Intelが17基の量子ビット(Qubit:キュービット)を備える超伝導チップ「17-qubit superconducting chip」の試作チップの製造に成功しました。量子コンピューターシステムの構築に向けて、すでに17-qubit superconducting chipを使ったテストが進行中です。

Intel Delivers 17-Qubit Superconducting Chip with Advanced Packaging to QuTech | Intel Newsroom

https://newsroom.intel.com/news/intel-delivers-17-qubit-superconducting-chip-advanced-packaging-qutech/

Intelとオランダの量子コンピューター研究機関QuTechによって共同開発された17キュービットを備える量子コンピューター超伝導チップについては、以下のムービーで確認できます。

Unboxing the Intel 17-qubit superconducting chip with Leo DiCarlo (QuTech) and Dave Michalak (Intel) - YouTube

新開発した量子コンピューター用超伝導チップを披露するのはIntelのデイブ・ミカラック氏とQuTechのレオ・ディカルロ氏。IntelとQuTechは2015年から量子コンピューターを共同で開発してきました。量子コンピューターで機能するQubitのシミュレーションから、実際のチップ開発まで、順調に開発してきた両社にとって、17-qubit superconducting chipは、量子コンピューターの開発における一つのマイルストーンだとのこと。



Intelロゴの描かれた箱に、ブツが入っているそうで、さっそく取り出します。



これが「17-qubit superconducting chip」です、と二人は満面の笑み。



17-qubit superconducting chipは、大きなコアに17基のキュービットが内蔵されています。



裏面には金メッキされた多数のコネクタ。量子コンピューターと外界とを接続するためにあるとのこと。



量子コンピューターが作動する極冷環境に耐えられる様に設計されているそうで、ディカルロ氏は「このパッケージングはIntelならではの技術で実現したものです」とたたえています。



この後、17基のキュービットすべてをチェックして量子コンピューターのパフォーマンステストを行うとのこと。「さあ、やろう」と二人が話すところでムービーは終了しています。



並列コンピューティングの究極系とも称される量子コンピューターは、従来型のコンピューターでは不可能な処理を行える可能性があり、例えば二酸化炭素を固定化するための新しい触媒、常温超伝導体、新薬などを創出するための分子モデリングのシミュレーションが可能になると期待されています。

しかし、超伝導量子ビットは宇宙の250倍の低温の20ミリケルビンで動作することが要求されており、実用的なレベルで均一かつ安定的に構築することが極めて難しく、量子コンピューティング開発の大きなボトルネックになっています。

IntelとQuTechが共同開発した「17-qubit superconducting chip」は、信頼性、低温環境性能、キュービット間に生じるRFノイズの低減などにおいて改良が加えられており、回路でつながれたチップに比べて10倍から100倍の信号の入出力が可能だとのこと。それを、従来型のシリコン半導体チップと同等の50セント硬貨のサイズに収めることに成功しています。



すでにQuTechは超伝導チップ「17-qubit superconducting chip」を使って、エラーの訂正スキームや論理キュービットの構築に向けて、複数のキュービットを接続してコントロールするテストを行っているとのこと。量子コンピューティングに必要なアプリケーションだけでなく、それを制御するためのハードウェアやソフトウェアアーキテクチャに至るまで、量子コンピューティングシステム全体を一貫して構築する準備ができているというわけです。なお、Intelの最終目標は、Googleと同じく49Qubitのプロセッサーの製造です。