贈呈式で「マサル」(ちなみに♀)に顔をなめられ、うれしそうなザギトワ

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「良い飼い主になれるよう、しっかり世話します」

5月26日にロシアのモスクワで行なわれた秋田犬「マサル」の贈呈式で、平昌五輪フィギュアスケート女子金メダルのザギトワはそう語った。

「成長過程の画像を10日に1回程度、外務省を通じてザギトワ選手に送っていました。贈呈式では『やっと私の元にきてくれた』といううれしさが表情に出ていました。秋田犬ブームのロシアでは、日ロ首脳会談よりもマサルの話題のほうが盛り上がっていたようです」(贈呈式に出席した秋田犬保存会の遠藤敬[たかし]会長)

ロシアに限らず今、秋田犬は世界的な大ブームで、海外の秋田犬登録数は2012年に167頭だったのが、17年には3967頭と20倍以上に(秋田犬保存会調べ)。ただ、このブームに便乗した問題も起こっているのだという。

「中国では“ニセ秋田犬”が出回っているようです」と指摘するのはドッグジャーナリストの臼井京音(うすい・きょうね)氏だ。

「基本的に日本と中国の土着の犬は似ています。そのため、少数の秋田犬を買い求めて、中国の土着の犬と交配させる。そして血統書を偽造してペットショップで売るんです。

ペットブームの中国では今、特に人気の高い秋田犬の供給が追いついていません。血統が良ければ、数百万から1千万円で取引されているという話も聞きます。そこで乱繁殖させたい人たちがたくさんいるんだと思います」

また臼井氏は、“秋田犬”は2種類あるという。

「秋田犬とアメリカンアキタがあります。戦後、アメリカ人がシェパードの血が入った系統を持ち帰り固定化したのがアメリカンアキタ。古来の熊猟犬の系統に近づけられた日本の秋田犬とは違いますが、海外では同じ“秋田犬”として認識されることも多い」

では、“ニセ秋田犬”への対策はないのだろうか。前出の遠藤氏が語る。

「秋田犬保存会では、交配証明(交尾しているときの写真)や、30日、50日の子犬の写真で確認をしてからでないと血統書を出さないようにしています。また、血統書も刻印の凹凸に細工をしたり、透かしを高度なものに変えたりしています。しかし、中国のことでもあるし、監視をするのはなかなか難しいです」

ニセ秋田犬だとわかった飼い主が、その犬を捨てることだけはないように願いたい。

(写真/時事通信社)