昨季の久保を見ていて気になったのは、FKとPKを蹴らせてもらえなかったことだと語るセルジオ越後氏

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昨季の久保を見ていて気になったのは、FKとPKを蹴らせてもらえなかったことだと語るセルジオ越後

新型コロナウイルスの影響を受けながらも欧州サッカーの移籍市場が動いている。日本人的に注目度が高いのはやっぱり久保建英だろう。連日のように新天地候補が報じられ、昨季のマジョルカと同じスペイン1部、ビジャレアルへの入団が発表された。

マジョルカでのプレーを振り返ると、序盤戦はベンチスタートの試合も多く、なかなかチームになじめなかった。

でも、時間がたつにつれドリブルでの仕掛けや決定的なパスなど持ち味を発揮できるようになり、リーグ再開後の6月からはほとんどの試合に先発出場。チームの主力に成長した。見ていて期待感もあったし、本人も自信を得たはず。

ただ、数字的には4得点、4アシストと物足りない。チームが守勢に回ることが多いなか、なんとかチャンスや見せ場はつくるものの、最終的にはファウルでつぶされたり、フィニッシュに至る強引さやシュートの精度が欠けていた印象だ。

また、エースとして同僚を完全に仕切れていたわけでもなく、2部降格を食い止めることもできなかった。そこはシビアに評価すべきだろう。やっぱり目に見える結果は重要。特に久保は"助っ人"の立場だからね。保有権を持つレアル・マドリードはもちろんのこと、ビッグクラブへの挑戦権を得るには至らなかった。

昨季の久保を見ていて気になったのは、FKとPKを蹴らせてもらえなかったこと。ボールのそばには行くけど、どこか遠慮がちで結局、ほかの選手が蹴る。もっとずうずうしくてもよかったと思う。そうすれば、数字(得点数)も増えたし、チームでの立ち位置もさらに変わっていたはず。

古い話になるけど、Jリーグ初期のV川崎(現・東京V)の武田(修宏)を思い出した。僕が「PKを蹴らないから得点王になれないんだよ」と言ったら、「だってウチにはカズ(三浦知良)さん、ラモス(瑠偉)さんがいるから......」と返してきて、まあ、その気持ちもわかるんだけど、やっぱりプロとしてはもったいないよね。最終的に蹴れなかったとしても、少なくともアピールはすべきだった。

そういう意味ではACミラン時代の本田はいいお手本になる。スーパースターのバロテッリやカカがいてもお構いなし。言い合いになっても自分に蹴らせろと主張していた。

本田の場合はそれでもなかなか蹴らせてもらえなかったわけだけど、久保にもあのくらいのふてぶてしさが必要だと思う。せっかくキックの技術があって、スペイン語も話せるのだから、そこは遠慮しないでほしい。

新天地については、昨季の経験、そして言葉を話せるメリットを生かさない手はないし、スペイン1部は妥当な選択だ。2部降格のマジョルカよりもレベルや注目度の高いチームでポジションをつかめるか、そしてどれだけ結果を残せるか。昨季5位で、今季はヨーロッパリーグにも出場するビジャレアルでのプレーはよいチャレンジになるだろう。

久保と同じく日本代表の2列目の常連である中島(ポルト)、南野(リヴァプール)、堂安(PSV)も、それぞれステップアップした先で壁にぶち当たっている。来季は彼らの奮起にも期待したいし、久保も新天地で、レアルが戻ってきてほしいというような活躍を見せてくれるといいね。

構成/渡辺達也