「小便小僧」は、「ブリュッセルといえばこれ」というブリュッセルを代表する観光スポットのひとつ。

世界にその名をとどろかせる知名度とは裏腹に、予想外の小ささなどから「世界三大がっかりスポット」ともいわれています。

その歴史は古く、遅くとも15世紀にはこのような像があったとされ、現在のものは1619年に彫刻ジェローム・デュケノワによって作られたもの。ただし、現在は盗難防止のため噴水にはレプリカが設置されています。

さまざまな衣装を身に着けることでも知られ、「世界一の衣装持ち」ともいわれるほど。

ルイ15世の兵士が酔っ払って小便小僧を盗み出したとき、王は謝罪の印として、小便小僧に豪華な金の刺繍が入った宮廷服を贈ります。

それから世界各国からユニークな衣装が贈られるようになり、今ではその数およそ1000点。2017年には、小便小僧の噴水の近くに「小便小僧の衣装博物館」もオープンしました。

こうして、話題には事欠かない小便小僧に対し、あまり注目されることなくひっそりとたたずんでいるのが「小便少女」。

以前人気を博していた人気バラエティ番組「トリビアの泉 〜素晴らしきムダ知識〜」の第1回の放送では、「小便少女もいる」というトリビアが披露され、98へぇという好記録をマークしました。

とはいえ、小便少女の存在すら知らないという人もまだまだ多く、その扱いや人気ぶりにはかなりの差があります。

小便少女があるのは、大広場グラン・プラスを挟んで小便小僧の反対側。

美しいショッピングアーケード「ギャルリー・サン・チュベール」の近く、ブシェール通りの脇に入ったフィデリテ袋小路にあり、周辺はバーなどが並ぶ雑多な雰囲気の場所。グラン・プラスから延びる比較的大きな通り沿いにある小便小僧とは、ロケーションもかなり異なります。

通りを歩いていても、小便小僧のように人だかりができている観光スポットらしき場所もなく、「本当にここにあるのだろうか」と思ってしまうほど。

不安になりつつも、行き止まりになっている細い路地の奥に入っていくと、ありました!

この小便少女は、彫刻家デニス・ドブリエによって1985年に制作されたもので、1987年にここにお目見えしました。「通行人を楽しませるため」という目的のほかに、ガンとエイズの撲滅キャンペーンの一環でもあり、小便少女グッズの収益は、エイズ患者のために使われているといいます。

現在の小便少女は、悲しいかな柵が設けられ、オリの中に入れられているかのよう。当初このような柵はありませんが、像に触る人が後を絶たず、大切な場所の周辺がはげあがってきたために柵を設けたのだとか。

小便小僧の噴水にも柵のようなものはありますが、像自体は高いところにあるため、像が柵で囲まれているわけではありません。しかし、オリの中に監禁されているかのような小便少女のビジュアルは、いくら作品保護のためとはいえ、少々悲しいものがあります。

それでも、柵のなかの小便少女は恍惚の笑み。幼い女の子がしゃがんで用を足す様子は、「リアルすぎて笑えない」と、市民からはあまりよく思われていないそうです。

同じ「小便をする像」でありながら、男女によってここまでの差が出るなんて・・・確かに、小便小僧はジョークっぽいマスコットのような雰囲気がありますが、小便少女は見れば見るほどリアル。

日本のガイドブックも、「パロディにしてはあまりにもまじめに作られ過ぎている」と評しています。小便小僧を前に「かわいい!」とはしゃいでいても、小便少女を前にすると複雑な表情になって黙ってしまう人も多いとか。

ともに「小便をする子ども」をモチーフにしていながら、その扱いや人気ぶりに明暗が分かれている小便小僧と小便少女。

あなたは、この像になにを思うか。ぜひ実物を見て確かめてみてください。

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