月のインスピレーション溢れる光景2選 月暈の下の雪原の足跡と「月の男」
雪原と雪に覆われた木々の上に輝く月のハロー(月暈)(Credit: Göran Strand)
雪原と雪に覆われた木々の上に輝く月のハロー(月暈)。この幻想的な光景は2021年2月1日付けのAstronomy Picture of the Day(通称APOD)で紹介された画像です。先月スウェーデンで撮影されました。
何百万もの小さな氷の結晶を含む上層の薄い雲(巻層雲など)が空の大部分を覆っているときに起こる、かなり一般的な大気光学現象です。氷の結晶の一つ一つがミニチュアレンズのような役割を果たしていて、結晶のほとんどが似たような細長い六角形をしています。
結晶の向きがばらばらになっているとき、結晶の一方の側面に入った光と結晶の別の側面から出た光は、屈折によって月を中心とした半径(視半径)に相当する22度の円(光輪)として見えることが知られています(条件により異なる場合もあります)。日中に見られる「太陽の光輪」(日暈)も同じメカニズムの現象です。雲の中でどのようにして氷の結晶が形成されるのかは、現在も研究対象となっています。
月暈や日暈は純粋な物理現象です。しかし、神秘的な現象に見えるため、幸運の証しや凶事の前兆など、さまざまな言い伝えも残っています。
ところで、月のハローよりも雪原に残された足跡の方が気になる人もいるかもしれません。この足跡の主はウサギです。2匹の足跡が手前で合流しているのも不思議な感じがして、想像力を掻きたてます。
月とウサギと言えば、多くの日本人は月面の模様を連想することでしょう。ちょうど5年前(2016年2月1日、たまたまこの日も月曜日でした)のAPODでは、月面の模様に「男の顔」をイメージしています。
「月の男」とそれを観察する人(Credit: Dani Caxete)
ある対象に、実際はそこに存在しないにもかかわらず、よく知っているパターンを思い浮かべる心理現象は「パレイドリア(Pareidolia)」と呼ばれています。月面の模様は同じなのに、そこに何をイメージするかは文化や民族によって異なると言われています。もちろん同じ文化に所属していても、ひとりひとり思い浮かべるものはちがいます。
さらに、この画像では、月面上に望遠鏡を向ける人の小さなシルエットが写し込まれています。「月の男」が地上を窺い、岩山の上の人物は望遠鏡で「月の男」の表情を読み取ろうとしているかのようです。
月はわたしたちにさまざまなインスピレーションを与えてくれる存在です。この2つの画像を眺めていると、自分なりの新たな物語を紡いでみたくなってきませんか?
Image Credit: Göran Strand、Dani Caxete
Source: APOD (1) (2)
文/吉田哲郎