東口は、マンチェスター・ユナイテッドに所属する名GKのミスに驚いたという。
 
「プレミアで毎日、速いシュートを受けているGKでもあんなミスをするんで……やっぱりワールドカップ独特の雰囲気があると思いますし、コンディションを初戦にぴったり合わせていくのは難しいと改めて思いました。個人的には結果論ですが、あのシュートは足ではじき出すのが無難じゃないかなと思いました。シュートも振りも早いので、手が間に合わなかった。だから、足でと思うけど、そこでの判断は一瞬なんで……」
 
 3点目となったロナウドのFKは、スペインの壁の作り方を見て、リラックスルームの選手たちの間では「大丈夫か」という声が上がっていたという。
 
「リラックスルームで見ていた選手の間で『壁の作り方が甘いんちゃうか』っていう話をしていたら(ゴールが)入った。やっぱり選手のポジションが悪かったですね。右に高さがなく、段になっていたんで。こういう失点を防ぐには、まずあういうFKを与えないように余計なファウルしないことですね。ビデオ判定があろうがなかろうが、そこは気を付けないといけない」
 
 FKも危険だが、今回はVAR(ビデオ・アシスタント・レフリー)が採用され、判定の上、PKが認定されるケースが増えている。GKを含めた守備陣の頭痛の種が増えた感じだ。
 
「まぁ守備に関しては、だいぶまとまってきています。本番までに細かいところ修正していけばもっと良くなると思う。あとは自信を持って挑むだけですね」
 
 32歳の中堅GKは初戦コロンビア戦、国歌をどこで聞くことになるだろうか。
 
 ベンチだった場合、南アフリカ大会の川口を始め、歴代の第2、第3GKたちが味わってきた彼らにしか分からない難しさに向き合っていくことになる。
 
 東口にとっては試合だけではなく、もうひとつの戦いが始まる。

取材・文●佐藤俊(スポーツライター)