宇宙に金・プラチナなどの重金属を創り出した「中性子星」とは一体なんなのか?
巨大な質量を持つ恒星が超新星することで誕生する「中性子星」が一体どんなものなのか、そして人類の世界にどんな影響を与えたのかについて、科学系YouTubeチャンネルのKurzgesagtがアニメーションムービーで詳しく解説しています。
Neutron Stars - The Most Extreme Things that are not Black Holes - YouTube
恒星は数え切れないほどのプラズマが重力によって中心に引き寄せられることで形成されています。
太陽などの自ら光を発するガス体の天体である恒星は、その内側では圧力によって原子同士の反応が生じています。水素は重水素に変化し、さらに重水素はヘリウム4にまで変化するというのがその1つ。この一連の変化の過程でエネルギーが放出されるため、恒星の中心付近では「放出されるエネルギーによる外向きの圧力」と「重力による内向きの圧力」がせめぎ合います。
この外向きの圧力と内向きの圧力が釣り合っているうちは恒星は安定状態といえます。
しかし、太陽よりもはるかに大きい恒星の場合、安定しているように見えても内側で問題が生じているケースがあります。
水素がヘリウム4にまで変わる反応の終了後、放出されるエネルギーによる外向きの圧力は低下するため、重力による内向きの圧力が勝ちます。その内向きの力を受けて、恒星自体の大きさは小さくなります。
圧力が高まった結果、恒星のコアの燃焼温度・速度が上昇。すると、コアでは炭素がネオンになり、ネオンは酸素、酸素はシリコンに変化した後に、最終的には鉄になります。
恒星のコアがすべて鉄になると反応は終了し、放出されるエネルギーによる外向きの圧力がゼロになります。外向きの圧力がゼロになると、重力による内向きの力がコアに掛かり続けてしまいます。
通常であれば、電子や陽子のような粒子は分子間力によって、互いに一定の距離を維持しています。
しかし、重力が強まるとお互いに一定の距離を維持できないほどに加圧されてしまいます。
その圧力がどれほどのものかというと、地球と同じ大きさの恒星のコアが、都市と同じほどの大きさにまで圧縮されてしまうほど。
この圧力によって、惑星の外縁部は光速の25%の速度で内側に縮まり、最終的に爆発します。
爆発によってコアにある鉄が宇宙にまき散らされます。この現象が「超新星」と呼ばれるもの。超新星によって放たれる光は宇宙全体を照らし出すほどの強さがあります。
そして、超新星の後に残るものこそ、問題の中性子星です。
中性子星の質量は地球100万個分ですが……
その体積は1辺が25kmの立方体と同じくらいしかありません。
そのため、中性子星が持つ重力はブラックホールに次いで宇宙で2番目に強力。中性子星の近傍を横切った光はその重力によって進行方向が曲げられてしまいます。
さらに、中性子星の表面温度は100万℃に達します。なお、太陽の表面温度は6000℃。
中性子星は、大気・地殻・コアの3つの層で構成されています。
地殻は超新星によって残った鉄が互いに金属結合してとてつもない硬度を誇ります。さらにコア側に近づくにつれて重力による圧力が増すため、鉄原子同士が凝縮してくっつき合うようになっていると考えられています。
地殻の中ほどでは、鉄原子は線状に接着し、さらにその内側では層状に接着していると考えられています。線状に接着した鉄原子を「スパゲッティ」、層状に接着した鉄原子を「ラザニア」にたとえ、中性子星の地殻は「核のパスタ」と呼ばれています。
この核のパスタは宇宙一の硬度を持ち、基本的には「壊れない物質」だと考えられています。
その核のパスタのさらに内側にあるのが、中性子星のコア。
中性子星のコアの中では陽子も中性子も分解してしまい、中身であるクォークが浮かんでいる「クォークグルーオンプラズマ」という状態になっていると予想されています。
クォークグルーオンプラズマは、宇宙一危険な物質である「ストレンジ物質」を生み出しうるという説もあります。
Kurzgesagtによるストレンジ物質の詳しい解説については、以下の記事を参照してください。
触れるだけで惑星が崩壊するといわれる「宇宙で最も危険な物質」とは? - GIGAZINE
中性子星が崩壊する際には、中性子星はバレリーナのように高速で回転します。
この高速回転と中性子星が持つ磁場が合わさって、中性子星は巨大な電波を生み出すようになります。この状態になった中性子星は、「パルサー」と呼ばれています。
パルサーが持つ磁場は、地球の磁場の1000兆倍も強力。
2つの中性子星同士が融合してキロノヴァという大爆発を引き起こすことも知られています。
金・ウラン・プラチナ(白金)などの重金属は、キロノヴァによって生み出されたと考えられています。
最終的に、キロノヴァを引き起こした2つの中性子星はブラックホールとなります。
超新星やキロノヴァによって、宇宙空間にはさまざまな物質がまき散らされました。この物質はお互いの重力によって引かれ合い、恒星や惑星となります。そして惑星の中から中性子星が再び生まれます。
現代社会で使われている科学技術も、中性子星がはるか昔に生み出した元素に基づいたもの。
中性子星が今の世界を創ったというわけです。