サプライズ選出には、必ず理由がある。
 
 2002年のW杯で中山雅史と秋田豊がメンバー入りしたのは、チームの一体感を高めるためだった。スタメンではない、途中出場の可能性も少ない立場にまわる選手として、フィリップ・トルシエは中村俊輔ではなく中山を、大岩剛、鈴木秀人、中澤佑二ではなく秋田を、選んだのだった。

 06年のW杯では、巻誠一郎の選出がサプライズと言われた。守備でもハードワークできる長身FWをジーコが選んだのは、久保竜彦や鈴木隆行のコンディションに不安を感じたからだった。

 10年W杯の川口能活の選出は、02年の中山、秋田と同じである。第3GKの立場を受け入れてチームをまとめるのが、川口に課せられたミッションだった。

 14年W杯のサプライズは、大久保嘉人の選出である。13年に自身初のJ1リーグ得点王に輝き、14年もW杯中断前までに得点ランク2位となる日本人最多のゴールをマークしていた。

 一方で、13年途中から代表の1トップに定着しつつあった柿谷曜一朗が、チームの低迷に引きずられるように調子を落としていた。大久保の8ゴールに対してこちらは1得点で、アルベルト・ザッケローニ監督は10年W杯にも出場した大久保を招集したのだった。

 5月18日に発表されたキリンチャレンジカップのリストで、驚きを誘ったのは青山敏弘のメンバー入りだっただろう。ヴァイッド・ハリルホジッチの初陣となった15年3月以来の日本代表入りがこのタイミングだけに、サプライズの「5文字」が使われた。 

 ならばなぜ、西野朗監督は彼を必要としたのだろう。

「いまのチーム事情を彼が作っていると言っていいぐらい、広島のサッカーを象徴している」と指揮官は説明する。青山がキャプテンを務める広島は、ここまで12勝1分1敗でJ1リーグの首位を快走している。青山は全試合に出場しており、西野監督は「間違いなく、最高のパフォーマンスをしているひとり」と話した。

 この日明らかにされた27人のリストで、ボランチはもっとも多くの選手が選出されたポジションだ。ハリルホジッチ前監督指揮下で主力格だった長谷部誠、山口蛍、井手口陽介に加え、柴崎岳、大島僚太、三竿健斗も名を連ねる。DFのひとりの遠藤航もボランチに対応でき、西野監督自身が「GK以外のポジションは外してほしい」と話している。遠藤をボランチと見なすこともできるわけだ。

 井手口、大島、柴崎や代表やクラブでボランチ以外のポジションでもプレーしてき
たが、いずれにせよ、ボランチの候補が7人もいるなかで、西野監督はあえて青山を加えたことになる。

 しかも、青山はボランチ以外ではほぼプレーしない。選考基準のひとつに「ポリバレントさ」をあげておきながら彼を選んだところに、西野監督の期待の大きさがうかがえる。

 コンディションの見定めが必要な選手が多いことなどから、西野監督は具体的な戦い方については言及しなかった。それでも、「固執したシステムやポジションだけではない。柔軟に対応していく力、戦い方、戦術・戦略的な部分も選手には持って欲しい」と話す西野監督の構想で、青山が果たす役割は決して小さくないはずだ。