理化学研究所の松本紘理事長

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 富士通と理化学研究所が共同で開発を進めているスーパーコンピューター(スパコン)「富岳」の原型機が、スパコンの消費電力性能を競うランキング「グリーン500」で世界1位を獲得した。富岳は2021年頃の本格稼働を目指して開発が進んでいる。創薬や防災、人工知能(AI)といった幅広い分野の新しい研究に活用が期待されている。

 グリーン500は、世界中のコンピューターシステムの計算処理速度上位500位にランクインしたスパコンについて、少ない消費電力で効率的に計算できた順に順位付けをするもの。理研のスパコンですでに運用を終えている「京」は、10年に獲得した5位が最高順位となっている。

 京の後継機で今回1位を獲得した富岳は、富士通が開発した中央演算処理装置(CPU)「A64FX」を768個搭載している。性能測定では、消費電力1ワット当たりの計算性能が16・876ギガフロップスだった。

 理研計算科学研究センターの松岡聡センター長は「世界最高の電力性能を誇るCPUの開発に成功した。グラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)マシンが上位を占める中、汎用CPUマシンがこれらを上回るのは画期的だ」としている。
出典:日刊工業新聞2019年11月19日
「富岳」の由来は? 出典:日刊工業新聞2019年5月24日
 理化学研究所は23日、スーパーコンピューター「京(けい)」の後継機の新名称を「富岳(ふがく)」と決定したと発表した。一般応募で寄せられた5000件以上の候補の中から選ばれた。松本紘理事長は「富岳とは富士山の異名で、性能の高さ、ユーザーや研究分野の裾野の広がりを表している。新たな研究基盤として、富岳の活躍を期待している」と話した。

 富岳は2021年頃の本格稼働を目指し、理研計算科学研究センターと富士通により共同開発と製造が進められている。京と比較して最大100倍の性能や高い電力効率を実現し、世界最高性能のスパコンと見込まれている。創薬や防災、人工知能(AI)といった幅広い分野において、新たな研究開発の加速が期待される。

 計算科学研究センターの松岡聡センター長は「性能の高さと汎用性が両立できた。富岳が実際に稼働し、国民の利益となる成果を生み出すことを望んでいる」と話した。