学研の「自由研究おたすけキット」なら1日で夏休みの自由研究が終わる!2つのキットを試しました:ウェブ情報実験室
こんにちは、フリーライターの宮里です。

夏休みといえば自由研究ということで、前回100均の商品を中心に紹介しましたが、やはり気になるのが学研の「自由研究おたすけキット」。器具や材料、ガイドブックがセットになっているだけでなく、子供向けなのに「まとめ方実例レポート」まで付属する本格的なものになっています。そんなわけで、中でも気になった2つのキットを試してみました。今回試したのは、「モーターを作ろう」と「寒天で電気分解しよう」の2つ。Amazonだと人気なのか品切れだったり価格が高かったりしますが、他の通販サイトや大きな書店で入手できますのでご安心を。早速ですが、キットの中身を見ていきましょう。

▲「モーターを作ろう」はスカスカ感があってバードカフェという言葉が脳裏をかすめましたが、厚紙の下にガイドブックなどがありました。よかった。実験というよりも工作寄りです


▲「寒天で電気分解しよう」は対照的にパーツ数が多い印象。実験がやりやすく結果も目に見えるため、化学実験入門っぽさがあります。せっかくなので、白衣を着てやりたいところ

どちらも電池を使うキットというのは同じですが、動くものを作り上げるモーターの「動」に対し、見た目の変化を楽しむ電気分解の「静」といった感じで、対照的なキットとなっています。パラパラとガイドブックをめくってみると、実験の狙いや理解できる内容について、装置の作り方、複数の実験ガイド、原理の解説など、ものすごく親切丁寧に書かれています。さすが学研。手慣れている感じがあります。


▲作る上での注意点やポイントなどはしっかりと囲みで強調。手順もイラストを多用してあるので、うまくいかないときはガイドを読めばまず何とかなるという安心感があります


▲原理の解説もしっかりとしています。対象年齢は小学3年生以上となっていますが、ちょっと難しいかもしれないので、そこは大人がサポートしてあげてください

「子供向けだしどうせ簡単なんでしょ?」みたいな認識で始めると高確率で失敗しますので、必ずガイドブックは先にひと通り読み、そして手順を追いながら実験することをおすすめします。

シンプルだからこそ作るのが楽しい「動」のモーター


まずは「モーターを作ろう」から試してみました。ざっくりとした手順をいうと、導線でコイルを作り、端を紙やすりで削って接点部を作成。あとは電池ボックスに立てた軸受けにセットして完成、というものです。こう書いてしまうと簡単に思えるわけですが、実際はなかなか大変です。

一番の難関が、最初のコイル作り。コイル巻き器が付属しているので作りやすいといえば作りやすいのですが、コイルの巻きはじめと巻き終わり部分は、くるっと1回巻き付けて止めるという行程が必要となります。イラスト通りに頑張ってみるのですが、導線が意外と固くてうまく巻き付けられず、かなり苦労しました。少しずつ曲げて引っ張ってを繰り返すとなんとななるので、頑張ってください。もちろん、多少汚くても動作には問題ないので、自分のように写真を撮るとかいう目的がなければテキトーで大丈夫ですけどね。


▲巻いたコイルを束ねるように、くるっと巻き付けるのが正しい手順。この巻き付けた部分が緩いと、コイルがばらけたりするので結構気を遣います

なんとか両端とも巻き付けられたら巻き器から外し、両端を紙やすりで削ります。片方は全部被覆をはぎ、もう片方は半分だけはぐように削ります。この紙やすりがソコソコ荒く、削り残しが出やすい気がしました。家に目の細かい紙やすりがあるなら、それを使う方がよさそうです。

無事に削れたら電池を準備。電池ボックスに軸受けとなる銅板をセットして電池を入れ、作ったコイルを通します。そして下から磁石を近づけると......回った!


▲手順を間違えないようガイドを読みながら作業。シンプルですが、それだけうまく作るのは難しいですね


▲コイルをセットして磁石を近づけて回転したら成功です。導線の端が曲がってたり、コイルから芯がずれてると回転しないので、繊細な調整が必要

簡単に回るように思えますが、導線の端を真っすぐに矯正したり、スムーズに回転するようコイルの重心バランスがちゃんと両端の導線と合っているかを微調整したりと、なかなか繊細な作業が必要でした。それだけに、回転が止まらずに続くようになるとうれしくなります。

実験はこれで終わり......ではなく、ようやくスタートラインに立ったところです。ガイドブックで用意されている実験は、磁石とコイルまでの距離を変えてみる、磁石の向きを変えてみる、コイルを2つにするといったものです。また、導線の長さに余裕がありますので、巻き数を変えたコイルを作るとどうなるのか、といった実験も楽しめます。個人的に試したのは、磁石を強力なネオジムに変更してみたこと。明らかに高回転になって面白いですよ。安価なデジタル回転計を購入して、回転数を比較するとかもいいですね。

