三菱UFJを「決断」へ突き動かした 銀行経営に吹き荒れる逆風
三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)が、長年抱えていた二つの課題にようやく答えを出した。一つは来2018年春、傘下の三菱東京UFJ銀行の行名を三菱UFJ銀行に変更すること。もう一つは、同行と三菱UFJ信託銀行の法人融資部門統一だ。いずれも合併以降、旧行の縄張り意識に阻まれて踏み切れなかった難題だが、二つの改革によって、根強い「旧行意識」は変わるのか。
「親会社と同じ『三菱UFJ』に統一することで、グループ一体で生まれ変わるというイメージを社内外に発信する」。三菱UFJ・FGの平野信行社長は17年5月15日の記者会見で、行名変更の理由をこう説明した。
行名変更と重複事業の集約
あえて「社内」にも発信すると述べたところに、今もグループ内で旧行意識が根強く残っていることが透けて見える。旧三菱銀と旧東京銀の合併行である旧東京三菱銀と、旧UFJ銀が合併して三菱東京UFJ銀が誕生したのは2006年。それ以来、「名前が長すぎる」との批判は常にあったが、歴代頭取ポストを旧三菱出身者が占める中で他の旧行のメンツを保つためには、旧行の名称を並べておかざるを得なかった。
三菱東京UFJ銀と三菱UFJ信託銀の重複事業の集約は、さらに難題だった。信託銀は信託業務のほか、融資などの銀行業務も手がけており、FG傘下2行の融資業務を集約すればグループ全体の効率化につながる。集約案はたびたび浮上したものの、信託銀の徹底抗戦にあい、これまで日の目を見なかった。
ここに来て二つの難題にメスが入ったのは、日銀のマイナス金利政策導入による貸出金の利ざや縮小など、銀行経営に逆風が吹き荒れているからだ。本業である国内貸し出しのもうけが減り、三菱UFJ・FGの2017年3月期の連結最終利益は前期比2.6%減とふるわなかった。
若手・中堅社員が「提言」
平野氏は「今後も厳しい経営環境が続く」と危機感を強調。二つの改革は、マイナス金利時代を生き抜くために、グループの若手・中堅社員約60人が半年をかけて議論し、まとめたものだという。マイナス金利の逆風と、旧行意識が比較的薄い若手・中堅社員の「提言」をテコに、積年の課題にけりをつけた形だ。
銀行業界では、銀行と信託の法人融資部門統一について「よく踏み切れたものだ」(大手行幹部)と驚きの声が上がっている。一方、行名変更については「そのうちUFJも取って『三菱銀行』に戻し、名実ともに旧三菱銀の完全支配となるのではないか」(別の大手行幹部)と皮肉る見方も出ている。
折しも三菱東京UFJ銀では、小山田隆頭取が体調不良を理由に就任1年の異例の短さで退任する人事が決まった。小山田頭取の最後の大仕事となった二つの改革で、グループが生まれ変われるのか注目される。