マニアと味わう「ご当地カップ麺」の世界第十六回 イトメン「とり野菜みそラーメン」 文・写真:オサーン

カップ麺ブロガーのオサーンです。「ご当地カップ麺」をレビューする連載の第十六回目となる今回は、石川県で親しまれる調味味噌「とり野菜みそ」を使用したカップ麺、イトメンの「とり野菜みそラーメン」食べていきます。

イトメン「とり野菜みそラーメン」

そもそも「とり野菜みそ」って何?

「とり野菜みそラーメン」は、石川県を中心に9〜3月の秋冬の間のみ売られているご当地カップ麺です。製造はあの「チャンポンめん」でおなじみのイトメン。兵庫県たつの市に本社がありながら、特に石川県で親しまれている即席麺メーカーです。

そして今回のカップ麺の元になっている「とり野菜みそ」は、石川県で広く親しまれている調味味噌で、この味噌を使って作られる「とり野菜(鍋)」は地元で愛される鍋料理のひとつです。

鍋の素の元祖とも言われ、米味噌を主体に鍋に最適化された味噌となっています。

とり野菜みその歴史は江戸時代まで遡る

とり野菜みそを製造販売するのは石川県かほく市に本社のある「まつや」で、江戸時代に北前船船員の過酷な栄養不足を補うために、船内食として食べられたことに端を発しています。海軍の糧食から発展した「よこすか海軍カレー」と似た歴史を持っていると言えそう。

商品名からは鶏や野菜が入っているように見えますが、船員の不足しがちな野菜を摂るという意味で「とり野菜」と名付けられているそうです。同じイトメンの「チャンポンめん」がちゃんぽんスープではないのと同じで、ちょっと引っ掛け問題っぽいですね。

左:まつや「とり野菜みそ」右:永谷園「煮込みラーメン とり野菜みそ味」

とり野菜みそは他社とのコラボ商品が多く、今回のカップ麺の他にも、過去にはヤマザキのランチパックで使われたことがあり、他にも他社とコラボしてレトルトカレーやスープの素も売られていました。

コラボ商品の中でも、永谷園の「煮込みラーメン とり野菜みそ味」が全国的に手に入りやすい商品と言えます。

とり野菜みそを20%使用することで米味噌の芳醇な香りが感じられ、どの味もおいしい煮込みラーメンのシリーズの中にあっても、特においしい商品だと感じています。

とり野菜みそラーメンの出来上がり

米麹や大豆の風味を強く感じるスープ

スープは味噌味。入っている味噌のうち、とり野菜みそを50%使用しているそうです。先ほど紹介した永谷園の煮込みラーメンでは20%の使用に留まっていることを考えると(しかもそれでもすごくおいしい!)、今回のカップ麺は贅沢なとり野菜みその使い方と言えそう。

とり野菜みその特徴である米味噌による、米麹と大豆の風味が強く感じられます。米麹由来の醗酵味と赤味噌の熟成された大豆の味で、いかにもたっぷり味噌を使っています!というスープに仕上がっていました。

スープ表面に油はあまり浮いていない

米味噌の味が強い一方で、みそラーメンでよく使われるベースのとんこつやスープ表面のラードの油膜といった存在はなく、一般的なみそラーメンの味とはだいぶ異なります。とんこつや油脂が入っていないため、味噌味が濃い割にそれほどこってり感はなく、すっきりした後味も特徴的でした。

さすがとり野菜みそが50%も使われているだけあって、とり野菜みそを使って作る鍋の味に近いものがありました。ほんのりとつけられた甘みと相まって、鍋の〆に食べるラーメンの雰囲気が出ています。

強い味噌味に負けない太めの麺

縮れのしっかりついた太めの油揚げ麺が使用されています。やや幅広でコシが強く、濃い味噌味のスープと合わせても負けない存在感があります。

縮れのしっかりついた太めの油揚げ麺

太くて主張の強い麺ですが、縮れが強いためスープとよく絡み、スープの中で馴染んでいました。スープの米麹や大豆の風味が強く感じられたのは、縮れの強さも大きく影響しているものと思われます。

具は種類も量も充実

具は、白菜、キャベツ、豚肉、たまご、ニンジン、ねぎが入っていて、種類が豊富。鍋の雑多な具のイメージを再現しているものと思われます。量も他のカップ麺に比べて多く充実しています。

種類も量も豊富な具

カップ麺ではよく入っているキャベツに加え、白菜も入っており、葉物野菜を2つ入れているのが大きな特徴です。白菜の独特な風味が鍋の雰囲気を醸し出していました。また、キャベツやたまごの甘みが強い味噌味の中でよく映えています。

とり野菜みその入門編に最適な一杯

とり野菜みそを50%使用し、白菜など具がたくさん入っていて、とり野菜みそで作ったとり野菜鍋の雰囲気がよく出た一杯でした。鍋を作るのはハードルが高い生活環境であっても、カップ麺なら食べやすいですよね。

本家のとり野菜みそと同様、全国的にはなかなか手に入り難いカップ麺ではありますが、スーパーの北陸フェアや物産展などの常連商品。ネット通販でも手に入れることが可能なので、とり野菜みそを食べたことがない人にとっては、入門編としてもぴったりな商品です。

筆者:オサーンカップ麺ブロガー。十数年前に出会った「日清麺職人」のおいしさに感激したことがきっかけでブログを開設。「カップ麺をひたすら食いまくるブログ」で毎週発売される新商品を食べて毎日レビューしています。豚骨スープとノンフライ麺の組み合わせがお気に入りですが、実はスープにごはんを入れて食べるのが最も至福の時です。Twitter(@ossern)