「ステーキ」は厚切りに肉などを焼いた料理で、シンプルな調理法ゆえにステーキの味わいには「肉そのものの味」が大きく関わってきます。そんなステーキについてステーキ専門家が、味や見た目だけで「どちらのステーキ肉が高価なのか?」を当てるブラインドテストを行うムービーがYouTubeで公開されています。

Steak Expert Guesses Cheap vs Expensive Steak | Price Points | Epicurious - YouTube

ステーキの格付けチェックに挑戦してくれるのが、「ステーキ専門家」の肩書きで登場したニューヨークの高級レストランThe Beatrice Innの経営者兼総料理長を務めるアンジー・マーさん。



マーさんが挑戦するのは、調理前の肉の見た目やステーキの食感・味だけで「どちらのステーキ肉が高級なのか」を当てるというもの。



最初の問題はリブアイ。牛の背中側に位置するあばら肉の中で最高の部分のこと。



「リブアイは大好きです。だから、私がよく知っている部位です」とマーさんは自信ありげ。



「最高のリブアイは牛のあばら肉全体の中でも一部です。リブアイは牛肉の中で最高の部位の1つで、柔らかさと歯当たりを兼ね備え、血の風味が少しあります。本当に大好きな部位です」



まずは見た目のチェックから。



「Aは筋肉中の脂肪分であるサシがそれほど多くなく、霜降りも少なめですね。また、このリブアイは牛の背側のもののように見えます。背側の肉のほうが総じて脂肪が少ないという傾向があるので、同じ牛からとれたリブアイの中でも、これは脂肪が少ないでしょうね」



「リブアイを選ぶ際に最も注意すべきなのが、肉のフチ部分(画像で指差されている部分)です。本当に良いリブアイならば、このフチの霜降りがひときわ多く、30%から40%は脂肪になっています」



「Bを見ると、フチ部分の50%ほどは脂肪です。ですので、Bはかなり上等なリブアイだといえます」と、マーさんはBの肉の見た目を絶賛します。



マーさんは肉自体の色にも言及。「Aは明るめの赤ですが、Bは赤色のガーネットのような深い色合いで、Bは『プライム』の色合いをしています」



マーさんの解説によると、アメリカ合衆国農務省(USDA)が定める牛肉の8等級「プライム・チョイス・セレクト・スタンダード・コマーシャル・ユーティリティ・カッター・キャナー」の中で、プライムは最高の等級。この等級は、牛の種類・性別・成熟度・霜降りの入り具合などによって決定されるとのこと。



「レストランやスーパーマーケットなどで出てくるのはプライム・チョイス・セレクトの上から3等級まで。それ以下の等級の肉は、ファストフードチェーンやハンバーガーなどに使用され、最低等級に近い肉はドッグフードになります」



マーさんは、「Bは風味に優れた骨近くの結合組織も多く、朝食には最適でしょうね」とBの見た目をまたもや褒め、見た目の感想を締めくくりました。



次は実食へ。



「Aを切って断面を見ると、筋繊維が非常にザラザラしています。ジューシーには全く見えません」



「一方Bの断面は、ピンクな色合いで肉質もしっとりしてジューシーに見えます。さらに、端に脂肪も見えていますね。」



マーさんはまずAからパクリ。



「Aはパサパサしていて、なかなかかみ切ることができません。もし最高のリブアイならば、舌の上で溶けるような食感になるはずです」とのコメントでした。



次はBへ。マーさんはBのほうがおいしいという確信しているのか、食べる前にニッコリと笑みを見せました。



「Bは圧倒的にジューシーで、風味も豊か。柔らかさも抜群です」



マーさんが高価だと思ったステーキは、もちろんB。マーさんは高い方を選ぶだけでなく、「Bの等級はプライムで、Aの等級はチョイスですね」と等級にまで言及します。



結果を見ると、Aが1パウンドあたり13ドル(100gあたり約310円)、Bが1パウンドあたり54ドル(100gあたり約1300円)と、Bが3倍近く高級でした。



見事正解を言い当て、大喜びのマーさん。



次の問題はストリップ。日本ではサーロインと呼ばれる部位で、牛の腰あたりの肉です。



マーさんは、「2つのストリップが私の目の前に並んでいますが、Aは明らかに神戸ビーフですね」と即座に断言。



その理由は、見た目から明らかなほどの脂肪率の高さと霜降りのすばらしさ。



一方のBも、マーさんは「典型的なアメリカンビーフであるブラックアンガスですね」と断言しました。



神戸ビーフが出題されたマーさんは日本の牛肉についての解説をスタート。「すべての神戸牛は和牛ですが、すべての和牛が神戸牛ではありません。和牛の定義は、日本の4牛種を掛け合わせた牛ですが、神戸牛はワインでいうところの『シャンパン』です。シャンパンは『フランスのシャンパーニュ地方で生産されたスパークリングワイン』を指すのと同様に、神戸牛も『日本の神戸で生産された和牛』を意味します」



