「ゴジラvsコング」はどっちが勝つのか科学者が検証
2021年3月31日にアメリカで封切りされ、5月14日に日本に上陸する映画「ゴジラvsコング」は、ゴジラとキングコングの決戦を描くSFアクション映画で、怪獣映画ファンは「#TeamGodzilla(ゴジラチーム)」と「#TeamKong(コングチーム)」に分かれて思い思いの怪獣を応援しています。南カリフォルニア大学で古脊椎動物学と機能形態学を研究している博士課程の学生で、怪獣映画ファンでもあるというキルステン・フォルモーソ氏が、日米二大怪獣の対決を科学的に検証しました。
https://theconversation.com/godzilla-vs-kong-a-functional-morphologist-uses-science-to-pick-a-winner-157101
映画「ゴジラvsコング」は、公開初日の興行収入が960万ドル(約10億5900万円)に達し、2020年に新型コロナウイルス感染症のパンデミックが発生して以来、興行収入が最高だった「ワンダーウーマン 1984」の記録を大きく塗り替えて首位となりました。さらに、公開後5日間の興行収入も4850万ドル(約53億5000万円)と非常に好調な滑り出しを切ったことから、パンデミックにより大打撃を受けた映画産業を活気づけてくれるヒット作品として、期待を集めています。
「ゴジラVSコング」の予告編は以下から見ることができます。
ゴジラVSキングコングの日米二大怪獣による大決戦が繰り広げられる「ゴジラVSコング」予告編が公開 - GIGAZINE
そんな怪獣映画について、フォルモーソ氏は「どんな空想上の生き物でも、何かしらの科学的な根拠があるものなので、怪獣を理解するには自然界に目を向けるのが1番です。私の研究分野である、骨格や体組織の特徴から動物がどう動くかを調べる機能形態学と、絶滅した動物に目を向ける古脊椎動物学の見地からすると、巨大な爬虫類と霊長類が持つ生物学的な強みが見えてきます」とコメント。ゴジラとコングがそれぞれ持つ生物学的な特徴から、両者の対決がどのようになるかを解説しました。
なおフォルモーソ氏によると、ゴジラもコングも生物が到達できる理論的なサイズをはるかに上回っているため、心臓から頭まで血液を送り出すことができず、体温調節にも難があり、脳から体の末端まで神経信号が到達するのに時間がかかりすぎるという問題があるとのこと。そこでフォルモーソ氏は、放射線や独自の進化により、両者がこの問題を解決したものと仮定して論じていくことにしています。
◆コング
コングは筋肉質で長い腕、大きな犬歯と短い鼻、頭部にある矢状稜など、ゴリラに似た特徴を多く持っていますが、人間と同様の直立二足歩行ができるという点でゴリラとは大きく異なっています。
これについて、フォルモーソ氏は「コングの二足歩行は、現存する唯一の直立歩行する霊長類である人間との密接な進化的関連性を示唆しているかもしれないし、収れん進化の結果である可能性もあります。いずれにせよ、コングは人間と同様に歩いたり走ったりできる筋肉質の足と、道具を使えるだけの把持力や自由度を備えた腕を持っているはずです」と指摘しました。
コングと同様に直立二足歩行をする人類は、腰を使って胴体を回転させ、肩・胸・腕を連動させることで非常に強い力で物を投げることができるため、「投てき力では地上最強の生物」とされています。このことから、コングも物を投げることにかけては非常に優れていると考えられます。
こうした点から、フォルモーソ氏はコングを「機動力に優れていて陸上では地の利があり、特に道具を使ったり物を投げたりする能力は戦いで遺憾なく発揮されるでしょう」と結論付けました。
by elias silveira
◆ゴジラ
最近の映画に登場するゴジラについて、フォルモーソ氏は「ゴジラは巨大な半水生の爬虫類と言えそうです。また、陸上でもそれなりに動けますが、水中の方がずっと適しているように見えます。興味深いことに、ゴジラの首には約3億7000万年前に海から陸に上がった脊椎動物が失ったエラが描かれています。ゴジラには陸生動物の特徴もあることを考えると、ゴジラは陸生の爬虫類を祖先とし、ウミガメやウミヘビのように水生のライフスタイルに進化したのではないかと考えられます。あるいは、独自の進化によりエラを獲得したのかもしれません」と分析しました。
そんなゴジラとコングの最大の違いは尻尾にあるとのこと。ティラノサウルスも強じんな尻尾を持っていますが、ティラノサウルスは尻尾を水平に保ち、歩いたり走ったりする際にバランスを取るのに使っていました。一方、ゴジラは垂直に立っていて尻尾は地面についています。ゴジラのこの姿勢は爬虫類には見られない特徴で、どちらかというとカンガルーに似ています。また、ゴジラは竜脚類のように筋肉質で柱状の足を持っており、これはゴジラの巨体を支えるだけでなく尻尾の強化にも役立っています。
こうした特徴から、フォルモーソ氏は「ゴジラはその強力な尻尾に加えて、背中に3列に並んだ鋭いトゲや分厚いうろこ状の皮膚、肉食動物の歯が生えた比較的小さな頭部、物を握ることができる自由な腕を、筋肉質の体に備えている手ごわい存在です」とコメントしました。
by Carpenter, Kenneth
◆実際に戦ったら?
実際にゴジラとコングが衝突した場合、まず体格面ではコングの方が若干小さいものの、ほぼ同じ体の大きさなので勝敗には影響しないとのこと。また両者の武器を見てみると、コングには強力なパンチや投てきを繰り出せる腕がある一方、ゴジラは攻防の両方に使うことが可能な尻尾を持っており、2014年の映画「GODZILLA ゴジラ」には実際にゴジラが尻尾の一撃で怪獣を葬る描写があります。
両者に共通する武器として、かみつき攻撃がありますが、これについてはコングの方が頭が大きい分やや有利です。一方、ゴジラは分厚いうろこ状の皮膚と棘を持っているため、防御面ではゴジラに軍配が上がるとのこと。
こうした点を総合した結果について、フォルモーソ氏は「正直に言うと私は『#TeamGodzilla』の方ですが、両者の差はごくわずかです。地上での幅広い戦闘能力にかけてはコングが優勢ですが、ゴジラの圧倒的な質量、防御力、尻尾にはかなわないかもしれません。そして忘れてはならないのは、ゴジラは口から放射火炎を吐くことができるということです。どちらが勝つにせよ、この戦いは時代を超えたものになるでしょうから、科学者としても怪獣映画ファンとしても、対決を見るのが楽しみです」とコメントしました。
映画「ゴジラvsコング」は2021年5月14日(金)に日本で公開されます。
映画『ゴジラvsコング』予告編【5月14日(金)公開】 - YouTube
日本配給:東宝
©2021 WARNER BROTHERS ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC.