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 巷にあふれ返った“健康常識”はウソ? ホント? 「暮らし」にまつわる都市伝説を、現役医師らがQ&A形式でわかりやすく解説します。

うがい薬は風邪予防には効果なし?

「ホントです。うがい薬に風邪予防の効果は、ほとんどないと思います」

 と、医学ジャーナリストの植田先生はバッサリ。京都大学の研究によると、「水でうがいをする」「ヨード系のうがい薬でうがいをする」「普段どおりにする(うがいをしない)」という3つのグループに分けて調査したところ、水でうがいをするグループが最も風邪の感染率が低かった。うがい薬を使うと、のどの粘膜にすむ常在菌まで殺してしまうという。

「私は緑茶でうがいをすることをオススメしています。そのまま飲んでしまってOKです。風邪を防ぐには、うがいに加えて手洗いが大切。外出先から帰ったらすぐに、腕まで洗うようにしましょう。1分くらいかけて、じっくり洗うといいでしょう」

「つけ置き洗い」は汚れも落ちず病気のもとに?

 これはホント。衛生微生物研究センターの調査によると、食後に10時間ほどつけ置きした食器は菌が7万倍に増殖、最大140万個もの細菌が残留。スポンジと洗剤で洗い流したところ、平均10万個の残留細菌が確認されたというから恐ろしい! 

 一方、熱湯だけで効果が得られるものも。東京都福祉保健局の実験では、O-157の除菌にいちばん即効性が高いのは、熱湯消毒だったと報告している。

「これから梅雨の時期に入るとO-157が流行しますから、熱湯消毒が効果ありというのは朗報ではないでしょうか。O-157は死亡率も高い病気。昔ながらのすぐれた方法で乗り切りたいですね」(植田先生)

タバコは本数を減らしたら病気になりにくい?

「それはウソ。少しでもタバコを吸えば、病気のリスクになります」

 と断言するのは、皮膚科専門医の小川先生。イギリス・ロンドン大学の研究によれば、タバコを1日1本でも吸う人は、血管の病気に対して、1日20本吸う人の半分のリスクがあるという。

「タバコには60種類以上の発がん物質、発がん促進物質が含まれているといわれています。なかでも、火をつけたタバコの先端から立ち上る副流煙は、発がん物質の濃度が高く危険。肺がんや咽頭がんをはじめ、さまざまながんに影響があると指摘されています」

 最近は女性の喫煙者も珍しくないけれど、

「肺がんで死亡する女性のうち、約20%はタバコが原因といわれています。20〜30代の女性の喫煙率は近年、横ばいの状況。注意が必要でしょう」

 カラダのことを考えるなら、思いきって、きっぱり絶つのが◎。

寂しさや孤独をこじらせると死につながる!?

 “うさぎは寂しいと死んじゃう”という都市伝説は有名だけど、人間も……!?

「ホント。シカゴ大学の研究では、死につながりやすくなると言われています」

 と植田先生。家族や地域との関係が希薄で、他人との接触がほとんどない状態を「社会的孤立」と言う。睡眠不足や血圧上昇、ストレスホルモンの上昇といった健康状態の悪化を招きやすく、幸福感を自覚しにくい。結果として、死亡リスクが高くなるそうだ。

 そうした問題によって、イギリスでは年間4・9兆円の経済的損失があるとして今年1月、孤独担当大臣のポストを設けたほど。

「日本の場合、家族と一緒にいる高齢者のほうが、ひとり暮らしより孤独感が強いとのデータがあります」

 孤独の背景はさまざま。経済的な困窮もあれば、家族介護で大変な人もいる。

「結婚しない人が増えて家族も多様化するなか、社会的孤立をどう捉えて対応していくかが今後、重要になってくると思います」

かゆみが続くと記憶力が低下する?

 ただでさえつらいかゆみ。長引けば、こんな影響もあるそうで。

「ストレスによる慢性的なかゆみが続くと、脳に影響を与えるという研究報告があります」(小川先生、以下同)

 ストレスで生じた慢性的なかゆみは、脳の記憶にもかかわる大脳辺縁系に影響を与える可能性がある、とアメリカのウェイクフォレスト大学が報告している。

「大脳辺縁系にある海馬という組織は記憶に関係していて、長期にわたるストレスを受けると細胞が壊れると考えられています。ですからホント。

 脳とかゆみの関係について、かつては未知の領域と考えられていましたが、解明が進んできています。今後、さらに脳との関係が解き明かされていくことでしょう」

 さっそく健康常識を取り入れて、元気な毎日を!

〈お話を伺ったのはこの2人〉
植田美津恵先生
医学博士、医学ジャーナリスト。愛知医科大学客員教授、東京通信大学准教授。各大学にて教壇に立つほか、医学番組の監修、テレビコメンテーター、講演活動を行う。近著に『忍者ダイエット』(サンドランチ)

小川 徹先生
皮膚科専門医。早稲田大学招聘研究員。元慶應義塾大学研究員。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校、英ロンドン大学セントトーマス病院などで国際的に活躍中。医学博士のほかMBA、公共政策の修士号を持つ