気になる実験が終わった後は、楽しいレポート作成の時間。いきなりレポートを書けといわれて書ける人がいないのは当たり前ですが、このキットには「実例レポート」が付属しているので、これをお手本にすれば、本格的なレポートが作れます。

この実例レポートが本当によくできていて、「研究のきっかけ」「実験で使ったもの」「実験1」「実験2」「結果から考えたことと感想」という、5つのパートで構成されています。これ、大学で習ったレポートの書き方の形式とほとんど一緒なんですよね。しかも、各実験部には「実験の準備」「やり方」「予想」「結果」とサブパートがあり、ものすごくわかりやすくなっています。ここまで美しい実験レポート構成のお手本ってないだろうというレベルですので、子供に限らず、大学生も大人も一度は読んだ方がいいです。本気でためになります。


▲言葉遣いは子供向けですが、レポートの構成はえらいことまとも。これをマスターしておけば、将来レポートで困らないだろうって思います

赤文字でポイントとなる部分が書かれているので、そこを意識するとさらにいいレポートになるでしょう。ちなみに今回は違いますが、過去の「ウェブ情報実験室」でも基本的にこれに似たレポート形式をとっていますので、いくつか読み返してもらえたらなって。(宣伝)

下準備と実験経過が楽しい「静」の電気分解


もうひとつのキット「寒天で電気分解しよう」も試してみました。こちらはモーターのように激しく動くことはないのですが、普段意識することのない金属イオンについて学べるユニークなものとなっています。手順としては、寒天で観察用の固形物を作り、そこに金属板と炭素棒を突っ込んで電圧をかける、みたいな感じです。こいl

下準備として寒天をお湯に溶かし、食塩を入れて冷やして固めます。付属の容器が4つあるので、4つとも作っておくといいでしょう。水150ml、寒天1g、食塩1gはなるべく正確に計りたいところですが、実際のところ大体で大丈夫です。要は、食塩水が寒天で固まればいいので。


▲大体で大丈夫といっておきながら、失敗は嫌ですからね。正確に計って寒天入り食塩水を作りました


▲そしてできたのがこちら。生物系の方なら、寒天培地みたいなものといえば通じるでしょうか

実験に使う器具はシンプルで、電池ボックスに導線を接続し、プラス極にはクリップ経由で金属板、マイナス極には炭素棒を接続したものを使います。電池をセットし、これらの電極を黄色の固定ツールを使って寒天へとさし込めば実験開始です。


▲器具の組み立ては簡単なので割愛。電極を寒天にさし込むとさっそく反応が始まります

モーターのような派手な動きこそありませんが、炭素棒のマイナス極側を見ると気泡が発生していることがわかります。また金属板のプラス極では、さした直後から金属イオンとなって溶け出し、うっすらと色づいていく様子が観察できます。この気泡がなんなのか、そしてなぜ金属が溶け出すのかといった疑問は、ガイドブックに全部書いてあるので熟読しましょう!

せっかくなので、電極をさした直後から約90分後まで、30分刻みの変化を掲載しておきます。スマホで撮影するなら写真ではなく、タイムラプスで記録しておく方が面白そうなので、チャレンジしてみるのもよさそうです。


▲今回試したのは銅板。銅イオンは青系の色でキレイですよね。金属によって色が変わるのがまた面白いです

金属って地味な色のものが多いですが、金属イオンだときれいな色になったり、燃やすと派手な色になったり(炎色反応)と、違う側面が見れて興味深いところ。鉱物結晶になると色だけでなく形まで楽しめるので、化学系だけでなく、地学系への興味を持つにもいいきっかけになってくれるでしょう。

正直、自由研究キットを素で楽しみました


コイルを巻いてモーターを作るなんて小学生の時以来で、正直、ものすごく楽しんで作ってしまいました。これに関連して、電磁石を作るのにキレイに巻けると力が強くなるといわれ、ものすごく丁寧に巻いたことを思い出したりしました。今考えればキレイに巻くのがいいのではなく、同じ長さの導線ならキレイに巻いた方が巻き数が増えるからなんだと思いますが。

動くものの工作に近いモーターと違い、化学的な観察となる電気分解も面白いです。なぜ食塩を入れるのかとか、寒天を使う理由なんかも調べてみると、さらにいい感じのレポートになりそうですよね。子供の頃から工作が好きでそっち方面ばかりに目がいってましたが、こういったキットがあれば、どこかで化学方面に目覚めていたかもしれません。

色々な世界に触れることができる夏休みの自由研究。単なる宿題として片付けるのではなく、自由研究そのものを楽しめるといいですね。