約1兆円の賠償金を巡るGoogleとOracleの10年にわたる訴訟が決着、「APIのコピー」は結局違法なのか?
by Brandon
2010年から10年以上にわたって争われてきたGoogleとOracleによる裁判で、ついに最高裁による判決が出ました。この裁判では「Android OSを構築する際にGoogleがJavaのコードをコピーしたことが著作権違反にあたるのではないか」という点が争われ、過去にはOracleが勝訴し、Googleが88億ドル(約9700億円)の損害賠償金に直面しました。しかし、最高裁ではこの判決が覆り、Google勝訴となりました。
(PDFファイル)https://www.supremecourt.gov/opinions/20pdf/18-956_d18f.pdf
Oracle Statement Regarding Oracle v. Google
https://www.oracle.com/news/announcement/oracle-statement-regarding-oracle-v-google-040521.html
Supreme Court rules for Google in Oracle copyright fight over Android
https://www.cnbc.com/2021/04/05/supreme-court-rules-in-googles-favor-in-copyright-dispute-with-oracle-over-android-software.html
GoogleとOracleの訴訟は2010年に始まったもの。この裁判での争点は、GoogleがAndroid OSで使用するAPI(アプリケーションプログラムインターフェイス)にありました。GoogleはAndroidを構築する際、その基礎に37個・約1万2000行のJava関連のAPIを利用しましたが、これらAPIはサン・マイクロシステムズによって開発されたものでした。Oracleが訴訟を起こす前までは「APIは著作権で保護されていない」という認識が主流だったため、Googleはサン・マイクロシステムズに許諾を得ずにAPIを使用。その後、Oracleがサン・マイクロシステムズを買収し、Googleに対して著作権違反で訴訟を起こしました。
この裁判で注目されたのは、「APIに著作権が認められるか」「Java関連のAPI使用がフェアユースにあたるか」といった点が議論されたことです。また損害賠償額が88億ドル(約9700億円)と非常に高額であることも注目された点でした。
2012年には連邦地裁が「APIは著作権の保護対象にならない」という判決を出してGoogleが勝訴しましたが、Oracleがすぐに上訴。連邦巡回区控訴裁判所で争われた二審では、2014年に一審を破棄して「APIは著作権の保護対象である」という判決が出されました。その後、2018年3月27日に出された連邦控訴審判決では「本件のGoogleによるJava APIの利用はフェアユースにあたらない」との判断が示され、Googleが敗訴しました。
2019年、ついに最高裁判所がGoogleの上告を受理。2020年10月には「口頭弁論では『Googleが不利』との見方が優勢だ」と海外メディアによって報じられていました。
GoogleとOracleが「APIの著作権」を巡って最高裁判所の口頭弁論で対決、Googleが不利との見方 - GIGAZINE
しかし、2021年4月5日、最高裁判所がGoogleの主張を支持したことが判明しました。裁判所は、プログラマーが他のソフトウェアのコードにアクセスできるようにするAPIは、「その他のコンピュータープログラムとは大きく異なる」と結論付けています。
スティーブン・ブレイヤー裁判官は「インターフェースの一部として、コピーされたコードは本質的に『著作権がつけられないアイデア』や『新しくクリエイティブな表現』と結び付いています」「ほかのコンピュータープログラムとは違い、今回コピーされたコードの価値はエコシステムの中で投資された開発者に由来するものであり、プログラムの実際の運用によるものではありません」と述べました。
また、問題となっているコピーされたコードは、「他のプログラマーが異なるコンピューター環境で開発を行えるようにするためのもの」であったことにも言及。JavaのプログラマーがAndroidアプリを構築できるようにAPIを利用したことは「根本的に変革的な使用だった」とされました。
ブレイヤー裁判官は「我々は、これまでに下されたフェアユースの決断を修正したり、覆すつもりはありません」とし、現行のフェアユース規定のもとでGoogleによるJavaコードのコピーは許可されていると主張。APIに著作権が認められるのかどうかについても争点の1つでしたが、問題となった行為がフェアユースの原則のもとで認められたため、この点に明確な結論は出されませんでした。
なお、Oracleは判決を受けて以下のように声明を発表しています。
「Googleがプラットフォームとして巨大になり、市場での影響力も大きくなることで、市場参入への障壁が高くなり、競争が失われました。彼らはJavaを盗み、10年間、独占企業だけができる訴訟を続けました。この行動こそが、世界そしてアメリカの規制当局がGoogleのビジネス慣行を調査している理由です」