囲い込みから「選んでもらう」NTTドコモへ! パスワードレス認証、歩きスマホ防止の音声ナビまで、ユーザーの安心と安全を守る戦略を見る

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●安心・安全のための新たな5つのサービス
NTTドコモの「2019-2020冬春 新サービス・新商品発表会」では、「Xperia 5」や「AQUOS zero2」といった新型スマートフォンが目を引きましたが、新しいサービスも複数発表され注目を集めました。

今回発表されたのは、
・dアカウント パスワードレス認証
・d払い ミニアプリ
・AIほけん
・ネットトラブルあんしんサポート
・音声ナビゲーション
これらのシステムおよびサービスです。


NTTドコモが考える「お客さまに寄り添ったサービス」とは何か


●パスワードを送信しない、安全な「dアカウント パスワードレス認証」
「dアカウント パスワードレス認証」は、2020年2月の導入を目指しているオンライン認証システムです。

これまでの「dアカウント」ログインは、IDとパスワードをサーバー側へ送信することで認証する方式でした(一部生体認証も採用されていた)。
しかし、この方式は通信時にパスワードなどが盗まれるリスクがあり、あまり良い方式ではありません。

そこで生体認証によるログイン認証を設定している場合、パスワードの入力を不要とし、ログインに必要な情報を送受信しない方式を採用します。

これは、オンライン認証技術の国際標準化団体「FIDO」が定めた「FIDO認証」による仕組みです。
指紋や虹彩といった生体認証データは、スマートフォンなどの端末内のみに格納され、外部に送信されることはありません。
端末で生体情報が確認されると、サーバー側に「個人を認証した」という署名のみを送ります。
そのため、パスワードの盗難リスクをなくせるので非常に安全な方式なのです。


たとえパスワードや端末を盗まれても端末が個人を認証しなければログインできない

また2020年4月からは、端末の画面ロック解除の仕組みを利用した認証システムも導入します。

こちらも原理的には生体認証による仕組みと同じです。
生体認証機能がない端末でも、パターン入力やPINコード入力による画面ロック解除を認証鍵として用いることで、同じように「パスワードを通信しない認証システム」を実現します。

いずれの方式もパスワードを覚えておく必要がなく、しかもより安全にログイン認証が行えるという点でもユーザーに優しい仕組みです。

生体認証によるパスワードレス認証は、
・2015年夏モデル以降のAndroid端末
・Touch IDもしくはFace IDに対応したiOSデバイス
これらが対象となる予定です(SIMロックフリーの端末は対象外)。

画面ロック解除によるパスワードレス認証は、
・2017年冬モデル 2機種
・2018年夏モデル以降のAndroid端末 8機種
これらが対象となる予定です。


●複数のd払いサービスをワンストップで利用「d払い ミニアプリ」
同社のスマートフォン決済サービス「d払い」のアプリ内で、d払い加盟店のサービスを利用できるのが「d払い ミニアプリ」です。

11月28日のサービス開始を予定しており、
・Japan Taxi(タクシー配車・事前決済サービス)
・ドコモ バイクシェア(自転車シェアリングサービスの事前決済など)
・吉野家(持ち帰りの予約・事前決済)
・ローソン フレッシュピック(生鮮食品の予約・事前決済)
これらのサービスが順次予定されています。


対象サービスはユーザーの動向を見ながら今後も追加していく予定

本アプリは1つのアプリで複数のサービスをワンストップに利用できるため、
・dポイントの利用や付与状況の確認が一覧できる
・どんなサービスがあるのかすぐ分かる
・複数のアプリを使い分ける面倒がない
・様々なサービスを同じUIで利用できるため迷わない
こういったメリットがあります。


1つのアプリで一括管理できるため、使いすぎなどの予防にも効果がありそうだ

また本アプリでは上記の対象サービス以外にも、以下の加盟店で便利に使えるクーポンなども発行されます。
・ローソン
・スギ薬局
・ジャパン
・上島珈琲店
・かっぱ寿司
・牛角
・しゃぶしゃぶ温野菜
・First Kitchen
・Wendy’s First Kitchen


●スマートフォンのみでプランの検討や契約ができる「AIほけん」
「AIほけん」では、保険に関する「どの保険に入ってよいか分からない」といった不安を解消し、ユーザーに合った保険を提案するものです。

また、加入後の定期的な補償内容の見直しが柔軟な点も特徴で、
・年齢による疾病対策の変化
・婚姻の有無
・家族構成の変化
・転職によるリスク対策の変化
こういった変化に細かく対応していけるものとなっています。


