ドコモのahamo、KDDIのpovo、ソフトバンクのon LINEと、3月のサービスインに向けて、各社20GBプランの受付が始まっている。povoだけは基本料金が500円安いが、5分間の無料通話を加えれば、2,980円/月(税別)と横並びと考えていい。

しかも各社のプランはまだスタートしていない。従来プランとまったく同じ品質でのインターネット体験が提供されるということになっているが、こればかりはフタをあけてみないとわからない。

キャリア版20GBプランの口火を切ったahamo。3月26日のスタートが正式に予告された


○生活の通信をまるっと使うのに20GBは不足

人によって違うとは思うのだが、20GB/月という容量はなかなか使い切れるものではない。ただし、すべての通信をモバイルネットワークに頼るとなると、20GBはアッという間に消費するということもまた事実ではある。

通信の量を把握するのによく使われるたとえがYouTubeやNetflix等の動画コンテンツ視聴だ。フルHD画質の場合、これらは1時間あたりほぼ2GBを消費すると考えていい。

総務省による「令和2年情報通信白書」にある「主なメディアの利用時間と行為者率」を見ると、2019年は毎日3時間程度テレビを視聴し、2時間前後をネット利用に費やしているようだ。

誰もが1日あたり24時間しかないので、そのうちどれだけをどのメディア消費に割り振るかにもよるのだが、テレビ視聴が多い年代はネット利用が少なくなり、ネット利用が多い年代はテレビ視聴が少なくなる。乱暴に計算してしまうとテレビとネットで1日あたり約5時間をコンテンツ消費に費やしているということになる。

年代別にみる主なメディアの平均利用時間(総務省:「令和2年情報通信白書」より。クリックで拡大)


○Google検索よりもYouTube、そしてInstagram

最近の若い世代は、Googleでの検索よりも、まずは、YouTube、そしてInstagramで検索して知りたい情報を収集するらしい。古い世代からみると、ちょっとびっくりする使い方でもある。文字と写真の参照だけなら1分間で得られる情報を3分の動画で消費する。それが現代の情報収集だ。その分、広告もまたたくさん見られることになる。仮に、1日5時間をYouTubeだけで過ごすとしたら、1時間あたり約2GBが必要として10GBの容量が必要になる。つまり、各社20GBプランは2日で上限に達する。

そんな極端なことはしないだろうというのが大方の予測だとは思うのだが、このデータは2019年のもので、コロナ禍の影響を受けた2020年〜2021年のデータが出揃ったときに、どのような結果になるのかが興味深い。

おそらく自宅に固定インターネットがない世帯でステイホームが強いられる傾向にあると、家庭内でテレビ放送を独占できない弱者は、ほぼすべてのメディア消費をモバイルネットワークに頼ることになるだろうから、1日10GBの消費は日常茶飯事となるのは想像に難くない。

コスト的に固定インターネット導入が難しい、あるいはワリにあわない単身世帯でも同様だ。これに加えて在宅勤務やテレワーク、リモート授業(塾)などが日常に定着すると、コンテンツ消費量はさらに増えることになるだろう。

○5G通信は「社会インフラ」として役立てるか

このトレンドを考えたときに、とにかく全国津々浦々、5Gネットワークを整備することを急ぐ必要がある。電波が有限の資源である限り、各端末が電波を使う用事を素早く済ませてもらわないことには無線ネットワークがパンクしてしまう。

といっても1時間の動画を2倍速で見るという話ではない。1時間分の2GBを伝送するのに要する時間が半分になれば、2倍の数の端末を収容することができる。高速伝送をアピールするときに映画一本を数秒でダウンロードというたとえ話をされることが多いが、それはコトの本質ではない。ストリーミング再生でリアルにデータ伝送に要する時間を短くすることができると考えるべきだ。

つまり、2時間の映画を見始めてから見終わるまでの2時間の間に、実際にデータ伝送に要した時間が数秒だということだ。それによって、より多くの端末が、その恩恵を預かれるということになる。

各社の20GBプランは申し込みも好調のようだが、この夢のような大容量も、早晩、これではとてもギガが足りないということに気がつくユーザーが続出するだろう。それこそが本当の各社の狙いかもしれない。より高額な使い放題に誘導できるチャンスでもあるからだ。

こうしてプランが使い方を加速する。問題は、インフラとして各社が提供するモバイルネットワークがそうした使い方にきちんと対応していけるかどうかだ。

さらには固定インターネットは一般家庭にはいらないというトレンドを作ってしまうことにもなりかねない。それでいいのかという疑問も残る。だからこそ、各社は固定インターネットとの組み合わせて割安にするセット料金も提供しているのだが、消費者目線でいえば、使い放題のモバイルネットワークがあるのになぜ別料金の固定インターネットが必要なのかと思うのは当然だ。

社会インフラとしてのモバイルネットワーク。その事業者が考えなければならないことは、まだまだたくさんある。消費者はわがままだ。事業者のことなど考えるはずがない。ただ、国が本当に将来の日本のインフラとしてのモバイルインターネットのことを考えているかというと、そこがいちばん問題を抱えていると思う。

著者 : 山田祥平 やまだしょうへい パソコン黎明期からフリーランスライターとしてスマートライフ関連の記事を各紙誌に寄稿。ハードウェア、ソフトウェア、インターネット、クラウドサービスからモバイル、オーディオ、ガジェットにいたるまで、スマートな暮らしを提案しつつ、新しい当たり前を追求し続けている。インプレス刊の「できるインターネット」、「できるOutlook」などの著者。■個人ブログ:山田祥平の No Smart, No Life この著者の記事一覧はこちら