「神戸ビーフは最も希少で、最も高価な肉の1つです。『神戸ビーフ』と認定されて出荷されるのは毎年3000頭に限定されています」



次は見た目のチェックへ。



「Aは神戸ビーフの中でも最高等級であるA5等級に見えます。色合いは最高にライトなピンクで、最高の脂肪率です」



「私はブラックアンガスが大好きです。Bは出荷直前に穀物を食べて過ごした牛の肉で、見た目からマーブルがよくわかる美しい見た目をしています」



「ただし、Bは私はもうちょっとだけ薄めにカットすべきだと思います。薄めにカットすると、食べるときに肉が柔らかくなります」



いざ実食。



「Aは脂肪率が高いおかげで、焼く時間もそれほど必要ないでしょうね」



Aを食べたマーさんは、「まるでバターみたい」と一言。「Aは肉の甘みと脂肪が強めです。筋肉が少ないので、かみ切るまでにふた噛みしか要しませんでした」とのこと。



次はBへ。



「Aの神戸ビーフはひと噛みふた噛みでかみ切れてしまい『ステーキ』とはまた別の食べ物でしたが、Bはまさしく『ステーキ』という見た目をしています」



「Bのブラックアンガスはプライム等級でしょうね。すばらしい味わいです。AとBはどちらもおいしいのですが、全く別種の食べ物といった趣ですね」



マーさんはAの神戸ビーフが高いと選択しました。



値段を見ると、Aは1パウンドあたり130ドル(100gあたり約3100円)、Bは1パウンドあたり66ドル(100gあたり約1600円)と、どちらも超高級肉。



「神戸ビーフはものすごく贅沢なものですが、もし食べる機会があれば最高の経験になりますね」



最後の問題は、トマホーク。あばら骨がそのままついたリブロースです。



トマホークはリブアイ(水色の枠の部分)とショートリブ(緑色の枠)とデックル(黄色の枠)と呼ばれる部位が一緒になった肉を指すとのこと。3つの部位が一緒になっているため、そのサイズは超巨大。



「トマホークはあばら骨がついているため、グラム当たりの価格に骨の重量も含まれてしまいます。なので、ちょっとお金の無駄だと思います。ただ、最も味の多様性が楽しめる部位ではありますね」



マーさんはAとBの見た目の差を比較していきます。



マーさんによると、AもBもどちらも「乾燥熟成(ドライエイジング)」させたトマホークだとのこと。自分の経営するレストランで提供する肉を全てドライエイジングしているというマーさんは、「ちょっと語らせてください」と乾燥熟成に関する説明をスタート。



「乾燥熟成は、部分肉を温度・湿度を管理する乾燥熟成庫内に一定期間置くという工程です。乾燥熟成肉は一部のレストランや超高級牛肉店のみしか提供していません」



「乾燥熟成すると、自然の酵素が肉の結合組織を破壊して柔らかさが増加し、筋繊維が水分を流出させて重量が下がります」



「乾燥熟成させると、肉自体にかなりの変化が生じます。特に変化が大きいのは香りで、乾燥熟成後の香りには甘さや、深みのある豊かさが加わりますね。肉に顔を近づけなくても、香りが感じられるほど香りが強くなっています」



マーさんによると、Aは100日か120日は乾燥熟成させたトマホークとのこと。「熟成すればするほど独特の風味が加わるので、乾燥熟成肉を食べたことがない人は45日から60日ほど乾燥熟成させたものから始めてみるのをオススメします」



次は実食パートへ。



Aの断面はこんな感じ。すばらしく柔らかく、脂肪も豊富とのこと。



これがBの断面。ナイフで切断するときの手応えが、Aよりも固めだそうです。



マーさんは、切断面のピンク色が濃く、脂肪が硬いことからBは熟成日数が浅いと判断しました。



一方Aは霜降りが強く、長く熟成したものとのこと。



次は味のチェック。



Aを食べたマーさんは、「香り、柔らかさ、ジューシーさ、すべてにおいて素晴らしいトマホーク肉です。ブルーチーズのような発酵した味わいを感じますね」と絶賛。



一方のBも、「なかなかの味わい」とのことですが、マーさんはすぐに「Aのほうがすばらしかったです」とコメントしました。



マーさんが選んだのは、もちろんA。



結果は、Aは1パウンドあたり42ドル(100gあたり約1000円)、Bは1パウンドあたり35ドル(100gあたり約840円)とかなりの僅差でしたが、マーさんは見事に正解。



全ての問題に正解したマーさんは、「高級なものから低価格のものまで、ステーキはみんなのものです」と締めくくっていました。