今大会は表情も冴えないメッシ。(C)Getty Images

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 ロシアW杯の絶対的主役、リオネル・メッシがまたも期待を裏切った。PKを外した6月16日のアイスランド戦に続き、21日のクロアチア戦でも決定的な違いを作れなかったのだ。
 
 アルゼンチンは4-4-2から3-4-2-1にシステムを変えてきたが、メッシの役割は変わらず前線のフリーマン。守備にはほぼ関与せず、好きな時に好きな位置に動いてボールを要求した。
 
 しかし、このクロアチア戦でもアイスランド戦と同じ光景が繰り返された。得意のドリブルで仕掛けては潰され、パスもチャンスにならない。痺れを切らして中盤低めまで下がってボールを引き出すが、局面をまったく前に進められない。
 
 イバン・ストゥリニッチに激しいタックルを食らった際には珍しく激昂し、0-3のまま試合終了の笛が鳴るとうつむきながら足早にロッカールームに消えていった。
 
 ロシアで見かけるアルゼンチンのユニホームは、ほとんが「10」と「MESSI」である。会場でのチャントもほとんどが「レオ・メッシ! レオ・メッシ!」。アルゼンチンにとってメッシはすべてと言える存在だ。しかし、この2試合はその期待にまったく応えられていない。
 
 いまだ試行錯誤するホルヘ・サンパオリ監督の采配、メッシに気を遣すぎるチームメイト、クロアチア戦で先制点に繋がったウィリー・カバジェロの凡ミスなど、アルゼンチンの敗因は枚挙にいとまがない。しかし、メッシが違いを作れていないことこそが、最大のそれだろう。心身両面のコンディションが整っていないのか、その動きは明らかにキレがない。
 昨日、バスで出会ったアルゼンチン・ファンは、「周りも良くない。でも、一番ダメなのはメッシだ。環境はクリスチアーノ・ロナウドだって同じだろ」と言っていた。なるほど、と思ったものだ。
 
 たしかにアルゼンチン代表には、バルセロナにおけるアンドレス・イニエスタ、ルイス・スアレス、ジョルディ・アルバなど「ボールで会話できる」パートナーがいない。しかしそれは、ここまで4ゴールを挙げているポルトガル代表のクリスチアーノ・ロナウドに、レアル・マドリーにおけるカリム・ベンゼマやマルセロ、ルカ・モドリッチのような相棒がいないのと同じだ。
 
 サンパオリ監督は守備をしない背番号10のために本来志向するハイプレス戦術を諦め、走ることを求めず、攻撃で全面的な自由を与えている。そして、あれだけ走らず守備をしないならば、攻撃で決定的な仕事しない限り帳尻が合わない。メッシは史上最高のフットボーラーかもしれないが、はっきり言って今大会はその称号に値しない。
 
 表情も冴えない苦悩するスーパースターは、グループリーグ突破を懸けたナイジェリア戦(6月26日)でどんなプレーを見せるのか。世界中がその動向を見守っている。
 
取材・文:白鳥大知(ワールドサッカーダイジェスト編集部)