なぜ北極と南極のオーロラは形や色が違っているのか?
by Pe_Wu
地球の極地において観測されるオーロラは、緑や赤の光の帯が空に広がる幻想的な天体ショーであり、古来から多くの人々を魅了してきました。そんなオーロラは北極側と南極側で似通った発光パターンを持つものの、観測される光には違いがあるそうで、研究者たちが「なぜ北極と南極のオーロラは形や色が違うのか?」という謎について調査しています。
Why Do the Northern and Southern Lights Differ? - Scientific American
地球には地磁気と呼ばれる磁場が存在しており、北極がS極、南極がN極に相当しています。地磁気に発生する磁力線は南極側から北極側へと、地球の大気を突き抜けた弧を描いて存在しています。地球の磁場が作用している範囲を地球磁気圏といい、通常は地球中心から地球半径の10倍程度(高度約6万km)のところにあるとのこと。
この地球磁気圏に太陽から吹き出す太陽風のプラズマが当たり、磁気圏を容易に通過できないプラズマは磁力線に沿って移動します。プラズマは磁力線が大気と交わる極地に向かって加速しながら進み、磁力線に沿ったままやがて地球の大気にぶつかります。すると、プラズマが大気の原子や分子と衝突し、幻想的な光の帯を発生させる……というのがオーロラの原理と考えられています。
地球磁気圏と太陽風のプラズマの関係を表した画像がこれ。赤い線が地球の磁力線となっており、磁力線に沿ってプラズマが降下し、北極または南極の付近で大気と衝突します。地球の磁力線は外部からの力がなければ対照的な形になりますが、実際には太陽が持つ強力な磁場によって磁力線がゆがむため、太陽側(地球の昼側)が押しつぶされた楕円(だえん)状に、太陽と反対側(地球の夜側)が長く引き延ばされています。
オーロラは同一の磁力線に沿って降下したプラズマが南北で同時に大気に衝突するため、北極側と南極側で似たような色や形で発生することが知られています。このように同じ磁力線でつながっている南北の地点を共役点と呼びますが、共役点であっても何らかの理由によって、全く同じ形態のオーロラが観測できるとは限らないとのこと。
研究者たちは南北のオーロラが一致しない理由について、地球磁気圏における磁気リコネクションが原因ではないかと考えていました。地球磁気圏における磁気リコネクションとは、変動する太陽風が地球の夜側に当たる磁力線の尾部を揺らして、引き延ばされた磁力線を本来の結合点よりも地球に近い場所で再結合させることです。磁気リコネクションによって磁気圏尾部にたまったプラズマが一気に地球側へと放出されることで、南北で非対称な位置に、色や形も違うオーロラができるというモデルが従来のものでした。
ところが、ベルゲン大学の研究チームはこの磁気リコネクションによるオーロラの変動モデルが間違いであることを発見したとのこと。研究チームは2001年から2005年までに北半球と南半球で同時に観測されたオーロラについて、宇宙船から撮影された画像を分析しました。この観測結果を地球磁気圏の尾部で発生した活動に照らし合わせると、磁気リコネクションによってオーロラの状態が南北で変化するのではなく、むしろ磁気リコネクションの発生と共にオーロラの対称性が増すことが判明したそうです。
ベルゲン大学の研究者であるNikolai Østgaard氏は、「地球磁気圏における磁気リコネクションは人々が考えていたものと反対の効果をもたらします」と述べています。その代わり、研究チームは太陽の磁場が地球の磁場を南北で不均一に圧迫し、南北で磁力線のゆがみが発生することで、南北においてオーロラの色や形、発生する位置が変化することを発見しました。磁気リコネクションはこのゆがみ(非対称性)を減少させる効果を持っていたわけです。
by NASA's Marshall Space Flight Center
インペリアル・カレッジ・ロンドンの惑星科学者であるIngo Mueller-Wodarg氏はØstgaard氏らの発見について、従来のモデルと全く違う点で「驚くべきものだ」と述べました。