最寄り駅から吹田スタジアムへ向かう道のりには、「KAGAWA」がいた。「HASEBE」も、「HONDA」も、「OKAZAKI」も、「INUI」も、「HARAGUCHI」も「SHIBASAKI」もいた。僕は出会わなかったが、「OSAKO」や「KAWASHIMA」や「YOSHIDA」や「H.SAKAI」も、間違いなくいたはずである。
 
 9月11日の日本対コスタリカ戦には、これまでレプリカユニフォームが人気だった選手はほぼ招集されていなかった。ロシアW杯のレギュラーはひとりもいない。

 それでも、物足りなさは感じなかった。躍動感あふれるプレーに胸が高鳴った。

 ロシアW杯の出場を逃した中島翔哉、南野拓実、堂安律が2列目に並ぶ攻撃は、とにかくフレッシュでイキがいい。3人ともヨーロッパでプレーしているだけあって、球際でもしっかり戦える。それでいて、オンザボールの局面で推進力を発揮できる。局面を打開できる。いまさらながらロシアW杯で見たかった、と思わせるパフォーマンスだった。

 森保一監督の采配が巧みだったのは、選手の組み合わせにあった。右サイドバックの室屋成、ダブルボランチの一角を務める遠藤航、2列目左サイドの中島、トップ下の南野は、リオ五輪代表の僚友だ。68分に小林悠が退いて浅野拓磨が投入されると、さらにリオ五輪代表が増えた。

 室屋と同サイドのセンターバックに入った三浦弦太、堂安に代わって85分から出場した伊東純也も、リオ五輪への強化の過程で招集されている。後半終了間際に青山敏弘に代わって出場した三竿健斗は、遠藤らとともにリオ五輪最終予選のメンバーだった。

 リオ五輪世代だけではない。GK東口とCB三浦はガンバ大阪のチームメイトで、左サイドバックの佐々木翔と青山はサンフレッチェ広島の僚友だ。途中出場した浅野も、16年途中までは広島の一員だった。

 CBの槙野智章とボランチの遠藤は、7月まで浦和レッズのチームメイトだった。彼らに東口を加えた3人は、ロシアW杯のメンバーでもある。

 チリ戦の中止に伴って練習のスケジュールも変更され、貴重な準備期間の一部が削られてしまった。そもそもチームの立ち上げで、連携は十分ではない。それだけに、あらかじめ培われたコンビネーションの活用は効果的だった。

 今回来日したコスタリカは、日本と同じように世代交代をはかっている。キャプテンのドゥアルテや左WBのオビエド、セントラルMFのグズマンらのロシアW杯メンバーを残しつつも、経験の少ない選手を多く招集していた。韓国と日本を巡った9月のテストマッチは、結果が問われるものではなかっただろう。ロナルド・ゴンサレス監督も暫定だ。

 3対0の勝利は、その意味で妥当である。同時に、組み合わせとは別の観点からも森保監督の采配を評価したい。

 この試合の日本は、4−2−3−1で戦った。主戦術の3−4−2−1ではなく、指揮官は4バックを採用した。

「色々な形に対応してほしい。柔軟性と臨機応変さを持ってやってほしい」という意図によるものだった。その根底にあるのは、ロシアW杯の戦いぶりである。

 西野朗前監督のもとで見せたサッカーを継続し、発展させていくことで、森保監督は2020年の東京五輪を、2022年のカタールW杯を目ざしていく。コーチから監督へ昇格した意味を汲み取った第一歩は、評価されるべきだと思うのだ。