ミカンを食べ過ぎると…?

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 冬定番の果物といえば「ミカン」。「こたつでミカン」は昔ながらの冬の風物詩ですが、一方で、大量にミカンを食べて、手が黄色っぽくなった経験がある人もいるようです。ミカンを食べ過ぎると体にどのような変化が起きるのでしょうか。また、食べ過ぎにならない目安は1日何個くらいでしょうか。ミカンを食べるときの注意点について、内科医の市原由美江さんに聞きました。

柑皮症は健康影響なし

Q.そもそも、ミカンを食べるとどのような健康的メリットがあるのでしょうか。

市原さん「ミカンにはビタミンC、カリウム、βカロテン、食物繊維、ポリフェノールなどさまざまな成分が含まれています。ビタミンCは免疫力を上げることが分かっており、風邪予防に効果的です。カリウムは血圧を下げたり、むくみを軽減したりします。また、果肉の表面にある白い筋は水溶性食物繊維なので、腸内環境が整えられ、免疫力が上がる可能性があります」

Q.ミカンを大量に食べると、手が黄色くなることがあります。体の中で何が起きているのでしょうか。

市原さん「ミカンをたくさん食べると、ミカンに含まれる『カロテノイド』という色素が皮膚に沈着して皮膚が黄色くなります。これを『柑皮(かんぴ)症』といいますが、実際に健康を害することはありません。時間の経過とともに治るので、通院せずに様子を見ていて大丈夫です」

Q.「柑皮症」のほかに、ミカンを食べ過ぎるとどのようなことが体に起きるのでしょうか。

市原さん「普通の大きさのミカン1個に含まれる糖質は約10グラム、約45キロカロリーと果物の中では比較的、糖質やカロリーが少なめです。しかし、ミカンはついつい何個も続けて食べてしまうことがあるので、たとえ1個当たりのカロリーが低くても、たくさん食べると太ります。また、毎年冬になると、糖尿病の人がミカンを食べ過ぎて血糖値を悪化させるケースも多いです。

『ミカンを食べ過ぎて下痢になった』という話もあるようですが、それは、食べ過ぎによって胃腸が冷えたことが原因だと思われます。ビタミンCを過剰摂取すると下痢などの消化器系の病気を引き起こすことがありますが、ミカンだけで大量のビタミンCは摂取できません」

Q.水分補給のためにミカンを食べる人もいるようですが、問題はないのでしょうか。

市原さん「確かにミカンの約90%は水分のため、水分補給になると思うかもしれませんが、先述のように、ミカンを食べ過ぎると肥満や下痢の原因となります。ミカンを水代わりにして、水分を摂取しようとしないでください」

Q.では、1日に食べてもよいミカンの個数の目安について教えてください。

市原さん「多くても、普通の大きさのミカンで1日3個までにしてください。それも、できれば、一度に食べるのではなく間隔を空けて食べるようにしましょう。私が担当している糖尿病の患者さんにも同様のことを伝えています」

Q.ちなみに、肝機能が低下することで発症する「黄疸(おうだん)」も皮膚が黄色に変色するため、柑皮症と見分けがつきにくいともいわれています。黄疸と柑皮症を見分ける方法はあるのでしょうか。

市原さん「黄疸は『ビリルビン』という物質によって皮膚が黄色くなる病気ですが、皮膚だけではなく、白目も黄色くなります。皮膚のみ黄色い場合は柑皮症の可能性が高いですが、白目が黄色いかどうかを素人が判断するのは難しいかもしれません。『ミカンをしばらく食べていないのに皮膚が黄色い、白目も黄色い気がする』ときは消化器内科で肝臓の検査を受けることをおすすめします」