言えるでしょう。

弁護人の主張がリッテンハウス被告の裁判にどう影響するかはわかりませんが、法廷のライブ配信を観ていた人たちが、このくだらないやりとりに呆れていただろうことは想像に難くありません。

Source:New York Times

via:iMore

coverage:Independent