契約者情報を活用することで、ユーザー個人に最適なプランを提案してくれる


保険は長期契約するもの。人生の節々で契約内容の見直しは必要だ

具体的には、AIほけんアプリで簡単な質問項目に答えると、そのユーザーに必要な保険項目がグラフによって表示されます。
・月額料金をスライダーで動かし補償内容の増減をグラフィカルに知ることができる
・補償内容を任意に選択して自由にプランを組み立てられる
こういったことがアプリ内で可能です。


現在の収入や補償の必要性に合わせて自由に設定できる

AIほけんはNTTドコモの回線契約がなくても、dアカウントを作成することで誰でも利用可能です。
サービス開始は2019年12月を予定しています。


●SNSトラブルの強い味方!「ネットトラブルあんしんサポート」
近年、TwiterやLINEといったSNSサービスが人々の生活の中心となりつつある中、
・問題発言が多数の人に拡散される炎上騒ぎ
・対人トラブルや誹謗中傷
・オンライン詐欺
・個人情報漏洩
・キャッシュレス決済の不正利用
こうした問題も数多く起こるようになりました。
こうしたトラブル対応や補償してくれるサービスが「ネットトラブルあんしんサポート」です。

本サービスでは、
・最新のネットトラブル事例を紹介
・トラブルに遭遇した場合の専門スタッフへの相談
・キャッシュレス決済の不正利用などを補償
こういった対応を受けられます。


ネット上のトラブルは対応が難しく専門知識を必要とすることが多い

サポート料金は月額500円で、2019年12月からの開始を予定しています。
またキャッシュレス決済の不正利用への補償サービス「不正決済補償」には、AIほけんのサービスが活用されます。


●歩きスマホを解消へ「音声ナビゲーション機能」
2020年3月から提供が予定されている、my daizの「音声ナビゲーション機能」は、歩きスマホの解消を目的として、
・音声認識のみで目的地を設定
・交通標識や道路情報だけではなく、実際の建物や商業施設名で道案内
・正しい道を進んでいる最中にもきめ細かく音声でサポート
こういった工夫が施されています。

例えば、一般的なカーナビなどでは「300m先、交差点を右方向です」などの音声案内が行われますが、
本サービスでは「山王スーパーと山王書店が見える方向に進んでください」といった、ランドマークを活用した案内が行われます。

また、一般的なカーナビなどでは正しいルート上で道なりに進む場合、音声案内は行われませんが、
本サービスでは「今進んでいる方向で合っています」、「まだ、まっすぐ進みます」などの音声案内が随時行われ、ユーザーが「この道で合っているのだろうか」と不安になるのを未然に防ぐことで、マップ画面を何度も見返す「歩きスマホ」を未然に防ぐ工夫をしています。


スマートフォン上には地図による案内も表示されるが、それを見なくても歩けるような音声案内を目指した

本サービスは2020年3月からの開始を予定しており、利用料金は無料です。
対応機種は、my daizに対応するすべてのスマートフォンおよびタブレットです。
利用用途は徒歩と自動車による移動の両方を想定しており、my daiz上で目的地を伝えるだけで案内が開始されます。


my daiz対応ワイヤレスイヤホンを使えば、より便利に音声案内を活用できる


●ユーザーに「選んでもらう」サービスを目指すNTTドコモ
今回発表された新サービスに一貫しているのは、
ユーザーがスマホを使って、
・安心、安全にオンラインサービスを利用できる
・便利で快適な生活を送れる
こういったことを目的としている点です。

NTTドコモはかつてのフィーチャーフォン時代から、ユーザーの生活支援を常にサービスの基本としてきた経緯があります。
今回新たに始まる5つのサービスも、
全てが「安心・安全・便利」を目的としています。

ここ数年強調してきた「ドコモ経済圏」の強化とは若干趣の違う、戦略の原点回帰に近いものが感じ取れます。


全てがネットに繋がる時代だからこそ、安心と安全を追求する必要がある


こういった、戦略の見直しとも取れる動きの背景には、
・端末代金と通信料金の完全分離
・SIMロック解除の義務化
これらの流れも関係しているように思われます。

端末代金や通信料金プランは、これまでユーザーを繋ぎ止める役割を担ってきました。
しかし料金体系の見直しにより、上記の役割は希薄化しました。

この結果、大手の移動体通信事業者(MNO)各社は、ポイントサービスなど、自社の経済圏に利用者をとどめるための囲い込みに必死です。

しかし一方で、これまでのサービス内容には搾取的な要素も少なからず見られ、囲い込まれることに抵抗を感じるユーザーも生み出してきました。

こうして大きく流れが変わった今、
ユーザーを縛ることで「囲い込む」のではなく、安心感や信頼性、利便性などでユーザーに「選択してもらう」という戦略の転換があったように思われます。

NTTドコモの新たな戦略は、緩くも手堅い、反発を受けにくい方策に感じられます。
これらの戦略がユーザーの目にどう映るのか、各種サービスの開始が待たれます。
執筆 秋吉 健