「離職する人が少ない大企業」ランキングTOP100
年間離職者が少ない大企業の4位には三井不動産がランクイン。本社は東京中央区日本橋室町にある (写真:gstock/PIXTA)
働きやすい職場を知るために重要な情報としてよく言われるのが「離職者の少なさ」だ。ただ、新卒の離職状況を見る、「新卒3年後離職率」は多くの会社で開示されるようになったが、全従業員の離職の状況を調べるのは簡単ではない。
そこで、『CSR企業総覧(雇用・人材活用編)』2019年版のデータを使い、2017度1年間の定年退職を除く従業員の離職者が少ない順にランキングした。これはほかではまず見ることのできない貴重なデータだ。今回は一定規模以上を対象にするため、2016年度の単独従業員が1000人以上の会社を対象にした。
あわせて、1年前の2016年度の単独従業員数を分母に離職率も算出している。ただ、従業員数とこの離職者が同じベースとは限らないので注意が必要だ。
例えば、従業員数は主要子会社3社の数字になっているが、離職者は特定の1社になっている場合や、離職者は総合職のみを対象にしているといったケースだ。開示義務のあるデータではないため、基準を統一するのは今のところ難しい。離職率はあくまでも参考値であり、どうしても気になる方は『CSR企業総覧(雇用・人材活用編)』で、ランキングに掲載していない項目も確認し、総合的にご判断いただきたい。
1位リケンの年間離職者8人、離職率0.6%
では、ランキングを見ていこう。1位はピストンリング首位でシェア5割弱を誇るリケンの8人。平均勤続年数は16.8年と長い。2016年度の従業員数1429人で計算すると年間の離職率は0.6%と、ほとんど社員が辞めていない職場だ。
『CSR企業総覧(雇用・人材活用編)』の掲載情報を見ると、魅力的な職場であることがうかがえる。勤務時間を超えた会議・打ち合わせを設定しない風土づくりを進め、残業削減を推進している。フレックスタイム制度や、短時間勤務制度、国内・海外留学制度、キャリアアップ支援制度といった各種制度も充実。2017年度の女性の育児休業取得者は10人で、全女性社員72人中13.9%が取得という、子育てママが普通にいる環境だ。
2位は10人で新電元工業(離職率0.9%)と、エフ・シー・シー(同0.8%)の2社。いずれも離職率は1%を切っている。
新電元工業は車載・産業用パワー半導体や2輪用電装品を展開している。年間総労働時間1777.0時間と『CSR企業白書』に掲載している全社の平均1995.1時間を200時間以上下回る。全社で展開している「ノー残業デー」の設定や、時間外労働時間の上限設定などによって残業時間を削減。フレックスタイム制度や短時間勤務制度、勤務間インターバル制度をはじめとした自由度の高い働き方が認められている。
さらに病気休職者が復職する際、医師の指導により一定期間、半日出勤などができる、「リハビリ出勤」制度を導入。従業員が安心して働ける制度も多い。
エフ・シー・シーはクラッチ専業メーカーで2輪では世界一という優良企業だ。有給休暇取得率は89.8%と高い。海外顧客への対応のための現地時間にあわせた勤務制度や、配偶者の海外赴任で帯同する場合でも休職を認める制度など、長く働き続けられる制度が整っている。
上位100社の平均離職率は1.7%、B to B企業が多い
4位は11人で三井不動産(同0.8%)と愛知時計電機(同0.9%)の2社。
三井不動産は三菱地所と並ぶ総合不動産の双璧。働き方改革の専門部署として「働き方企画推進室」中心に働き方の質の向上を進めている。
育児・介護にかかわる従業員を対象とした在宅勤務制度を導入するなど男女問わず家庭と仕事の両立支援を進める。人事部は毎年、正規・非正規を問わず全社員と面談。個別に状況をヒアリングし従業員の満足度向上を目指している。
愛知時計電機はガス・水道メーターの大手。育児や介護のための短時間勤務制度や半日単位の有給休暇制度などが充実している。
以下、6位浜松ホトニクス15人、7位は16人で昭和産業、国際石油開発帝石の2社、9位は昨年トップの北川鉄工所の17人と続く。
今回のランキングでご紹介した100位(103社)までの各数値の平均は、離職率1.7%、平均年齢41.8歳、勤続年数17.3年となっている。上位は業績が安定し、働きやすい各種制度を導入している会社が目立つ。また、B to B企業が多いことも特徴としてあげられる。
一般に離職率の低い会社は長期雇用などいわゆる日本的経営の色合いが濃い。新卒は若いうちは大きな差をつけずじっくり育て、できるだけ長く会社に残ってほしいと考えているようだ。とくに比較的業績が安定しているB to B企業はその傾向が強い。
一方でIT企業などを中心に人の入れ替わりが多い業種も存在する。新入社員の初任給から差をつける会社も出てきている。このように会社にはいくつかのタイプがある。どのような職場が自分に向いているかは人によって異なる。
就職活動に頑張っている大学4年生だけでなく、これから就職活動を迎える3年生もどのような会社があっているかをじっくり考えておくとよいだろう。