猪口 真 / 株式会社パトス

写真拡大 (全2枚)

B2CにせよB2Bにせよ、多くのセールスプロセスやマーケティング活動でモデルとして重宝される、ファンネルモデル。

ファンネルとは「じょうご」のことで、見込み顧客からクロージングできる顧客まで徐々に絞り込んでいくプロセスを設定し、それぞれのプロセスごとに何らかの施策を仕掛けていくことで、クロージングまでの可能性を高めていこうとするものだ。

それぞれのプロセスでの定義は様々なものが存在するが、標準的には、「認知」「関心」「検討」「購入」など、顧客が商品やその企業に対する行動や状態を指す。

より具体的な状態や顧客のアクションを示す場合は、具体的に「リード(見込み顧客)」「ニーズの具体化」「プレゼンテーション」「クロージング」といったプロセスや、「イベント(セミナーや展示会)来場者」「資料請求者」「メルマガ登録者」「営業コンタクト」「具体案件化」「クロージング」といった行動ステップなど、より自分たちのビジネスに直結した定義で表されることも多い。

いずれにしても、何らかの形で顧客(候補)して登録されたリストが、そうすれば次のステップに進むことができるのかを定期的に計画し検証していくことになる。

多くの企業の営業会議では、数字の報告以外では、このファンネルモデルの状況確認や次の施策計画の確認に費やされているだろう。

このファンネルモデル、多くの企業で活用されているのだが、うまく活用する(というか本当に機能している)場面を、残念なことにほとんど見たことがない。

もちろん、売り上げがあがらないということではない。ファンネルモデルと売り上げが結びついていないということだ。

その状況は、いくつかのパターンに分けることはできるが、

・第一段階のリードの集まりがにぶい

・第一段階のリードは集まるものの、セールスプロセスにおいて発展しない

というのが代表的な例だろう。

要するに、セールスプロセスという発展的なモデルを描いているにもかかわらず、それぞれのプロセスが単独で存在しているということだろう。

先程の例でいけば、メールマガジン登録とイベント参加は、プロセスではなく、それぞれ別物といて存在しているということ。

ということは、クロージングというプロセスも同じことであり、クロージングに至るプロセスにはなっておらず、クロージング客は、別のところからやってくるのだ。

なぜこういうことが起きるのだろうか。

ひとつは、多くの場合、リーチであったり、興味を持ってもらったりした段階で、「リード(見込み顧客)」と呼ぶものではないということだ。たまたま自分の興味があったことのひとつにWebサイト上の資料やイベント、メールマガジンがあったにすぎない。顧客にとっても、それだけのことで「リード(見込み顧客)」扱いされたらたまったものではないだろう。

次に、特にB2Bの場合、会社対会社や、会社対営業マンの中長期的な関係構築の中から仕事が生まれることが多く、営業マンや組織をあげての努力なしに、単純なマーケティング施策だけに乗っかって関係強化が図られるケースはほとんどないということだ。

セールスの人間が、「うちのリードの質が低い」などとのたまうことがある。マーティング部門は「セールスの力不足だ」と反論するが、このようなファンネルモデルから上顧客が生まれることは少ないことをセールスはわかっていての発言であり、「営業はそんなものではない」というセリフの裏返しだ。

最後に、これは改めて詳しく述べるが、そもそもファンネルに入っているのは、顧客ではなく、あなたの会社なのだ。顧客こそが最終的に何を選択するかの権限を持っている。顧客の持つ多くの購入候補リストの中に、あなたの会社が入っているにすぎないのだ。

顧客がどのようなステップを踏むかというよりも、あなたの会社が顧客の行う選別にどのように残っていけるかを考えるべきなのである。

そこを間違えると、マーケティングの施策がまったく的を得ていないものになってしまうだろう。