さまざまなジャンルで構成される、eスポーツの世界をご紹介します(写真提供:SQOOL.NETゲーム研究室)

eスポーツ」と聞いて、どんなスポーツを思い浮かべるでしょうか? 2018年の「流行語大賞」にノミネートされ、認知度は年々右肩上がりになっていますが、詳しくは知らないという方が大半かもしれません。

eスポーツとは、

・対戦要素のあるゲームを用いて
・決められたゲームルール、制限時間などの設定のなかで勝敗を決すること

を総称しています。参加人数やスポンサーの数などの規模によって賞金や賞品が提供されることもあり、世界ではその賞金の総額が20億円を超えるゲーム大会もあります。

「ゲームをプレイすることがスポーツ?」「ゲームってコントローラーを握ってプレイするものでしょ?」など、単純に“ゲーム”という言葉を聞くとこのように思われる方がほとんどかも知れませんが、eスポーツはゲームを媒介にした新しいライブ・エンターテインメントであり、コミュニティを中心にしたエンターテインメントだと私は考えています。

そこでプレイされるゲームのジャンルは、読者の皆様がご存じのシューティングゲーム、格闘ゲーム、カードゲーム、パズルゲーム、戦略シミュレーションゲームなど多岐にわたり、それぞれがeスポーツとして成り立っています。

世界で愛される日本生まれの格闘ゲーム

1. 対戦格闘ゲーム

日本で最も熱く、そして、他国の追随を許さないジャンルと言っても過言ではありません。日本では1980年代後半から「ストリートファイター」シリーズ(カプコン)がアーケード(いわゆるゲームセンター)や家庭用ハードにおける「格闘ゲームのスタンダード」を作り上げ、多くのプレイヤーとファンを醸成し、表現技術の進化に伴って、ゲーム中のグラフィックス表現の幅や可能性が格段に広がりました。

現在、主にeスポーツとして主にプレイされているタイトルには

・ストリートファイターV アーケードエディション(カプコン)
・鉄拳7(バンダイナムコ)
・KING OF FIGHTERSシリーズ(SNK)

などラインナップが豊富であり、潜在的なプレイヤー層の厚みもあります。

対戦格闘ゲームの醍醐味は、1対1のデジタル上の真剣勝負であり、一瞬の相手のミスや、一瞬の隙を突いたプレイによって、大きな逆転劇が演出できる点にあります。人間が本来持っている闘争本能をゲーム上で昇華し、それをエンターテインメントとして完結させたものが、この格闘ゲームというジャンルなのです。

2. リアルタイムストラテジー(Real-Time Strategy)

こちらはゲーム内の時間をリアルに進行している時間に置き換えたものです。プレイヤーが神や指揮官などの第3者的視点から兵士などのキャラクターに指示を与えて敵を倒していく、戦略的な要素とアクション要素を兼ね備えたゲームで、プレイヤーの判断力や操作力もゲームの勝敗に影響します。

2018年、韓国の平昌(ピョンチャン)で開催されたオリンピック冬季競技大会の公認大会、「2018 Intel Extreme Masters PyeongChang」(2018年2月5日〜7日)でも、リアルタイムストラテジーゲーム「スタークラフト2」が正視種目として採用され、話題を呼びました。

そのほかには「クラッシュ・オブ・クラン」というゲームが有名です。自分の保有する村を発展させながら、他の村を襲撃して資源集めをし、世界中のプレイヤーとランキングを競うゲームです。さまざまな施設を建設・アップグレードして村を発展させていく箱庭ゲームのような要素から、他プレイヤーの村に攻め込み資源を略奪したり、防衛設備の配置を工夫して他プレイヤーの侵略から村を防衛するなどの戦略的要素をあわせ持ったゲーム構成となっています。

eスポーツで大人気ジャンル「MOBA」

3. マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ(Multiplayer Online Battle Arena)

略して「MOBA」(モバ)と呼ばれるジャンルです。現在、世界のeスポーツシーンのなかでとても人気の高いジャンルで、なかでも有名なゲームは「リーグ・オブ・レジェンド」(通称LoL/ロル)です。プレイヤーは3対3、あるいは5対5の2つのチームに分かれ、各プレイヤーが使用する「チャンピオン」と呼ばれるキャラクターを選択、ネクサスと呼ばれるお互いの本拠地を破壊することを目指します。

また、「Dota2」(ドータ・ツー)というゲームも人気の高いゲームで、2つのチーム(Raidiant・Dire)が5対5に分かれて戦うもので、どちらかのチームが敵のタワーを破壊しつつ、敵の本拠地を先に破壊したほうが勝利するというゲームです。なお、「Dota2」は世界大会の賞金総額が大きいことでもよく知られています。年間の大会を通して積み上げられた賞金の総額は日本円にして28億円あまりに上り、優勝チームの賞金も12億円とケタ違いのスケールで、アマチュアや、プロゲーマーやそのプロチームを惹きつけて離しません。

