マイアミ・オープン11年ぶり3度目の優勝を飾ったロジャー・フェデラー【写真:Getty Images】

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全盛期の強さ見せる35歳、専門家はスケジューリングの勝利と分析

 男子テニスのマイアミ・オープンは2日(日本時間3日)、シングルス決勝が行われ、第4シードのロジャー・フェデラー(スイス)が第5シードのラファエル・ナダル(スペイン)をストレートで下し、11年ぶり3度目の優勝。全豪オープンに続き、今季の「マスターズ1000」で2勝目を挙げた絶好調のレジェンドは、世界ランクを4位に浮上させた。全盛期の強さを見せている35歳について、専門家は肉体的な負担を最大限に軽減するフェデラー陣営のスケジューリングの勝利と分析。一方で「フェデラーだからこそ可能な戦略」と指摘している。

 フェデラーは今季4大会に参戦。19勝1敗の成績で3大会で優勝している。そして、マイアミ・オープン優勝後には全仏オープン以外のツアーに参加しないことを表明した。

「ウィンブルドンは今や最大のゴールになった。芝こそが僕にとっては重要なんだ」と語り、歴代1位タイの7度優勝を誇る7月のグラスコートでの戦いに全てを注ぐ決意を示している。

 プロテニス選手の綿貫敬介はフェデラー復活劇の裏には、周到な戦略が存在すると分析している。

「ここまでエントリーしたのが4大会というのはかなり少ないですね。通常なら6大会から7大会は出ているところでしょう。これまでは他の選手と同じペースで転戦していたフェデラーですが、どのトーナメントに出るのか完全に絞っています。

 去年、膝の手術をしていますし、これがコンディション維持にプラスに働いていることは間違いありません。しかし、一つ言えるのは、これは今のフェデラーだからこそ、可能な戦略なのです」

 日本の錦織は今季すでに6大会に出場。他のトッププロが世界各地を過酷な転戦でしのぎを削る中、フェデラーは参加する大会を絞り、消耗を避けながら、最大限の成果を挙げている。だが、レジェンドゆえに可能な戦略とはどの部分にあるのだろうか。

「普通の選手ならランキングが落ちる一方」…特殊な戦略を可能にした要因は?

「普通のベテラン選手は簡単に本戦まで勝ち上がれません。例えば、トーナメントで初戦敗退して試合数が1試合になってしまえば、勝てない選手はランキングを確保するために試合に出続けなければいけません。フェデラーはエントリーした大会で毎回勝ち上がっているので、試合数もこなせて、試合勘やランキングも高い部分で維持できます。

 普通の選手がこの作戦を選んだとすれば、ランキングが落ちる一方です。フェデラーにとっては100%、パフォーマンスアップに繋がっていると思います。フェデラーが勝ち続けるという自信があるからこそのスケジューリングでしょう」

 綿貫はこう語った。フェデラーは昨年、手術した左膝へのケアのため、これから8週間のオフに入ることを発表。全仏オープン以外のクレーコートの戦いを回避する戦略を打ち出しているが、綿貫によれば、これも消耗回避に大きな効果をもたらすという。

「体力的にはクレーコートの試合はより厳しいものになります。ハードコートよりもラリーも一般的に長くなります。試合で走る距離も長くなる。そして、クレーコートでは多くのプレーで一度滑ってから踏ん張るというモーションが必要となります。

 スライディングして、止まる、そして、踏ん張るという作業が多いので、確実に膝に対する負担が存在します。消耗を回避して、フレッシュな状態を長続きさせる効果は望めるのではないでしょうか」

 圧巻のパフォーマンスを支えているフェデラー陣営の戦略は今シーズン、最大の成果をもたらしている。