インスタに載せた写真がツイッター上で拡散された(ツイッターより)

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 マクドナルドのドリンクのフタをハンバーガーで代用しているかのように、ストローを突き刺した写真。ある店員は「食べ物で遊ぶなよ」と思ってしまうという。ホテルのコップでグラスタワーを作る写真は「その後、割れた」とコメントしている。本当ならば迷惑な話だ。

不快だと感じる投稿を見る

“リア充”自慢したいだけ

 そのほか家具店内で商品を入れるためのカートの中に乗っている写真、電車内のパンモロ動画など何のため? と思える不適切な写真が目立つようになってきた。

 日常生活でも旅先でも、カフェでもレストランでも、見たり食べたりする前に、まずは写真に収める人がホントに多いこと。

 よく撮れた写真は「インスタ映え」がすると褒められ、多くの人に「いいね」をもらえる。うまく広まれば、閑古鳥が鳴いていたショップが突如、人気店に生まれ変わったりすることもある動画共有アプリ「インスタグラム」(以下インスタ)。ウェブメディア評論家の落合正和さんはインスタについて、

「どちらかというとユーザー層的におしゃれな写真を投稿してみんなで“いいね”っていうふうに見るのが基本の文化。充実したプライベートを見てもらって、共感してもらうんです。要するにリアルが充実しているのを自慢したいんですよ。ブランド物のバッグを持つことと同じ感じですね。

 インスタは友人以外の人へ自分の投稿を拡散させる機能がないんです。検索すれば他人の投稿を見ることはできますけど。ですから、目立ちたがりなことをやりたい人は、別のSNSを使いますよね」

 別のSNS、例えばツイッターには「リツイート」といって、ひとつの投稿が加速度的に広まる機能がついている。

 目立ちたがりにはうってつけで、しばらく前にはバカッター現象が巻き起こったほど。

 コンビニのアイスクリームボックスに入った写真、赤ちゃんにタバコをくわえさせた写真、ステーキ店の冷蔵庫に身体を入れた写真などが大炎上し、アルバイト先を解雇になったり、店が閉店したり、社会的な非難を浴びたことがあった。

 同じような行きすぎた写真が今、インスタにも投稿されている。実際に線路に寝そべった写真をアップした40代の男は警察ざたになり、書類送検された。軽いノリの撮影が大騒動に発展する、まさに“バカッター騒動”の再来だ。

洗濯機は人が乗ることを想定して作っていない

 “コインランドリーガール”なる投稿が、今ネットで話題になっている。

 コインランドリーでレトロな写真を撮ろうとしたものだが、これ自体ミュージックビデオやプロモーションビデオにもよく使われる。それをおしゃれと思った人が、後追いして撮影しているのか。

 コインランドリー機器販売のスタッフは、

「洗濯機は、人が乗ることを想定して作ってないと思います。拝見した写真では足をドラムに乗せているものもあるので衛生上よくないです。衣類を洗うものですので」

 “コインランドリーガール”のタイトルで、2010年8月から写真を撮っているカメラマンの堀内慎祐さんがいる。インスタでの“コインランドリーガール”の増殖に、

「もし僕のマネなら、何かしらのインスピレーションを与えられたのであればうれしいですけども、僕なりにモラルを犯してまで撮ることはしないように心がけてきたので、度を越したことをやろうとするのは望ましくない」

 と、きっぱりと釘を刺す。具体的な注意点としては、

「コインランドリーは洗濯する場所で、僕は正規の使用者ではないので、迷惑はかけないようにそこは徹底しています。邪魔にならないような時間を狙って行きますし、雨の日は使う人が多そうだから控えようとか考えていますね」

 行きすぎた撮影が行われれば当然、設置者や他の利用者からも文句が出る。カメラマンもそのことをいちばん恐れ「規制を受けないためにも、モラルは大切にしないといけない」と多くのインスタ利用者に呼びかける。

 前出の落合さんも一連の“コインランドリーガール”について、「一部の人が悪ノリをしてしまった感じですね。バカッター的なことを狙って撮ったのではなくて、この写真おしゃれじゃんって、それで自分も撮ってみたんだと思うんですけどね」と悪意を否定するが、ハミ出しものの存在は無視できない。

 インスタにバカッターの波がこれ以上及ばないことを願う。さらに落合さんは、

「ただ“いいね”が欲しい欲求が過激になって、セクシーどころではないという写真はありましたね。インスタの運営は、そういうものをどんどん削除します。ツイッターと比べると、投稿数も少ないので、過激な投稿がいつまでもあるということはないですね」

 と、バカッター的なものが流行る土壌はインスタにはないとするが、気がかりも……。

「いい写真を撮りたいがためにインスタ映えしそうな食べ物を注文して、写真撮って捨てちゃうということが頻発すると、よくない傾向になりますけど、基本的にはお上品な文化がインスタにはあるので。

 ユーザー数が“どん”と増えるとお行儀のよくないユーザーも増えるとは思いますが、シェアの機能がないので、ツイッターみたいに簡単に炎上とはいかないと思います」

 今後も増加が予想されるインスタユーザー。今はお上品な文化があり、炎上しにくい環境だ。しかし、それが失われた時こそインスタの真価が問われるかもしれない。