車両の魅力はライバルに引けを取らないのに……

 世の中には「内容を考えると、なんでこんなに売れているんだろう?」と感じるクルマがあるのと対照的に、「内容はいいのになんで売れていないんだろう」というクルマもある。そんな日本車をピックアップしてみたので紹介しよう。

1)ホンダ・ステップワゴン

 ステップワゴンはトヨタ・ヴォクシー三兄弟、日産セレナのライバルとなる、現在日本のファミリーカーの大きな柱となっている5ナンバーハイトミニバンの一角である。

 ステップワゴンはヴォクシー三兄弟に対し劣るところはなく、セレナと比べると安全装備が劣るところはあるにしても、エンジンフィールのいい1.5リッターターボ、パワフルな2リッターハイブリッドといったパワートレイン、バックドアが跳ね上げ式に加え観音開きにもなり便利な「わくわくゲート」を備える点など、総合的に見ればこのクラスのナンバー1である。しかし2019年の販売は5台中4番手と、ちょっと振るわない。

 理由として考えられるのはマイナーチェンジ前のモデルのスタイルがこのクラスのミニバンとしては押し出しに欠けていたことだが、マイナーチェンジ後のモデルはスパーダが「登場時のポリシーはどこに行った?」と感じるくらい押し出しのあるものとなっている。それだけにステップワゴンの販売が伸び悩んでいるのは非常に不思議なことだ。

2)三菱アウトランダーPHEV

 ミドルクラスSUVのアウトランダーの床下に大容量バッテリーを積んだ、4WDのプラグインハイブリッドカーだ。バッテリーが満充電なら50km近く電気自動車として使え、静粛性の高さに代表される快適性や4WD性能も高い。加えてボディサイズも適度、さらに災害などの際には燃料が入っている限り給電が可能と、大変便利かつ万能なクルマである。さらに価格は約394万円から(政府補助金20万円も使える)と、内容を考えれば激安だ。

 なのに2019年1年で約5300台しか売れておらず、実力を考えれば月に1000台、年に1万2000台くらいは売れて当然だ。アウトランダーPHEVが売れないのはやはり三菱のブランドイメージが大きく影響しているようで、これだけのクルマが埋もれたままというのは非常にもったいない。

新型ダイハツ・タントも巨人ホンダN-BOXには勝てず……

3)スズキ・スイフト

 スイフトは価格、スペースなどド真ん中のコンパクトカーである。現行モデルは900kg程度というコンパクトカーとしては非常に軽い車重を生かした、シャープな走りなどが魅力だ。

 しかし2019年は約3万3000台(うち1万1000台がスイフトスポーツ)と、正規ディーラー以外も含めれば販売力の強いスズキのコンパクトカーとしてはちょっと物足りない。

 スイフトの弱点としては標準系の乗り心地の悪さやハイブリッドが手薄なことは浮かぶが、そのあたりはそれほど大きいことではないように思う。むしろスイフトとそれほど変わらない価格ながら、スライドドアを持つハイトワゴンということで使い勝手のいいソリオがある点が影響しているのかもしれない。

4)ダイハツ・タント

 2019年7月に登場したばかりの現行タントが売れていないというのは、やや語弊がある。しかし登場以来月間販売台数で、最大のライバルとなるホンダN-BOXを上まわったのは11月の1回だけで、12月はN-BOXだけでなくスズキ・スペーシアにも負けてしまった。

 現行タントは、DNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)で開発されたプラットホームとパワートレインによる走りは乗り心地以外良好、ピラーレスのスライドドアによる使い勝手も申し分なし。競争の激しい軽自動車業界において、決定的に見劣りするのは自動ブレーキの性能くらいだ。

 それでもタントがN-BOXに勝てないというのは軽スーパーハイトワゴンのユーザーは、若干高くても全体的なクオリティの高さやブランドイメージでN-BOXを選んでいるということなのだろうか。