2019年は定番のドイツ勢が軒並み前年割れした

 ふた昔前までは、外車(がいしゃ)と呼ばれ、最近では、輸入車という表現になった海外ブランドのクルマたち。最近、輸入車市場で異変が起こっていることをご存じだろうか? ざっくりいえば、定番ブランドが伸び悩み、マイナーブランドの元気がいいのだ。

 具体的な数字を挙げよう。日本自動車輸入組合(JAIA)が発表した2019年1月〜12月の累積販売台数を見ていくと、海外ブランドの乗用車販売台数は、第1位メルセデスベンツ(6万6532台・前年比98.5%)、第2位BMW(4万6814台・91.8%)、第3位フォルクスワーゲン(4万6791台・90.1%)、第4位アウディ(2万4222台・91.5%)、第5位BMW MINI(2万3813台・91.6%)と、定番のドイツ勢は軒並み前年割れとなった。

 海外ブランド全体で見ても前年比97.8%となっており、日本車も含めて「2019年は10月の消費税10%実施の影響が出た」というのが、大方の見方だ。

 ところが、上記の販売台数順位をさらに先まで見ていくと、異変に気付く。第6位ボルボ(1万8583台・106.8%)、第7位ジープ(1万3354台・116.8%)、第8位プジョー(1万0626台・107.5%)と前年実績を上まわっている。そのほか、ランドローバー、シトロエン、アバルトなども前年越えとなった。超高級車も好調で、フェラーリ、ランボルギーニ、ベントレーも伸びて、なかでもマクラーレンは1.5倍の大躍進となった。

 こうした数字、その裏にはいったいどんな事情があるのだろうか?

個性豊かなライフスタイル系の車種に注目が集まってきている

 まず、ドイツ御三家の伸び悩みについてだ。

 伸び悩みは、ラインアップ中位から下(300〜600万円)のモデルで顕著だ。日本車と競合する価格帯であり、近年は日系各社がSUVやクロスオーバーなど多彩な新車を市場導入していることもあって、競争が激しくなってきた。一部の輸入車はリセールバリュー(下取り価格)が日本車よりも低いことも、販売減につながっている。

 その昔は、「いつかはクラウン」の次は「いつかはドイツ車」といった、庶民にとっての乗用車のステップアップの概念があったが、価格と品質では日本車もドイツ車に引けを取らないモデルが出てきており、ドイツ御三家としても、うかうかしていられない状況だ。

 そうした潜在的な社会基盤の中で、2010年代から庶民のなかで流行しているのが、本格的なアウトドアグッズを日常的に使うような、いわゆる「ライフスタイル系」の生活様式だ。一般的に「ライフスタイル系」と呼ばれるのは、アウトドアだけではなく、生き方に個性を持つことを指す。クルマにおけるライフスタイル系は「いっぴんモノ」とまではいかなくても、販売数量が少なくても個性豊かなモデル、ということになる。

 そうした文脈で見ると、最もわかりやすいのがジープ「ラングラー」やルノー「カングー」といったモデルになる。

 こうしたライフスタイル系のクルマが多いマイナー系ブランドの活況は、一時のブームなのか? それとも、いまが大きな時代変化の入口なのか? 今後の輸入車市場の動向をしっかりウォッチしていきたい。