木造住宅建築業は「増収減益」、人手不足やコスト上昇が足かせに
国内の新設住宅着工数は1996年度に約163万戸を記録したものの、2018年度は約95万戸にとどまった。
購入適齢期の人口減少などを背景として住宅市場の縮小が懸念されるなか、非住宅部門の比率を引き上げる総合建設業者もある。
他方、各種住宅取得支援策の展開や住宅ローン金利が低水準で推移する状況下、木造建築工事業者のなかには、過去の住宅建築実績なども背景として、地域密着型の展開で存在感を増しているケースも見受けられる。
今回、木造住宅建築工事を主業とする業者の業績動向を探るため、帝国データバンクの企業概要データベース「COSMOS2」(147万社)のうち、2018年度決算(2018年4月期〜2019年3月期)の売上高が判明している主要20社を分析対象※として抽出。主要20社の売上高と利益額について過去5年の推移を集計した。
(※TDB産業分類で「木造建築工事業」を主業とし、かつ居住用住宅が売上高の過半数を占める企業、単体決算)
一方、利益額合計は936億6400万円で、前年度に比較すると3.2%減と、2年連続で減少した。原材料価格や労務費の上昇が収益の足かせとなり、主要20社中、12社が減益となった。
他方、木造住宅の工法は在来工法(木造軸組構法)が中心。プレカット材をはじめとした建材の進化が品質や施工効率の向上につながるものの、熟練職人の技能が必要とされる場面も多い。
建設業の雇用状況を振り返ると、2008年のリーマン・ショック後、工事案件の減少にともない人員過剰となった時期もある。
しかしその後、業況が回復するなか、団塊世代の熟練職人のリタイア、近年の人手不足を背景とした他業種との人材獲得競争による入職者の減少などもあって、建設業全般の人手不足感(正社員の雇用過不足DI)は、2011年後半から恒常的に全業種の平均を上回って推移し、直近においても落ち着く気配はない(TDB景気動向調査)。
また、住宅取得等資金の非課税制度の特例、消費税率引き上げ後における住宅取得者の負担緩和を目的とした「すまい給付金」などの住宅取得支援策もあり、消費税率引き上げ後、受注の大幅な落ち込みはないとみられる。
他方、職人不足が顕著化するなか、外注支出を含めた建築費が上昇し収益性の下振れ要因ともなっている。これらの影響を含め動向に注目したい。
購入適齢期の人口減少などを背景として住宅市場の縮小が懸念されるなか、非住宅部門の比率を引き上げる総合建設業者もある。
他方、各種住宅取得支援策の展開や住宅ローン金利が低水準で推移する状況下、木造建築工事業者のなかには、過去の住宅建築実績なども背景として、地域密着型の展開で存在感を増しているケースも見受けられる。
(※TDB産業分類で「木造建築工事業」を主業とし、かつ居住用住宅が売上高の過半数を占める企業、単体決算)
業績は増収減益に
木造住宅建築を手がける主要20社について、2018年度の売上高合計は2兆3767億1600万円で、前年度に比較すると4.3%増加した。営業エリアの拡大や空調をはじめとした省エネ性能やデザイン性を推しだした提案が奏功した企業を中心に売り上げを伸ばしたほか、経営の効率化を目的にグループ会社を合併するケースもあり、主要20社中、13社が増収となった。一方、利益額合計は936億6400万円で、前年度に比較すると3.2%減と、2年連続で減少した。原材料価格や労務費の上昇が収益の足かせとなり、主要20社中、12社が減益となった。
人手不足、落ち着かず
鉄骨系プレハブなど工場生産化された「工業化住宅」を手がける大手ハウスメーカーは、資材調達から生産・販売における経営効率化を目的とした再編を加速。工業化の推進で、現場作業の工数削減につなげている。他方、木造住宅の工法は在来工法(木造軸組構法)が中心。プレカット材をはじめとした建材の進化が品質や施工効率の向上につながるものの、熟練職人の技能が必要とされる場面も多い。
建設業の雇用状況を振り返ると、2008年のリーマン・ショック後、工事案件の減少にともない人員過剰となった時期もある。
しかしその後、業況が回復するなか、団塊世代の熟練職人のリタイア、近年の人手不足を背景とした他業種との人材獲得競争による入職者の減少などもあって、建設業全般の人手不足感(正社員の雇用過不足DI)は、2011年後半から恒常的に全業種の平均を上回って推移し、直近においても落ち着く気配はない(TDB景気動向調査)。
支援策はあるが課題も多い
現状、低水準で推移している住宅ローン金利が業界の下支えになっている。また、住宅取得等資金の非課税制度の特例、消費税率引き上げ後における住宅取得者の負担緩和を目的とした「すまい給付金」などの住宅取得支援策もあり、消費税率引き上げ後、受注の大幅な落ち込みはないとみられる。
他方、職人不足が顕著化するなか、外注支出を含めた建築費が上昇し収益性の下振れ要因ともなっている。これらの影響を含め動向に注目したい。