敗者の経験があるからこそ。小林の「悔しさが人を強くする」というコメントは印象深い。写真:田中研治

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ルヴァンカップ決勝/川崎3(PK5−4)3札幌/埼玉スタジアム2002

 滅多にお目にかかれない、スリリングな試合だった。1−2からラストワンプレーで追いついた札幌の執念、そこから逆転されながらも延長後半に3−3とした川崎の粘り強さなど見どころ満載で、両チームの戦いぶりは評価に値するものだった。しかし──。

 表彰式、そして試合後のミックスゾーンでは勝者と敗者のコントラストがくっきりと浮かび上がった。象徴的だったのは、ミックスゾーンに現われたジェイの悲壮感漂う表情だ。「素晴らしいでしたが」という質問に対し、少し落胆した感じで唇を「ブルルルル」と振るわせた彼は「相当悔しいです。PK戦で負けるというのがすごくガッカリですね」とコメント。声のトーンからも大きなショックは伝わってきた。

 菅の先制弾をアシストした白井も、そのアシストにつながったドリブル突破にこそ手応えを掴んでいたが、「一番良い形は優勝で終わることだった。試合の締め方とかをもうちょっと上手くやればよかった」と悔しさを滲ませた。
 
 そんな札幌を見て、川崎の小林は「複雑な気分もあった」という。

「今日の展開では札幌が勝ってもおかしくなかった。そのぶん、悔しさは大きいでしょう。ただ、悔しさが人を強くするし、自分たちもそうやって強くなってきたところはあると思います。札幌には良い監督がいて、チームも良いサッカーをしているので、今回の戦いを経てお互いに成長できれば嬉しいです」

 過去ルヴァンカップの決勝で敗れた経験がある小林の言葉には妙な説得力がある。

 今大会では「グッドルーザー」に終わった札幌が、決勝での敗戦を糧に今後どう進化していくか。クラブとしての力量が問われるのは、むしろここからだろう。

取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)