巨人ナインとファンの距離を縮めたYouTube “元木ヘッド不在事件”にあった凄さとは
撮影スタッフが感謝! 「勉強になる」締めの一言で円陣動画は大ヒット!
ファンの大切さをより感じる1年になったのではないだろうか。巨人は公式YouTubeで多くのコンテンツを発信し続け、ジャイアンツファン以外からも好評を得た。撮影、編集などを行うブランドコミュニケーション部の柳舘俊さんは昨年7月に番組・映像制作会社「日テレ アックスオン」から出向した。球団内でテレビのことは「一番詳しいと思っていた」が上には上がいた。元木大介ヘッドコーチの凄さを体感しながら、首脳陣、選手、スタッフのおかげで意義のある動画をファンに届けることができたと感謝の思いを明かした。
多くの動画がファンの心の隙間を埋めてくれた。笑いあり、驚きあり、そして感動あり……。4人の制作スタッフがカメラとパソコンを駆使し、巨人の今を届けた。
柳舘さんは「今村球団社長がいつも私たちを見かけると『元気かい?』体の後、必ず『映像は財産だ』『10年、20年後にも残る映像を』と声をかけてくださいます」と日本テレビでも長年、ヒット番組を作ってきた球団トップの言葉を胸に秘め、カメラを止めることはせず、動き回った。撮り貯めた映像が入ったハードディスクは「4テラバイトが3つ目になりました」。
YouTubeチャンネルには100万回、200万回再生する動画が収録されている。戦いの場であるグラウンドやロッカールーム、一時代前ならば、カメラが入ることは御法度のようなところの映像も、ファンに届けられている。さぞかし、苦労も多そうだが、柳舘さんは首を横に振る。
「球団の皆さんが環境を整えてくれています。僕らが撮りたいと思ったものを撮らせていただけます。許していただけるチーム、スタッフの心遣いがとても大きいです」
柳舘さんも大学まで硬式野球を続けたプレーヤーとあり、選手の気持ちは分かっているつもり。撮影では練習や準備の邪魔にならないように配慮する。「映像を出したときにその選手の価値が上がるかどうか」をポイントにして、密着を続けている。
6月13日公開の動画、最後の「冷たいのうー」はさすがの一言
元テレビマンとしてのプライドも持って、カメラを回していた。「自分が一番、(撮影や作品の構成など)詳しいんだ!と思ってやっていました。でも、テレビを一番知っているのは自分ではなかったんです」
柳舘さんが“リスペクト”するのはテレビ出演をこれまで多く経験している元木ヘッドコーチの空気感だった。
「元木さんは動画の完成形までイメージされている方。ある試合の円陣でヘッド不在のまま、終わってしまう動画があるんですが、最後、一人になって現れると『冷たいのうー』と言って、去っていくんです。これって動画の最後の『オチ』になる一言を意識的に言ってくれてるんです。勉強になりました」
6月13日に公開となった「事件!円陣に元木ヘッドがいない!」編は150万回以上再生され、ファンの爆笑を呼ぶ作品となった。元木ヘッドの他にも、選手たちがカメラの向こうのファンを意識して、立ち振る舞ってくれた。
「巨人ファンの方々のコメントは嬉しいですし、他球団のファンの方も来てくださり、コメントをいただくので、嬉しいなと思います」。特別だったこの一年を振り返る。
無観客で始まった開幕。ジャイアンツ球場での練習には最初は報道陣も入れなかった。唯一、ファンの人とつながる有効な手段がSNSだった。柳舘さんが撮影をする仕事に就いてからずっと守っていることがある。それは「撮り続ける」「カメラを回し続ける」ということだ。巨人軍に出向しても変わらなかったスタンスで、チームとファンの絆を強固なものとした。(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)