4. シューティングゲーム(FPS:First-Person Shooting)

一般的にはシューティングゲームと称しますが、eスポーツのなかで最も主流なものがファーストパーソン・シューティングと呼ばれるもので、一人称視点でゲームが展開することが特徴的です。

有名なゲームとして「オーバーウォッチ」があり、このゲームはプレイヤーが5対5のチームを構成し、それぞれが、兵士、科学者、冒険家、エージェント、殺し屋、忍者、ギャングのボスなどのキャラクターを任意で選択し、それぞれのキャラクターが持つ能力や武器などを駆使し荒廃した世界に平和を取り戻すために立ち上がるというゲームです。

また、そのほかの人気FPSシリーズには、「カウンターストライク」という対テロ特殊部隊とテロリストとの戦いをテーマにしたものや、「コール オブ デューティ」シリーズなどがあります。

なお、これらのシューティングゲームは、海外の軍隊や特殊部隊が実戦訓練を行うためのシミュレーションソフトとしても活用する事例もあり、「これらのゲームの優秀なスコアのプレイヤーが実際にアメリカ軍にスカウトされる」という海外記事も読んだことがあります。ドローンなどでのミサイル攻撃など遠隔操作の戦略兵器をゲームのコントローラーを使って操作して攻撃を行っている事例もあるといわれており、このジャンルは今後もよりリアルな世界観を醸成していくでしょう。

100人から優勝者1人になるまで戦う「PUBG」

5. バトルロイヤルゲーム

eスポーツのジャンルとしては後発ですが、急速に多くのプレイヤーを虜にしているのが、このバトルロイヤルゲームです。昔、プロレスでバトルロイヤルというルールでの試合を観たことがある人もいるかもしれませんが、何人かの選手が入り乱れて最後まで勝ち残った人が勝ちというものです。

有名なタイトルでは「PLAYER UNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」(通称PUBG:パブジー)という、最大100人のプレイヤーが、島内にある装備などを駆使して最後の1人になるまで戦い抜く、バトルロイヤル形式のサードパーソン・シューティングゲームがあります。

人気の秘密はとにかく勝つこと、という単純明快さ。フジテレビの人気テレビ番組「逃走中」のように多くの人数が参加して最後まで勝ち残る(生き残る)というシンプルな要素が共感を呼んでいると思います。

「フォートナイト(Fortnite)」も人気のゲームで、ゲーム内でキャラクターが見せる一風変わったダンスが人気です。その人気はワールドカップのフランスの選手がゴールを決めたあとに、「フォートナイト」のキャラクターダンスを披露したことで人気が加速しました。

6. スポーツゲーム

こちらは一般的なスポーツをゲーム化したもので、ルールなどは一般的なスポーツのものを踏襲しています。

有名なスポーツゲームには「FIFAサッカー」、日本で開発されたものでは「ウイニングイレブン」シリーズがあります。ゲームに登場するスタジアムはリアルコンピューターグラフィックスで構成されており、選手も実名で登場。彼らのアバターも本物と見まごうばかりのものです。サッカーの国際試合の解説シミュレーションに使用されることもあり、ジャンルとしてはスタンダードな人気を博しています。

7. カードゲーム

eスポーツの場合のカードゲームは、ポーカーとかの一般的なトランプカード系ゲームとは異なります。1枚ずつキャラクター化されたカードをプレイヤーが「デッキ」と呼ばれる1セットに構成して対戦を行う「トレーディングカード方式」が中心です。

海外を中心に有名かつプレイヤーが多いカードゲームとして「ハースストーン」があります。日本国内では「シャドウバース」が人気で、昨年の国際大会では優勝賞金が1億円というスケールを打ちだし注目を集めました。おそらく今年度もその金額の国際大会が開催されると言われています。

年齢層が幅広くカジュアルさが人気

8. パズルゲーム


「パズルゲームまでもがeスポーツ?」といぶかしがる方もおられると思いますが、日本では子どもから大人までおしなべてプレイできるジャンルとしての人気を集めているため、ゲームとしてeスポーツのカテゴリーに入っています。

代表的なゲームとしては、パズルゲームにロールプレイングゲーム的な要素を付加した「パズドラ」や、1991年に開発されて以来今なお多くのファンがいる「ぷよぷよ」など、ゲーム人口の厚みがありカジュアルなeスポーツとしても注目を集めています。

今回の記事ではeスポーツゲームのなかでもごく一部をご紹介しましたが、今後は影響力を増す中国の動向も注目されますし、ますます多様なeスポーツゲームが生まれてくるでしょう。