暖かくなり、山菜採りを楽しむ人が増える季節を迎えた。だが誤って有毒な植物を食べることによる食中毒や、熊による被害が毎年のように多発している。最悪、死に至るケースがあるため注意が必要だ。(岩下響、大高摩彩)

“過信は禁物” 迷ったら採らない


 ニラとスイセン、モロヘイヤとチョウセンアサガオ、フキのとうとフクジュソウ――。山菜採りや家庭菜園を楽しむ人が、誤って有毒な植物を食べることで嘔吐(おうと)やしびれなどの食中毒となることが初夏にかけて多発している。

 厚生労働省によるとこの10年間で山菜や野菜と有毒植物を間違えて食べたことによる食中毒は、全国で190件あった。イヌサフランをギョウジャニンニクと誤って食べたことなどで計14人が亡くなっている。厚労省には今年も既に、グロリオサの球根をタマネギと誤食して食中毒が発生した事例が1件報告されている。

 年代別に見ると患者数、死者数とも70歳以上が最多だ。同省食品監視安全課は「食用と判別が確実にできないものは、採らない、食べない、あげないの徹底を」と呼び掛ける。

 誤って農産物直売所で販売すれば、消費者にも被害が及ぶ危険性がある。農水省によると昨年も宮崎県で、有毒植物のクワズイモをナガイモと誤認して直売所に出荷して、食中毒が発生したことがあった。このため同省とJA全中は、直売所での有毒植物による食中毒防止の徹底を呼び掛けている。

 農水省は山菜や野菜と有毒植物の見分け方をホームページで分かりやすく紹介している。同省農産安全管理課は「毎年、山菜採りをしている人も絶対に過信しないこと。環境によって色や形が異なることもある。見分けが付かないものは、採らないようにしてほしい」と、注意喚起する。

出没増 “鈴装着”を


 2020年度に出没した熊の件数は、年度別の比較を始めた09年度以降、過去最多の2万870件に上った。けがなどの被害を受けた人数も最多となる158人だった。住宅地や農地での出没が近年、増えている。このような実態が28日、都内で開かれた熊被害対策などに関する関係省庁連絡会議で示された。

 被害に遭った時の状況別では、20年度までの5年間で山菜・キノコ採り中が126件で最も多かった。環境省は「冬眠明けの熊が活動を始めている。登山者が使う『熊鈴』などで対策してほしい」と呼び掛ける。

 被害は、熊の生息域(225件)だけでなく、人の生活圏(208件)でも多発している。農作業中の被害も72件発生している。生ごみや農作物を放置しないよう管理が必要と環境省は強調する。

 同省によると、20年度の月別の出没状況は、8〜11月にかけて最多だった。例年は減少傾向となる7、8月の出没が増えた。「長雨が続き、昆虫などの餌が少なかったことが影響した」と、今後は梅雨明け以降も注意が必要としている。

 地域別に見ると東北で16年度以降、北陸で19年度以降、出没件数が増えている。中国地方も増加傾向だ。同省は「熊の生息範囲の広がりや、人口減少が要因」とみている。

 同省は今年、熊の出没時に自治体や関係者らが取るべき対応をまとめた手引を改定した。07年の策定から14年ぶりの改定となる。同省は「熊を目撃したら、落ち着いて自治体に連絡を」とする。

 同会議は昨年10月、熊類の保護・管理と人の生活圏への出没を防ぐため、関係省庁の情報共有を目的に設置した。警察庁、農水省、林野庁、環境省が参加する。