「だいたいやねえ」など独特の関西弁で知られ、文筆やテレビで活躍した評論家の竹村健一さんが亡くなった。89歳だった。

生前、テレビCMにも出演していた竹村さん。1980年の明光商会「MSシュレッダー」のCMで手帳を片手に持ち、「私なんかこれだけでやってますよ、これだけ」と話すシーンはあまりに有名だ。

竹村さんの訃報を聞いた筆者は彼の出演したあるCMを思い出した。

これは85年ごろに放映されていた毛髪関連事業のアデランスのCMだ。米・ニューヨークを舞台にしたCMの最後に見えるのが、ビルに描かれた竹村さんの壁画だ。

この壁画はCMのために作られたという。そうであれば当然、撮影後に取り外されたはず――ところが、どういうわけか撮影後も残り続けている。

そう、竹村さんが亡くなった2019年7月8日以降も、ニューヨークの街を見守り続けているのだ。


日本時間7月13日撮影、提供写真

なぜ消されていないのか

この話を初めて聞いたのは筆者が高校生のとき。大のCMオタクで音楽仲間だった先輩から聞いたのだが、その時はあまり興味を示さなかった。

竹村さんの訃報を聞いて気になったので、改めてネット上を調べた。すると、予想外に2010年代に突入して以降も目撃情報が複数ある。なんとかして探せないものか。まずはGoogleストリートビューを見たが、まさかの木が邪魔になって見えない。

航空写真の3Dモードに切り替えても辛うじて人の顔らしきものが見える程度。写真として厳しい上に撮影日時もわからない。


赤で囲った部分が壁画 (C)Google

場所はニューヨークのモット・ストリートとプリンス・ストリートが交わる交差点のそば。「ノリータ」と呼ばれる地域だ。

場所もわかっているので、あとは行くしかないのか――人生初のパスポート取得に向けて覚悟を決めかかったとき、Jタウンネット編集部のN記者がニューヨークに住む友人に連絡。なんと現地で撮影してもらい写真を入手できた。


竹村健一さんの壁画(日本時間7月13日撮影)

CMと比べると木が邪魔になってしまっているが、しっかり壁画が確認できる。

N記者によると19年7月13日(日本時間)の朝に写真が届いたとのこと。このために撮影しに行っていただいたとのことで、2019年に現存しているのが確認できた。

壁画が残されている理由については、撤去費用が莫大で消すことができない説や、ビルのオーナーが気に入ってそのままにしているなど諸説あるようだ。

本人はいなくなってしまったが、まだしばらくニューヨークの地で竹村さんに会えるようだ。