訪日旅行客の動向への影響が懸念されている

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アベノミクスの看板政策の一つである訪日外国人旅行者の受け入れに黄信号が灯りそうだ。日本政府観光局(JNTO)によると、2018年8月の訪日外国人旅行者数が前年同月比4.1%増の257万7800人となり、8月として過去最高を記録したものの、7月に続き伸び率が一ケタ台に鈍化した。

6月の大阪北部地震、7月の西日本豪雨、8月の台風などの災害が続き、訪日外国人旅行者のキャンセルが相次いだのが要因だ。9月は台風21号で関西国際空港が大打撃を受けたほか、北海道で地震が起き、訪日外国人旅行者がさらに減るのではないかと懸念されている。

訪日旅行者、6月までは好調に推移

8月の全体の伸びが鈍化したのは、韓国からの旅行者が同4.3%減と落ち込んだのが響いた。記録的な猛暑のほか、史上初めて台風が5日間連続して発生するなど、台風ラッシュとなったのが大きな要因だ。韓国は国別の訪日外国人旅行者数で中国に次ぐ2位で、ボリュームが大きい。1位の中国は4.9%増だったが、こちらも台風の影響でクルーズ船の欠航が相次ぎ、こちらも伸び率が鈍化した。

訪日外国人旅行者数は2018年に入って、2月に23.3%増を記録してから6月まで5か月連続で二ケタの伸び率が続くなど堅調に推移していた。ところが海外で日本の地震や水害の被害が報じられると、7月以降、訪日外国人旅行者の客足は遠のいた格好だ。

政府や観光業界が気にするのは、9月の台風21号と北海道の地震の影響だ。海外では台風21号で関空が閉鎖となり、北海道の地震で長期停電が起きたことなどが報道されている。英高級紙「ガーディアン」(電子版)の場合、普段は日本に関する報道などほとんどないが、日本の台風地震の被害が報じられると、読者の関心は高く、アクセスランキングでいずれもベスト10に入った。

海外では今回の台風地震を取り上げたテレビのニュースが、なぜか東日本大震災の映像を使うなど、誤解を与える報道も散見され、政府は頭を悩ませている。

キャンセルが多数発生

訪日外国人旅行者の日本経済に与える影響は大きく、安倍政権は2020年に訪日外国人旅行者を4000万人とする目標を掲げている。17年は暦年で2869万人、17年度で2977万人となり、18年は3000万人突破が目標だ。JNTOによると、8月までの累計は2130万人となり、「これまでで最も速いペースで2000万人を超えた」という。しかし、9月以降の行方は不透明だ。

観光庁の田端浩長官は8月19日の記者会見で「9月に入り訪日旅行のキャンセルが多数発生するなど、深刻な影響が出ている」と認めたうえで、「今は交通機関や宿泊施設の営業状況など正確な情報発信が必要だ。地域の実情を把握したうえで、具体的な対策を講じていきたい」と述べた。観光業界にとって、9月以降の京都・奈良や北海道は紅葉の季節で、訪日外国人旅行者のかき入れ時だ。台風被害で大幅減便が続いた関空は、ほぼ機能を回復したが、北海道は完全復旧に時間がかかりそう。今後の訪日外国人旅行者の反応が気になるところだ。